ハリー・ポッター(夢)

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「リリー!今年の夏休みなんだけど、僕の家に来ないかい?」
「行かないわ。家族と旅行に行く予定だし、なんでも部の強化合宿もあるの」

「強化合宿?」
「ええ、ウメナミの家に行くのよ」

「ウメナミ!?そんな、危ないよ!!女の子が一人で男の家にいくなんて!!」

喚くポッターにリリーはため息を吐きながらウザったそうに顔をしかめる。

「危なくないわ。なんでも部のみんなもいるんだもの」

桜花も桃花も女の子よと言って、スタスタと足を速める。

「まさかスニベルスも、」
「セブルス・スネイプよ!当たり前でしょ?」

「僕も行く!!」
「いい加減にして!」

ついにキレたリリーはそう叫んでポッターと向かい合う。

「あなたは部に入ってる訳でも、何か研究してる訳でも、ましてやウメナミと友達でもないでしょ!?」

バンッと部室の扉が開いて入ってきたリリーに、みんなの視線が向く。

「あいつもなぁ、攻め方間違ってるっつうか、ストレート過ぎて人の神経逆撫でるっつうか」
「可愛いじゃない」

「幼さ故よね」

ふふふっと笑っている桜花と桃花だけど、リリーは相当頭に来ているのかドカッと大きな音をたてて椅子に座った。

「どうしてジェームズはあんなにわがままなの?!自分の事しか考えないし、やめてって言ってるのにいつまでもセブの事を変な呼び方で呼ぶのよ!?」
「「それこそ幼さ故よねぇ」」

「まぁ、あのクソガキも一応男だからなぁ」
「酷い言いようだ」

「ルシウス程紳士になれとは言わねぇけど、アーサーぐらい優しくなればなぁ」
「、なぜ今私が出るんだっ」

「照れんなよ」

ワイワイ騒ぐみんなを見ていると、梅並の視線を感じた。
顔をそちらに向けると申し訳なさそうに眉を垂らしていて、何を言いたいのかすぐに分かった。
僕は気にしていないと首を振って、鍋の中身をかき混ぜることに意識を戻す。

自分でも驚くほど、ショックを受けていなかった。

今でもリリーの事は大切で、一緒に居ると楽しい。
それは前と同じなのに何か違う。その理由は、よく分からない。

「ねぇ?強化合宿って何を持って行けばいいかしら」

日本に持って行かなきゃいけないものって何?と、機嫌を直したリリーが聞いて来るが、特にこれと言って思い浮かぶものがない。

「あえて言うなら、動きやすい服か?」
「そうだね。ラフな服を持ってくるのをお勧めするよ」

家は森に囲まれてるし合宿中は動き回るだろうからと言って、これから始まる夏休みに思いをはせた。


そして夏休み、

「すごい!ここがウメナミの家なの!?」

リリーは興奮していた。

それもそうだろう。
僕も初めてこの家に来た時は同じことを思ったんだから、よく分かる。

色鮮やかな森は今まで見て来たどの森よりもきれいで、口から入ってくる空気は澄んでいる。

見慣れない日本家屋はその森に馴染んでいて、見た瞬間から引き込まれるのだ。

「リリーはあたしたちの部屋を使って」
「夜は女子トークで盛り上がりましょ?」

「レギュラスは私の部屋においで。セブルスもいるから淋しくないよ」
「明日の朝から稽古場行くからな!今日はゆっくり休んどけよ!」

蘭樹の声にみんなが返事をして、案内される部屋へ入って行く。

「稽古場ってなんですか?」
「体を動かすところかな」

「おじさんに日本の体術を習うんだ」

慣れるまでは朝食を減らした方がいいと呟けば、梅並がクスクス笑っていた。

荷物を置いたらレギュラスとリリーを連れて森へ行く。
みんなに二人を紹介するためだ。

「またわっぱを連れてきたのか」
「うん、新入部員なんだ」

「ククッ蘭樹はほんに面白い」
「名はなんという」

レギュラスに自己紹介しろと肘で小突くと、ビクッと飛び上がって木の上を見る。

「れ、レギュラス・ブラックですっ」
「リリー・エバンスです」

「女子もきよったか」
「男はまだ幼い、セブルスよりも下じゃな」

さわさわと木を揺らしていなくなったみんなを見送って、梅並はレギュラスの頭を撫でてほんのり笑う。

「星を見る時は言ってね、私も一緒に見るから」

一人になっちゃいけない時と、外に出ちゃいけない時があるからと言って家へ戻っていく。

「こ、怖くないんですか?」
「怖くないよ。みんな家族だから」

「でも、」
「みんなと私たちは生きる時間が違うんだよ」

だからそのルールは守らないといけないと、また頭を撫でる。

「最高齢の方はうちのご先祖様を知っているんだ、それくらいみんな長生きなんだよ」
「キモト家は何年くらい続いている家なの?」

「さぁ、分からない」

日本の歴史に出てくるよりも前なのは確かだねと森を抜けて見えてきた家を見る。

「ただ、ずっと長い間みんなに守られてきたのは知ってるよ」

木元はそういう家だからと中へ入って行った。


次の日、僕たちは朝食を食べ終えて稽古場へ行き、去年みたいにおじさんにしごかれた。
レギュラスが目を白黒させて投げられた所や、リリーが軽く悲鳴を上げているのを見ながら、僕は梅並と組合う。

真剣な僕たちの向こうで桜花とアーサー先輩、桃花とルシウス先輩が向かい合っていて、蘭樹がおじさんに雄叫びを上げながらかかって行っていた。

「みんな、お昼ができたわよ」

みんながくたくたになった頃おばさんが来て、重い足を引きずる様にリビングへ向った。

「これ、去年もやったんですか?」
「ああ、やった」

「先輩たちもセブルスも、去年より強くなってたね」
「俺には負けるがな!」

「俺に勝ってから言え」

ガハハと笑ってるおじさんの声が廊下に響いた。

昼食後、梅並と森へ行くと言うとレギュラスとリリーが驚いたようにこちらを見て来た。

「先輩って、意外とタフなんですね」
「意外ってなんだ」

「そう言えば、何冊も本を軽々と持ってたような・・・」
「・・・」

「室内で研究してるイメージの方が強いのかな?」

クスクスと笑う梅並にため息を吐いて、森へ材料集めに出かけた。

少し早めに戻って、夕飯の準備をしているおばさんの手伝いをする。
するとまたレギュラスが来て驚いていた。いちいちうるさい奴だ。

「僕も、何かできますか?」
「じゃぁ、みんなを呼んできてくれる?」

配膳ももう終わるからねと梅並が言えば嬉々としてキッチンを出て行く。
その後ろ姿を見ながら、あいつはつくづく梅並に弱いなと苦笑が漏れた。
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