ハリー・ポッター(夢)
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蘭樹たちがもうすぐ卒業する。
その事について大広間で話し合いが開かれた。
「人数が減っちまうんだよなぁ」
「最低でも五人は必要だからな」
「あと一人でも入ってくれるとありがたいんだが」
誰かいないかなぁとみんなが話している向こう側でポッターが立ち上がっているような気がしたけど、誰も反応しなかった。
そして、
「よし!一人捕まえてくる!」
立ち上がった蘭樹はレイブンクローのテーブルへ行って、一人の生徒をズルズル引きずってくる。
「紹介します。今日から新しいメンバーになったクィリナス・クィレル君です」
「本人の了承を取ってから連れてこい」
戸惑っているクィレルの肩を組んでいる蘭樹に先輩たちが離してあげなさいと、まるで動物か虫を捕まえてきた子供に言うみたいな事を言っている中、
「あ、あの」
気弱そうな小さな声が発せられた。
「け、研究ができるなら、入りたいです。僕」
民族別に魔法の進化を研究したいと言って蘭樹や梅並に目を向ける。
「クィディッチの試合の時、何かの葉っぱで飛んでいるのを見ました。あれは東洋魔術の一つですか?」
「なるほど、未来のお兄ちゃんは東洋魔術に興味があると」
「ちょっ、オウカさんとは関係ありません!」
「まぁまぁ、という事で一人新入部員が増えました。入部祝いをしましょう!」
嫌な予感しかしなかったその日の夕食時。
今、僕たちの目の前には土鍋が置かれている。
「デジャブを感じます」
「あたしもよ」
「というか、蓋を開けていないのにすでに異様な匂いがするよ」
パカッと開けたそこからプーンと漂ってきたのは甘ったるい香り。
「今回はデザートでやってみました!」
「どうして変なものしか入れないんだお前は!」
ルシウス先輩に怒られている蘭樹をしり目に、黒のような茶色のような、ヘドロのような液体が煮えている。
「今回はカレーじゃ救えねぇぞ!どうする梅並!!」
さぁ兄を超えて見せろとよく分からないことを言っている蘭樹に、隣で梅並がため息を吐いた。
「もう鍋に戻すのは諦めて、デザートとして食べようか」
幸いそれっぽい物しか入ってないみたいだしと、材料を取に行ってくるねと厨房へ向ってすぐに戻ってきた。
「屋敷妖精たちが準備してくれるって」
「あいつら、どんどん梅並に懐いて行くな」
「出入りしてる回数が多いからかな?」
言っている間に生クリームと大量のチョコレート。そしてカットされたフルーツが出てきた。
「チョコレートフォンデュ!」
「これくらいしか思い浮かばなかったよ」
ワーイと生クリームでチョコレートを溶かしていく梅並の横ではしゃぐ蘭樹は、本当にあと数ヶ月で卒業するのだろうか。
チョコレートと聞いた瞬間グリフィンドールのテーブルでルーピンが立ち上がったような気がするが、無視してそんな事を考えていた。
「こんなもんかな?フルーツを付けて食べてくださいね」
「はーいママ」
「ママじゃないし」
「ママ、あたしミルクが飲みたいわ」
「僕はイチゴが食べたいです。ママ」
「次ママって言ったらやらないよ」
「美味しいが、量がすごいな」
「そうですね、他にも協力者を募りましょうか」
「ではシシーを誘ってみよう」
「私はモリーに声をかけて来るよ」
「おーい、もう一人の未来のお兄ちゃん!可愛い弟のために食うの手伝ってぇ!」
声をかけられたペティグリューは顔を赤くしていたが、目を血走らせたルーピンに自分も連れて行けと迫られて青くなっていた。
いつの間にかみんなで食べることになった鍋は、というかチョコレートフォンデュはすごく美味しかった。
最後の方はルーピンがスプーンでチョコレートを飲んでいたが、まぁいい。
「楽しかったね」
「・・・そうだな」
寮へ戻る廊下で言われ、頷いた。
まるで木元の家にいる時みたいだと思った。それも蘭樹や梅並の御かげなんだろう。
先輩たちが卒業して僕たちは六年生になった。
梅並はさらにおばさんに似てきて、美しくなった。
「髪が伸びて来たな」
「そうだね。でも、今は切る気にならないんだ」
「そうか」
前は短くていいと言っていた髪が少しずつ伸びていく。
黄色みがかっている肌も美しくて、
「セブルス?どうかした?」
「・・・いいや」
同じくらいだった背はもう僕の方が高くて、梅並を見下ろす様になった。
僕を見上げる黒い目が大きい。
その目を見て、僕は息を止めたくなる。
この想いを、誰にも知られる訳にはいかない。