ハリー・ポッター(夢)

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「おはようございます!」
「おはよう、レギュラス」

「おはよう」

迷子になっているところを助けてからというもの、レギュラスに懐かれた。

ほぼ毎日僕たちの前に座って食事を摂っている。

「レギュラス、同じ学年の子と食べなくていいの?」

あまりにも僕たちの後をついて来るから心配したのだろう梅並が聞けば、体を小さくしてこちらを見てくる。
あの泣きそうな顔で。

「その、ご迷惑でしたか?」
「ううん、そうじゃないよ」

同い年の友達を作らなくていいのかと思ってと、パンケーキにバターを塗る。

「・・・友達って必要ですか?」
「いいや?無いと生きていけない訳でもないしね。人それぞれだと思うよ」

梅並は笑って、レギュラスのゴブレットにミルクを注ぐ。

「でも、いたら人生が豊かになるよ」

セブルスも飲む?と聞かれたので頷いてゴブレットを手に取った。

「その“友達”は、同年じゃなきゃいけませんか?」
「何歳でもいいんじゃないかな?」

「じゃぁ、僕は先輩たちと友達になりたいです」

梅並はクスクス笑い、ありがとうと礼を言ってレギュラスの頭を撫でた。

二年になってすぐ、梅並が寮の部屋を代わってもらう事は出来るのかと夕食の席で聞いた。

それは僕も知りたかったことだったのでルシウス先輩が頷くのを見て気分が高揚した。

「代わって欲しい部屋の生徒たちと話を付ければ可能だよ」
「お前ら寝る時間も研究のこと考えてんじゃねぇの?」

ちゃんと休んでんのかよと蘭樹が顔をしかめるが、僕たちはそんなの気にならなかった。

「なら僕のルームメイトに代わってもらおう。こっちは二人部屋だ」
「そうだね、私の方は四人部屋だからそっちの方が都合がよさそうだ」

それで、そのルームメイトは誰?と聞かれ、僕は答えることができなかった。

「・・・顔は分かる」
「一年一緒に居た相手だろ?!」

「話した記憶がない」

部室か談話室でずっと研究をして、消灯時間になったら眠りに帰るだけ。
それに、相手は多分純血主義で、僕の事を嫌っている様に思う。

みんなと一緒に居ると忘れてしまいそうになるけど、スリザリンは今でも純血主義がほとんどだ。

「セブルスもだけどよ、梅並もずっと部室にいるし」

お前ら見回りの先生とかが来なかったら部室で生活してそうで怖いぜと今日も大きな口で肉を食べていた。

「部室ってなんですか?」

研究?と、今まで口を開かなかったレギュラスが首を傾げて聞いて来た。

「ああ、私たちが入っている部活だよ」
「なんでも好き勝手やってやろう、略してなんでも部」

「有り余る才能と意欲を発揮できる部、のはずじゃなかった?」
「会長はルシウスな!」

「全てが事後承諾だったがな」

ちなみに部員数は七人だよと梅並が笑って教えれば、目を輝かせて身を乗り出してくる。

「その部!僕も入りたいです!!」
「入部希望者来たー!」

「うるさい」
「あたしも入りたいわ。とっても楽しそうなんですもの」

レギュラスに続いてリリーも手を上げると、グリフィンドールのテーブルでポッターが立ち上がって何か叫びだした。

「僕は反対だよリリー!そんな得体の知れない部に入るなんてっ!!」
「誰ですか?」

「ストーカーよ」
「将来の伴侶だ!!」

「妄想癖があるの。気にしないで」

リリーの目が座っていることに気が付いてレギュラスが少し怯えていたが、それは僕もなので何も言わなかった。

「入部希望は嬉しいが、条件がある」
「んなもんあんの?」

「全員で話し合ったじゃないか」
「そうだっけ?」

「「・・・」」

二人は立ち上がってテーブルを回り込むと蘭樹を引きずって大広間を出ていった。
姿が見えなくなった廊下の向こうで「大車輪!!」と叫んでいる蘭樹の声が聞こえたけど、それについては深く考えないことにした。

「入部についての必須条件は最低でも二つあるんだ」

梅並も深くは考えない事にしたのか、リリーとレギュラスに向き合って話し出す。
二人は困惑していたけど、僕たちは無関心を貫いた。

「一つは部に入って何をするのか明確にする事。夏休み前にはその成果を校長先生に報告することになってるからね」

「僕たちは新しい薬の研究、先輩たちもそれぞれやる事を決めて毎日なにかしてる」

「その、ランジュさんもですか?」
「うん。兄さんは古代魔法の解析と復元をしてるよ」

「・・・意外です」
「そうかもね」

クスクス笑って、開いている扉から聞こえてくるルシウス先輩とアーサー先輩の説教の声に笑顔を深めた。

「もう一つの条件は、部内でもめ事を起こさない事。つまり差別意識を持ち込むなってことだね」

話を聞いていた大広間のみんなが動きを止めたような気がしたけど、僕たちは気にしない。

「私たちは研究をするためにあの部室を使っているからね。差別意識があるとそれだけで居心地が悪くなる。研究に支障が出るのはお断りだよ」

いつになく少しきつめの言葉を使った梅並にちょっとざわついたけど、みんなが知らないだけで梅並は基本的にこんな感じだ。
フェミニストだから勘違いしている奴もいるみたいだが、梅並は頭がよく人の感情を読むのがうまい。

腐ってもスリザリンに組分けされただけはある。

「もしかして梅並たちが説明してくれてたのかい?」
「はい、入部条件についてはですけど」

「ありがとう。条件を聞いても入部する気になったらいつでも言ってくれ」

何事もなかったように戻ってきた三人は、リリーとレギュラスに笑顔を向けて座り直した。

「せっかく食べたステーキ吐いちゃった」

メソメソしている蘭樹だが、新しい肉を皿にのせると喜んで食べ出したので何があったか聞く人はいなかった。

「僕、入部したいです」

食事に戻ろうとするみんなを前に、レギュラスが口を開いた。

「天体の観察と研究をしたいんです。だから入部を認めてください」
「あたしもお願いします。研究内容は今ある薬の改善と改良です」

「リリー!?」

ポッターの声はキレイに無視して、みんなが二人に笑顔を向ける。

「ようこそ、なんでも部へ」
「歓迎するよ」

「夏休みは強化合宿もあるからな!覚悟しとけよ!!」
「天体観測なら、うちは丁度いいかもね」

「確かに。あそこは星がよく見えた」
「本当ですか!?」

ワイワイと盛り上がる僕たちを、ダンブルドアが微笑ましそうに見ているような気がして顔をそちらに向けたけど、目は合わなかった。

青いキラキラした目で蘭樹を見ているのかと思った時、

「メンバーも増えたことだし」
「歓迎会をやりましょ?」

アーサー先輩の後ろに立っているのは桜花と桃花。
どうやらリリーたちの入部を祝いに来てくれたようだ。

「歓迎会か。最近気温も下がって来たし、鍋パーティーだな!」
「鍋?」

「なに?」
「日本の伝統料理だ!」

明日の夕食もここに集合なと言う蘭樹に、ナベがどんなものか分からない僕たちは首を傾げていたけれど、桜花たちはレイブンクローとグリフィンドールのテーブルに行ってクィレルとペティグリューを誘っていた。
梅並も楽しみと言っていたから、きっとおいしい物なんだろう。
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