ハリー・ポッター(夢)

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七年生になってすぐ、ついに僕たちはやり遂げた。

ダンブルドアが知らせてくれたそのビッグニュースに、たった二人で喜んだ。
喜びの気持ちのまま空き教室に入って梅並と抱き合う。

「すごいよ!私たちが脱狼薬を作ったんだ!」

梅並も興奮しているのか抱きしめ返してきて、体を離すと真剣な顔をして見上げて来た。

「セブルス、私は君と、これからも研究を続けていきたいと思ってる」
「ああ、僕もだ」

頷けば笑顔を見せて、また真剣な顔をする。

「提案なんだけど、一緒に店を開かない?」

驚いている僕から手を離して、梅並は困ったように笑う。

「答えは急がないよ。それに、私はまだ君に言っていないこともあるし、それを聞いてからでもいい」

まだ一年近く残ってるんだからと言う梅並の手をすぐに掴んで見下ろした。
大きな黒い目に僕が映り込んでいた。

「どんなに考えたって答えは変わらない」
「私が君に言っていない事を聞いたら変わるかもしれない」

「それでもだ」

『セブルス、私の考える友達はね、全てをさらけ出さなくてもいいんだ』

一年生の時、梅並が言っていたんだ。
秘密があって隠し事をして、心の中で罵倒していたっていい。

「お前と店を開くなんて、毎日研究三昧だろ?最高じゃないか」

僕も、梅並に言っていないことがある。
これを言えば友情が終わってしまうかもしれない程大きな秘密だ。
梅並が僕に言っていない事がなんにせよ、僕は梅並を失うつもりはなかった。


「拠点はどこにしようか、うちにする?」
「いや、僕の家にしよう。誰もいないし、誰も場所を知らない」

二人で店を開くにあたって、僕たちの名前は伏せることにした。
薬の材料は木元家の森から獲ってきている物が多いし、特許を取るとなると材料の公開をしないといけない。
それは避けたかった。

「すごい薬を作ったのに、特許を取らないなんて残念ですね」

せっかく大金持ちになるチャンスだったのにと言うレギュラスに笑って、僕たちは研究を続けられればそれでいいと答える。

スリザリンのテーブルでいつものようになんでも部のみんなと食事をしていると、いつも以上に視線を感じる。
その理由をレギュラスとリリーが話してくれた。クィレルは複雑そうにしていたけど。

「クリスマス休暇とイースター休暇を使って準備を進めよう」
「そうだな」

梅並が僕に微笑めばざわつきが大きくなって、女子からは黄色い悲鳴が、男子からはウゲーっという声が聞こえてきた。

なんでも、去年の夏に倒れた梅並を僕が抱えて医務室に連れて行ったのが原因らしい。
男同士で付き合っていると、みんなが噂の種にして楽しんでいるのだとか。
別に僕は気にしていない。
付き合ってはいないにしても僕が梅並を好きなのは本当だ。

それに、その噂を聞いてもみんなが今まで通りで安心したくらいだ。

「それより、新入部員探さないとね」
「そうね。あたしたちが卒業したらレギュラスだけになっちゃうもの」

「僕としては一人でもいいんですけどね」
「それでは存続できないよ」

「そうなんですけどねぇ、僕や先輩たちみたいに本気で研究したり探求したりする生徒ってそうそういませんよ?」

それに、入部祝いでゲテモノ食べさせられるってみんな言ってましたからと聞いて、破天荒な笑顔を思い出して苦笑する。

「私たちの代で廃部かな?」
「結構いい成績残しましたのよね、この部」

発足して数年しかたっていないのにと、みんなで笑い合う。

こんなに学生生活が充実するなんて、思ってもいなかった。


クリスマス休暇、梅並と二人で家へ向った。

「梅並はここを使ってくれ」

案内したのは母さんの部屋。
客室にするのも物置にするのも嫌だけど、梅並ならいい。

「嬉しいけど、原型をとどめなくなるよ?」
「好きにしてくれて構わない。使われるならお前が良い」

「・・・ありがとう、セブルス」
「ああ」

大晦日まで二人で掃除をして、荷物を運びこむ。
そして庭にある陣で木元の家へ行ってみんなに報告した。
陣はこのまま繋げておくからいつでも来いと言われたし、行くとも言われた。

