ハリー・ポッター(夢)

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あれから一ヶ月、今日も梅並の鞄はパンパンだ。
チョコをくれた女子たちへのお返しが入っているらしい。

「あ、メアリー」

梅並が近づいて行く先にはハッフルパフの女子が数名。
振り返った女子、多分メアリーが梅並を見て顔を赤くした。

「ウメナミ、どうしたの?」
「今日はホワイトデーだからお返しに来たんだ」

「え」
「これ、よかったら食べて」

鞄から出したのはキレイにラッピングされているパウンドケーキとカード。

「あのガトーショコラ、すごく美味しかったよ」

手を振ってこちらに戻ってくる梅並は見ていなかったが、後ろですごい騒ぎになっている。

ああ、頭が痛い。

そんなことを繰り返して大広間へ入った。
そして、僕を連れてグリフィンドールのテーブルにいるリリーに声をかける。

「リリー」
「あら、どうしたの?」

テーブルの向こうで立ち上がったポッターが居たが、横にいた生徒にとがめられていた。
あれは誰だっただろうか。

「ヴァレンタインのお返し。ハッピーホワイトデー」
「まぁ!ありがとう!」

笑顔で受け取ったリリーに笑い返して、梅並が僕を小突く。

「・・・」
「ほら」

「、」

僕は鞄から一つの包みを取り出した。それをリリーに渡し、顔を背ける。

「もしかして、セブもくれるの?」

コクンと頷けば、ありがとうと言ったリリーの言葉と重なる様にポッターの悲鳴が木霊した。

「ね!一緒にお昼食べましょ?」
「遠慮しとくよ。友達もいるんだし」

邪魔してごめんねと言う梅並に、気にしないで座ってと二人の女子が進め出す。

「どうしよう」
「・・・別にどっちでも」

「じゃぁ、お邪魔します」

リリーが向かいの席に移動したので僕たちは二人並んで座る。
他の女子が居なかったらいつもスリザリンのテーブルで座っている時と同じ位置になったなと思っていると、リリーが包みを開いていた。

「ウメナミのはチョコタルト?セブはクッキー、ありがとう!大切に食べるわ!」

笑顔を向けてくるリリーに嬉しいと思いながらも、心の中で大切になんかしなくていいと思ってしまう僕は、めんどくさい性格をしてると思う。

「ねぇ、他の子たちにも返してたわよね?」
「うん」

「私が知ってる子のと違うんだけど、もしかしてリリーのは特別なの?」

ニヤニヤ笑って聞いて来るこいつらが僕は好きじゃない。
この女子が言ったセリフのせいで、梅並にチョコを渡した奴らから刺さるような視線を背中に感じる。

「リリーっていうか、みんな違うものだよ?」
「、え?」

梅並は料理を取り分けながら平然と言ってのけるが、予想していた答えと違ったのだろう。
リリーの横にいる女子が間抜けっぽい顔をしている。

「みんながそれぞれ、いろんなことを考えて私にくれたチョコだったからね」

私もみんなの事を考えてお返しを選んだんだと、ニッコリ笑ってパスタを食べる。

「フェミニスト」
「礼儀だよ」

背中に感じていた視線はなくなったが、キャーという声が聞こえてきたのでどうなっているのかは見るまでもなかった。

「そうだ、用意しすぎてお菓子が余っちゃってるんだけど、みんなも食べる?」
「なんでお前が反応してんだよ!」

梅並が鞄からチョコタルトを取り出すと、さっきまでポッターを抑えていた生徒が立ち上がっていた。
ブラックに止められているが、目は完全にチョコタルトに釘づけだった。

「だってチョコだよ!?」
「だからなんだ!」

聞こえてくる言い争いに、梅並と顔を見合わせて首を傾げる。

「彼はリーマス・ルーピンよ。チョコに目がないの」
「そうなんだ。じゃぁこのタルト、リリーから渡しておいてくれる?」

「・・・いいの?」
「残すのももったいないしね」

タルトを持って行くリリーを見送って、ため息を吐く。

「フェミニスト」
「彼には何もされてないしね」

良いじゃないかと笑っている梅並を見て、鞄から包みを出して渡す。

「ありがとう」

何も言わない僕にクスクス笑って、

「私も大切に食べるよ」

包みを潰さないそうに鞄へしまった。

「大切になんか、しなくていい」

呟けば笑い声が止んだ。

「そうはいかないよ」

眼が合ったらいつもみたいにほんのり笑って、笑顔を深める。

「誰からだって、想いのこもったものを貰うのは嬉しい事だよ」
「・・・」

「いい加減にしてジェームズ!!」
「例外もあるみたいだけど」

「・・・」

テーブルの向こうで、リリーがポッターにボディーブローをかましている姿があった。

「チョコタルトがぁ〜!!!」

吹っ飛んだポッターによって粉々になったタルトを前に叫んでいるルーピン。

「どうせ毒でも入ってたんだ!丁度よかったじゃねぇか!」
「で、でも、」

「チョコにそんな事する訳ないじゃないか!そんなのチョコへの冒涜だよ!!」
「・・・彼、相当チョコが好きなんだね」

「・・・」

梅並が持っていたものだからと汚い物でも見るかのように吐き捨てるブラックと、それに言い返しているルーピン。
二人の間でオロオロしているペティグリュー。

「そろそろ行こうか。次の授業が始まる時間だ」
「ああ」

ポッターに罵声を浴びせているリリーを見て、さっきから頬を赤らめて梅並を見ていた女子たちに伝言を頼んで大広間を出た。

よく分からない騒ぎはあったものの、この日以降梅並の人気が上がったのは言うまでもない。

余談だが、ホワイトデーのお返しとして桜花と桃花に贈り物をした二人の男子生徒が赤い顔で学校を走り回っていたという噂を次の日の朝食の席で聞いた。
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