ハリー・ポッター(夢)

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今年で卒業の桜花と桃花はイモリ試験でトップ収めた。
二人とも同じ点数という奇跡をおこし、希望通りの闇払いへ就職が決まった。
さらに驚いたのは、なんでも部のみんなの成績だ。

ルシウス先輩とアーサー先輩が一位と二位をおさめ、更に三位を蘭樹が獲ったのだ。

「ランジュさんって意外性ありますよね」
「どういう意味だこら」

僕たちも成績上位にいつも入っていて、それに張り合っているのかは知らないが悪戯仕掛人と名乗っているポッターたち四人も成績が良かった。

「「来年から一緒に居られないなんて辛すぎるわぁ」」

クィレルとペティグリューに抱きついているあたり、二人ともうまくいっているんだろう。
押し切っているだけかもしれないけど、本人たちが幸せならそれでいい。
深く考えたら負けだと思う。

二人が卒業して、クリスマス休暇も過ぎたある日、アーサー先輩がボロボロになってやって来た。

「ぶはっはっは!やるなぁアーサー!!」
「そう笑ってやるな」

「君も笑ってるよルシウス」

梅並と僕で傷の手当てをしながら訳を聞けば、ずっと好きだった人とデートに行って気が付いたら朝だったらしい。
そして夜抜け出していたのがばれてしまい、お仕置きという体罰を受けたのだとか。

「これ、痕が残るかもしれません」
「残しとけ残しとけ!武勇伝だろ!!」

「他人事だと思って」

ひとしきり笑うと、涙を拭いながらアーサー先輩とルシウス先輩を見てニヤッと笑う。

「今年の強化合宿はモリーとシシーも連れてこいよ」
「「はぁ!?」」

驚いている二人は無視してリリーに顔を向ける。

「今年は女もリリーしかいなくなっちまって心細いだろ?」
「まぁ、そうかしら?」

首を傾げながら答えるリリーに笑顔を深めて二人に「な?」と問いかける。

「学生最後の夏休みだぜ?パーッと遊んで何ぼだろ」
「いつも遊んでるじゃないですか」

「気持ちの違いだ。気持ちの」

蘭樹の誘いに乗った二人、ナルシッサ先輩とモリー先輩が夏休みにやって来た。

モリー先輩はともかく、ナルシッサ先輩は貴族の、それも純血主義の人だから大丈夫かと心配した。
最初は相当みんなの事を冷めた目で見ていたけど、

「あら、ご機嫌ななめね」

おばさんには気を許しているようだった。

森に行くって言うのにフリフリのドレスを着て来て、裾が破れたとか何とか言って怒っているのをおばさんが慰めてからだ。
魔法も使わずに服を直していくその手に、ナルシッサ先輩だけじゃなくてモリー先輩も見入っていた。

「さぁ、おやつを作りましょうか。何か食べたい物はある?」

一緒にキッチンへ消えていく姿は親子みたいで笑えた。

モリー先輩は元々料理が好きだったみたいで、合宿中はずっとおばさんの手伝いをしながら料理を教えてもらっていて、ナルシッサ先輩は申し訳ないけどレギュラスみたいだった。

つまり、母親に構ってほしい子供みたいだった。

そう言ったらレギュラスは怒っていたけど、他のみんなは同意見だったらしい。笑っていた。

合宿最後の日なんかすごかった。
ルシウス先輩とナルシッサ先輩は美男美女で周囲の視線を独占しているし、アーサー先輩とモリー先輩は二人の世界に入って戻ってこないし、蘭樹は婚約者の摩耶と二人ではしゃぎまくっていた。

僕たちは僕たちで出店を堪能していたから構わないけど。


こうして時間が過ぎて僕たちが五年になった時、その事故は起きた。

レギュラスがシーカーになって、僕たちは毎回その応援に来て活躍を見ていた。
この日はスリザリンとハッフルパフの試合で、またレギュラスの活躍で試合が終わるだろうと予想していた。だけど、

「避けろ!!」

誰かの叫び声が響いた時にはもう体が押されていて、僕に覆いかぶさって来た梅並が低く呻いてずり落ちていく。

「キャー!!」
「誰か!救護班を!!!」

周りが騒がしい、僕の腕の中では梅並が顔を歪めている。

そして、赤黒い液体が手にべっとりついていた。

ブラッジャーが誰かの箒を破壊して、その破片が飛んできたのだ。
梅並の肩から背中にかけて突き刺さっているこれが箒の破片なのだろう。

「ウメナミ!!」
「触るな!」

手を伸ばしてきたリリーに叫んで、梅並のローブをそっと脱がせる。

「っ」
「梅並、絶対に気を失うな。僕のローブを噛んで良いから」

白いシャツに滲む真っ赤な血。
箒の破片はそのどれもが深く刺さっていて、ここでは何もできないことが分かる。

「セブルス!乗れ!!」

顔を上げれば蘭樹が細長い葉に乗っていた。
僕は梅並を抱き上げてその葉に乗り、そのまま医務室へ向う。

「梅並、しっかりしろ!もうすぐ医務室につく」
「、ん」

気がもうろうとして来ているのか、視線がかみ合わない。
どうしたらいい。
傷薬は大量に作ってある。
更に作ることもできる。
でもこの破片はどういたらいい。

「マダム!マダム・ポンフリー!!」
「なんです騒々し、なんて事っ、早くこちらのベッドへ!」

僕が抱えている梅並の姿を見て表情を変え、白いシーツが汚れるのも構わずシャツをハサミで切っていく。
梅並の黄色みがかっていた肌は青白くなり、破片が刺さっている場所は肉がえぐれていた。

「これを飲んで、痛み止めです。これから破片を取り出しますから、あなたたちは外へ」

医務室から追い出された僕たちは何も話さなかった。
しばらくすると他のみんなも来て、梅並の容体を聞いて来る。

「ぼ、僕のせいですっ」

レギュラスが震えて声を出す。

「僕があの時ブラッジャーを避けたからっ」
「それは違うわ!あなたのせいじゃない!」

「そうだよ、それは考え過ぎだ」

リリーとアーサー先輩がレギュラスをなだめようとするけど、まるでそれは逆効果の様だった。

「僕がっ、」

気が付いたら殴っていた。

リリーが叫んでる。
初めてまともに人を殴った気がする。
いつの間に来たのかブラックが僕に掴みかかってきたけど、そんなのどうでもいい。

「これは事故だ」

僕はレギュラスと真っ直ぐ目を合わせて言う。

これは事故だ。

「頭を冷やせ。お前は選手として当たり前のプレーをしたんだ。誰も悪くない」

そう、誰も悪くない。

でも、僕の手は今梅並の血で汚れていて、どうしようもない憤りを感じている。

まだ僕を掴んでいたブラックの手を解き、部室に向かって歩き出した。

「どこに行く!」
「傷薬を取ってくるんだ。あと造血剤もいるだろうし、材料があるか確かめたい」

早く、早く。
何とかしないと。

目を閉じると梅並の姿が現れる。
僕を庇って血だらけになった梅並の姿が。

落ち着けと何度も自分に言い聞かせて、手当たり次第薬を持って医務室へ向った。
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