「やっふー!イギリス行き放題!」

蘭樹が一番喜んでいたように思う。

お正月も終わり、家の守りを強化したのを確認した頃レギュラスから手紙が来た。

「やっぱり来たいって」
「あいつは、貴族としてパーティーとかあるんじゃないのか?」

「ね?」

ため息を吐きながら僕の家でレギュラスを迎え、一緒に木元の家へ行く。

「わー、冬に来たの初めてです」
「そう言えばそうだね」

今度からは暖炉があるから行き来がしやすくなるねと笑えば嬉しそうに頷いて炬燵に入る。

お前は本当に貴族なのかと言いたい。

「ランジュさんはいないんですか?」
「兄さんは、もうすぐ帰ってくると思うよ」

イギリス行き放題になったから出かけてるんだと言えば、納得したように頷く。

「アーサーさんたちに会いに行ってるんですね」
「ううん。あった事のない友達を探しに行ってるんだ」

「会ったことのない?」
「うん」

その人の名前はトム・マールヴォロ・リドル。
梅並や蘭樹の曾お爺さんにあたる人の友人なのだと言う。

「曾お爺さんの友達って、生きてますか?」

眉をひそめるレギュラスにクスクス笑って温かいココアをだし、僕と自分の前にコーヒーを置いて一緒に座る。

「曾お爺さんって言っても、若くして亡くなった人だからね。結構最近の人なんだよ」

享年十六歳。十五歳までホグワーツに通っていたのだが、元々長くは生きられないと言われていた人なのだと言う。

「だからすぐに結婚して、お婆さんが生まれたのは十三歳か十四歳の時なんだって」
「若すぎません!?」

「変わった人だったらしいよ」

クスクスと楽しそうに笑って、会ったこともない曾お爺さんの話をする。
僕は静かにその話に耳を傾けた。

「どうせ長く生きられないなら、思いっきり世界を見て友達をたくさん作りたいって、卒業まではいられないって分かっててホグワーツに入学したんだって」

そして多くの友人を作り、幸せだったと話していたそうだ。だが、

「トムさんの事だけは気がかりだったみたいで、死ぬ間際まで話してたって」

トムが道を踏み外してたら、殴りに行ってやってくれ。

「死に際の人間にまで心配されるトムさんって、どんな人だったんですか?」
「さぁ、ただ、最後のお別れをした時捨てられた子犬みたいな目をしてたらしいよ」

「・・・レギュラスみたいな人だな」
「僕はそんな目をしません!」

「よくしてるよ?」
「してませんよ!?」

「ただいまー!さびー!!」
「あら、お帰りなさい。何か飲む?」

「熱燗!」
「おっさんか!」

「本物のおっさんに言われたくねぇよ!!」

蘭樹が帰ってきた途端騒がしくなった家の中に笑ってしまう。
コートを脱いで炬燵に入ってくると、やっとレギュラスがいることに気が付いたらしい。

「お、どうしたお前」
「家にいるの嫌なんで逃げてきました」

「正直でよろしい!」
「正直すぎるだろ」

僕の正論も笑って流された。

「それで?手がかり見つかった?」
「いやー、見つけたと思ったら同姓同名の別人だった」

「なんで別人って分かったんですか?」
「分かったつーか、まぁ見つけたのが墓だったんだけどよ」

その墓標に書かれている年が明らかに違ったのだと言う。

「やっぱすぐにはみつかんねぇな」
「僕も帰ったらお父様に聞いてみますよ。年代的には同じくらいらしいですし」

「マジで?頼んだ!」

騒がしくしている内に休暇はすぐ終わってしまった。



学校に戻っても、周囲の反応は未だに変わらない。
それよりも驚いたのが、戦争が急激に加速し始めた事だ。

「何かあったんですかね?」
「今月に入ってまだ一週間もたってないのに、」

行方不明になった家族やマグル出身者が続出し始めたのだ。

「ホグワーツは安全よね?」

みんながそう呟いて、ダンブルドアがいるとお互いを慰め合う。

ただスリザリンだけは、他と少し違う空気が流れていた。
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