ハリー・ポッター(夢)

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新学期が始まってすぐ、僕と梅並はダンブルドアに呼ばれた。

「先月送ってもらった薬の様子を聞いて来たんでの、二人にはすぐにでも知らせねばと思ったんじゃよ」

青い目をキラキラさせて口を開く。

「体のだるさはあったそうじゃが、一晩理性を失う事はなかったそうじゃ」

それを聞いて、僕たちは抱き合いながら喜んだ。
たった一年半で誰も成功させなかった領域に踏み込むことができたんだから。

二人でより一層研究にのめり込んで、次はだるくならないように、その次は人の体を維持できるように、いつかは満月の夜飲むだけで良い。
そんな薬を作ろうと語り合った。

この日は部室で研究をしていて、昼食になったことにも気づかなかったらしい。
教科書を取りに来たリリーに呆れられて大広間へ向かう。

リリーに誘われるままグリフィンドールのテーブルで食事をすることにした。

「ウメナミって本当におばさんそっくりね」
「うん、髪が長くなった時自分でも驚いたよ」

桜花と桃花も似ているが豪快な性格がおじさん譲りだし、蘭樹も男にしては華奢な印象を受けるが、それは服を着ているとそう見えるだけという事実もある。

「はぁ、今思い出しても興奮するくらい楽しかったわ。来年が楽しみで仕方ないの!」
「うちのみんなも楽しみにしてると思うよ。特に父さんが」

その言葉に大広間がざわついてポッターが立ち上がったが、僕たちは無視を続ける。

「おばさんの料理もとっても美味しかったでしょ?今度教えて欲しいって手紙を書いても大丈夫?」
「うん、喜ぶと思う。母さんは料理が好きだから」

「確かに、いつもキッチンにいるイメージがあるな」
「時間があったら何か作ってるからね」

在学中にこっちの料理を覚えてアレンジしてるらしいよと言うのを聞きながら、おばさんの料理に慣れた舌からすると味が劣る料理を食べる。

「和食が恋しくなる」
「すっかり日本人になったね」

「仕方ないわよ、本当に美味しかったんですもの」
「今度何か作ろうか」

簡単なものなら作れるよと話していると、レギュラスが肩で息をしながらやって来た。

「ぼ、僕も食べたいです」

どうしたと聞きたいが、リリーの隣にぐったりと座り込んだので質問は飲み込んだ。

「部室に行ったらいなかったので、ここかなって」
「そんなに急いで来なくてもまだ時間はあるよ」

「先輩たちはすぐ研究に入っちゃうじゃないですか」
「そう言えば、最近はさらにのめり込んでるわよね」

あたしが声を掛けなかったらお昼にも気づかないで薬の調合してるんだものと、リリーも肩を落とした。

「やっと成果が出て来てね」
「止まらなくなる」

「ね」

黙々と食べ進んでいると、レギュラスがそう言えばとかぼちゃジュースをゴブレットに注いで首を傾げた。

「運動神経良いのに、なんでクィディッチの選手にならないんですか?」
「私は箒で空を飛ぶことに慣れなくてね」

周囲がうるさいが、もうその反応にも慣れてきた自分がいる。
と言うか、よく人の話に聞き耳を立てていられるなと関心すらする。

「そう言えば、ウメナミ先輩が飛んでる所見た事無いです」
「最後に飛んだのは授業の時かなぁ」

「箒を使わない飛び方ってあるんですか?」
「あるよ。葉を使うんだ」

それに乗って飛ぶんだよと言ってミルクを飲む。

「さて、部室に戻ろうかな」
「僕も行く」

「もうですか?!」

慌てて止めに来たレギュラスに首を傾げ、その顔を覗きこむ。

「もしかして、何か話があった?」
「、話というか、その」

言いよどむので座り直し、続きを促す。

「その、今度クィディッチ選手の選抜があって、」
「もしかして、レギュラスでるの!?」

「はい。試験を受けるだけでもやってみないかと言われました」
「すごいじゃないか」

「でも、」
「?」

思いつめたように下を向いて、初めて会った時のように涙目でこちらを見上げてくる。
何かに怯えているかのように。

「クィディッチを始めたら練習とかで部活の時間が減ります」
「そうだろうね。仕方がない事だと思うよ?」

「、やっぱり、そうなったら退部、ですか?」

それなら僕は試験に出ませんと言ってまた下を向いた。

「お前、結構バカなんだな」
「ふはっ」

「失礼よ、レギュラスは真剣に悩んでるのにっ」

噴出した梅並と笑うのを我慢しているリリー。
それを困惑の表情で見ているレギュラス。

「ごめ、ごめんね。笑ってごめん」

梅並はレギュラスの頭を撫でて、最後にクスリと一つ笑った。

「大丈夫だよ、君が天体観測を辞めないかぎり退部はないから」
「本当ですか?」

「うん。安心して良いよ」

そしていつものようにほんのりと笑顔を見せる。

「レギュラスがチームのメンバーになったらお祝いしないとね」
「そうね!なんでも部でパーティーをしましょう!」

「・・・闇鍋パーティー以外がいいです」
「兄さんに釘を刺しておくよ」

クスクスと笑っている梅並に安心したのだろう、肩の力を抜いてため息を吐いてみせる。

レギュラスは元々梅並に懐いていた。
そして、夏休みに行われた強化合宿で蘭樹にも懐いた。
さらに言えばなんでも部のみんなに心を開くようになっていた。

「研究があっても、応援に来てくれますか?」
「もちろんだよ」

貴族とかブラック家とか全部忘れて、子供の様に梅並を慕う姿は見ていて微笑ましくなる。

テーブルの向こうからそれを面白くなさそうに見ているシリウス・ブラックが居ても、もう別にどうでもいい。
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