ハリー・ポッター(夢)

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あの闇鍋パーティー以来、ポッターたちの嫌がらせが少し悪質じゃなくなった。
ただなんでも部の活動とかでリリーと話すことが多くなったからか、そのことについては以前と同じように絡んできていたけど。

「セブルス、今年のクリスマス休暇はどうする?」
「家に帰るつもりはないな」

部室で薬の調合をしながら答えると、じゃぁと言って梅並が笑顔を向けてくる。

「家で年越ししない?」
「お、いいねぇ!そうしろよセブルス!お年玉もらえるぜ!!」

「オトシダマ?」

聞きなれない単語に首を傾げれば、桜花と桃花が教えてくれた。

「新年が始まったお祝いにね」
「お小遣いがもらえるのよ」

「そ!一年の中で一番多い額もらえんだぜ!」
「「ビッグイベントなのよ!!」」

今年は何に使おうかしらと話し合いだした二人を見て、梅並に顔を向ける。

「除夜の鐘を聞いたりとか、年越しそばを食べたりとか、きっと楽しいよ」

気が付いたら僕は頷いていて、なんでも部のみんなと一緒にホグワーツ特急に乗っていた。

木元家のみんなはまた僕を快く受け入れてくれて、日付が変わるまでずっと蘭樹たちと花札という日本のカードゲームをして遊んだ。
真夜中に響くゴーンゴーンという音を聞きながら、梅並と分厚い本を開いて薬の話で盛り上がる。

「おいおい、今日くらい研究の事は忘れろよ」
「「真面目ねぇ〜」」

「さぁみんな、お参りに行くわよ」
「「はぁ〜い」」

「お参り?」

出かける準備を始めたみんなを見て首を傾げれば、梅並にコートとマフラーを渡された。

「本来は神社やお寺に行くんだけどね、うちはちょっと違うんだ」

お参りする神様がこの山そのものみたいなものだからと、みんなで手にいくつもの酒瓶を持って歩き出す。

少し行くとそには社(やしろ)と呼ばれる小さな家みたいなものがある場所についた。

ここには来たことがあった。

夏休みにみんなで来て、梅並とは薬草や虫なんかを取りに来た場所だ。

「今年もよろしくお願いいたします」

おじさんが手を合わせて頭を下げる。
みんなも同じようにするのを見て、僕も同じように真似てみる。

日本が全部そうなのか分からないけど、木元の家は不思議なところだ。

この日の夜、なんだか外が騒がしかった。
夏休みの時も“お盆”だからだよと言われていたけど、あの時よりもさらにはっきり聞こえてきたいくつもの声。

「今年も一年が終わったか」
「新年の幕開けじゃ」

「おお、上等な酒じゃ」
「おや、今年は梅酒がないのかい」

「夏にたらふく飲んだからな」
「まだ漬け込みがたらんのじゃろ」

ガヤガヤするたくさんの声。
寝返りを打って隣を見ると、梅並と目が合った。

「眠れない?」
「・・・すこし」

「騒がしいからね」

クスクス笑って、笑顔を深めてくる。

「今は外に出ちゃダメだよ」

笑顔のまま、真剣な目で僕を見る。

「なぜだ?森のみんななんだろ?」
「うん。でもね、こういう時のみんなに近づけるのは当主だけなんだ」

「おじさん?」
「今はそうだね」

その前はおじいさん。そのさらに前は曾お爺さん。代々そうしてきたのだと言う。

「当主以外が行くと連れて行かれちゃうんだよ」
「どこにだ?」

「あっち側の世界に」

モゾリと動いて布団から手をだし、僕の手を握る。
梅並の手は僕と同じくらいの大きさだった。

「セブルスとは人間同士のままでいたいから、行かないでね」


いつの間にか寝むっていたようで、気が付いたら朝だった。
隣に梅並の姿はなくて、着替えてリビングへ向う。

「おはよう」
「ああ、おはよう」

そこにはいつもと同じようにほんのり笑っている梅並がいて、誘われるまま僕も炬燵に入る。
この炬燵というテーブルはすごく温かくて気持ちいい。

「二人とも、ご飯の準備してる間にビンを持ってきてくれる?」
「分かった」

「?」
「昨日持って行ったビンだよ」

中身は空になってるから二人でも持てるよと言われ、大きめの木箱を持って外に出る。
梅並の言うとおりビンの中は全部なくなっていた。

「あんなにあったのに」
「うちのみんなはお酒好きだから」

ビンを箱に入れていると何か光る物を見つけた。
それは氷のように冷たくてキラキラした水晶のような石だった。

「みんなからのお年玉だね」
「これはなんだ?」

「さぁ、なんだろう」

分からないと言ってクスクス笑う。

「ただ、当たりだと思うよ」
「はずれがあるのか?」

「うん。兄さんは馬糞もらったことあるって」
「・・・はずれにも程があるな」

「だよね」

クスクス笑っている梅並に僕も笑い返して、二人で箱を持って家へ帰っていく。
よく分からないけど、みんなからのお年玉という石はなくさないようにポケットへしまった。

おじさんとおばさんからもらったお年玉はすごくいっぱいのお金で焦った。
こんなにもらえないと言うと蘭樹が俺がもらうと言っておじさんに殴られていた。
その後お爺さんとお婆さんもくれて、本当にもらって良いのかと梅並に聞くと、

「うちはお小遣い制だからね。もらえる時にもらっておくに限るよ」
「そうよ!これから必要なものも増えていくんだから」

「そうそう、来年はホグズミード行くんだもの」
「「今の内に貯めておいて損はないわ」」

「ハニーディークスとかマジで最高だから!いくらあっても足りねぇって!」

みんなに押し切られて、ありがたくもらっておくことにした。
そして、家にいる間は出来るだけおばさんたちの手伝いをしようと心に誓った。

「来年が楽しみだね」

木元の家は温かくて、梅並の隣はとても心地よくて、ここはつくづく不思議なところだと思う。

クリスマス休暇が明けて、またなんでも部の活動が再開した。
図書館でいろんな本を読んで薬の研究をしながら、お年玉で貰った石についても調べてみる。
だけどどこにも載っていなかった。

「ただの石ではないと思うんだけど」
「それは僕も同感だ」

いつ触っても氷のように冷たい水晶のような石。
その石はいつも僕のポケットに入っている。

「使う時が来たら分かるって」
「?」

「俺のもらった馬のクソは畑の肥料になった」

貰った時はマジでありえねぇと思ったけどなと顔をしかめる蘭樹にそう言うものなのかと頷いて、またポケットへ石を戻す。

それからもずっと、この石は僕のポケットに入っていた。
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