ハリー・ポッター(夢)
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六年生も後数ヶ月しか残っていないこの日、梅並の顔色がすこぶる悪い。
「大丈夫?」
「うん、なんだろう。原因が分からないな」
「無理しないで医務室に行った方がいいわ」
リリーも心配して言うが、梅並はほんのり笑って首を振る。
「でも、もう少し頑張りたいんだ」
あと少しで薬ができそうなんだと、青白い顔で笑う。
僕たちが作っている脱狼薬は最終段階まで来ていた。
ダンブルドアに頼んで被験者にレポートを書いてもらい、それを頼りに材料を変えていく。
実際にあって話ができれば一番なんだが、本人がそれを拒否しているとの事なので仕方がない。
「あと一歩、何が足りないのかな」
それを考えると眠れなくなるから、そのせいかなと眉を垂らして過不足ない足で歩き出す。
僕はその姿にため息を吐いた。
「梅並、今月の薬は提出したばかりだ。今は休め」
「でも、」
「でもじゃない。お前が倒れたら誰が薬を作るんだ?」
僕が一人でするのかと言えば、困ったような顔をして口を閉じる。
「僕たちは二人で薬を作っているんだ。一人で考えすぎるな」
「・・・そうだね。ごめん」
授業が終わったら医務室に行ってくると呟いてゆっくりと歩き出す。
「今日はずい分熱いね」
「そうかしら?確かに日差しが強くなってきたとは思うけど」
もしかして熱があるんじゃなかともう一度呼び止めようとした時、
「どけろお前らー!!」
聞こえてきた怒声と、頭の上から降ってきた水の塊。僕とリリーは少しかかったくらいだったが、梅並はもろにかぶってしまっていた。
「ウメナミ!」
「ご、ごめん!君たちにかけるつもりじゃなかったんだ!」
こちらにかけてくる四人組にため息も出てこない。
「梅並、大丈夫か?」
「あー、うん」
ビシャビシャだとローブを脱いだ時、周囲から息を呑む声が聞こえた。
細い体に張り付いた白いシャツ。
伸びてきた黒い髪が艶々と光を反射して頬や首筋に張り付いていて、その姿は決して男とは思えない線の細さがあった。
「とりあえずこれを着てろ」
「え、いいよ。君のが濡れちゃうじゃないか」
「そのままでいるよりましだ」
脱いだローブを肩に掛ければ、そのまま腕の中に倒れてくる。
周りで悲鳴が上がったが、
「ごめ、あれ?立てない」
「ウメナミ!?うそ!どうしたの!!?」
「リリー!荷物を頼む!」
やっぱり熱があったんだ。
僕は梅並を抱き上げて走り出す。梅並の顔がどんどん赤くなって行って、息が荒くなっていく。
「こんなになるまで無理をするな!」
「ごめん、ここまでとは思ってなかった」
謝って、ほんのり笑って見上げてくる。
「君には助けられてばかりだね」
腕の中に梅並がいる。
その事実に急に恥ずかしさがこみあげてきて、顔を背けてしまう。
「お前が言うな」
僕はいったい何度梅並に救われたのだろう。
数えることもできないその幸せを再度認識して、医務室の扉を開けた。