ハリー・ポッター(夢)

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そんなことがあってから数ヶ月。

「ねぇ、日本のヴァレンタインってどんな事をするの?」

聞かれ、梅並は考え出す。聞いて来た女子たちは何を期待しているのか目を輝かせていた。

「ん〜、好きな人にチョコを贈ることが多いよ」
「チョコ?」

「うん。でも好きな人にもいろいろあって、loveだけじゃなくてlikeの人にもあげるよ」

後はいつもお世話になってる人とかと言うのを聞いて、うんうん頷く女子たち。

「それで、その、ウメナミは誰かにあげたりする?」

一人が頬を染めて言う。

「いるよ」
「お前にそんな相手が居たのか?」

絶望という言葉がぴったりな顔をしている女子たちのためではなく、本心からの疑問を問いかける。

「うん。兄さんたちとマクゴナガル先生」
「・・・確かに、世話になってるな」

主にポッターたちが、とは言わなくても伝わったらしい。

「でしょ?」

ニッと笑う顔を見て、こいつは本当にスリザリンだなと改めて思った。



そしてヴァレンタイン当日、梅並の鞄はチョコでパンパンだった。

「みんな優しいね」

部室で一緒に食べようねと言ってくる梅並にため息が止まらない。授業が始まる前に、羊皮紙にチョコをくれた生徒の名前とくれたモノを書いてリストを作っていく。

「何に使うんだ?」
「来月、ホワイトデーにね」

お返ししないと失礼だからと笑顔で言う梅並の向こうで、こっちを見ていた女子たちが嬉しそうに顔を手で覆っているのが見えて、またため息が出た。

「フェミニスト」
「礼儀だよ」

日本人はみんなこんな感じなんだろうかと、知りもしない国にもため息を一つ吐いた。

授業を終えて昼食のために大広間へ向っている時、梅並がこちらを向いて、

「ホワイトデー、セブルスは何あげるの?」
「、は!?」

「だってリリーにチョコもらったでしょ?」

そう、僕はリリーにチョコを貰っている。だが、何をお返しすればいいのか分からないでいた。

「私はお菓子を作ろうと思ってるんだ。セブルスも一緒に作る?」
「・・・なぜ、作るんだ」

「気持ちを込めやすいから」

ニッコリと笑ったまま、鞄から一つの包みを出して僕に手渡してくる。

「?」
「ハッピーヴァレンタイン」

「!?」
「友チョコだよ。日本では同性同士でも上げたりするんだ」

クスクス笑って大広間へ向いだす。

「楽しみだなぁ、ホワイトデー」

その声を聞いて、本日何度目か分からないため息を吐いた。

スリザリンのテーブルにはもう蘭樹たちがいて、三人の他に桜花と桃花も居た。

「あ、みんな揃ってたんだ」

じゃぁ今渡すねと、鞄から僕に渡したのと同じ包みを出して手渡していく。

「サンキュー!」

みんなはそれぞれお礼を言って受け取っていて、実は毎年もらっていたのだと先輩たちが教えてくれた。

「厨房の場所分かったか?」
「うん、途中で分からなくなったけど首なし男爵に教えてもらった」

「・・・もしかして、手作りなのか?」
「うん?そうだよ」

まさか本当に手作りしているとは、驚いている僕をよそに蘭樹は顔をしかめて自分の姉たちを見上げる。

「どっかの双子とは雲泥の差だ」
「「うっさいわね!」」

「あたしたちだって今年は作ったわよ!」

そう言って見せてくるのはハートの形をした箱。

「・・・惚れ薬とか入ってねぇだろうな」
「入れる訳ないでしょ!」

「そんなものに頼ったりしないわよ!」

フンッと鼻を鳴らして、桜花はレイブンクローのテーブルへ。桃花はグリフィンドールのテーブルへ向かって行く。

「哀れな子羊たちをお守りください」
「守ってくれるのは誰だ?」

「どっかの誰か」
「お前じゃないのか」

蘭樹たちが笑っていると、

「クィリナスくーん!」
「ピーターくーん!」

同時に聞こえてきた二つの声。
呼ばれたらしい二人の生徒は「へ?」って顔をして自分に近づいてくる桜花たちを見ていた。

「「これあたしの気持ち!受け取ってくれる?」」

場所は違うのに、声が重なって聞こえるってすごいと思う。
ハート形の箱を差し出された二人は大広間中の注目を受けていて、見る見るうちに顔が赤くなって行く。

「「可愛い〜!!!」」

その反応を見た二人がそれぞれの相手に抱きついたのも同時で、騒がしくなる大広間。

「美人じゃん、ピーターじゃなくて俺にしとけば?」

桃花の選んだ相手はいつもポッターたちと一緒にいるピーター・ペティグリューだったようで、近くにいたブラックがテーブルに肘をついて冷かしてきた。
しかし、それも一瞬で終わった。

ダンッと、桃花の足が椅子を壊したんじゃないかと思う勢いと力で振り降ろされたのだ。ピーターを抱きしめたまま。

「ガキんちょには興味ないのよ」

とても冷たい声だった。

「桜花は?やせ形はあんたの好みでしょ?」
「いらない、そんな将来性の無い奴」

そう言われたブラックはポカンと口を開けて二人を見上げていた。
それもそうだろう。

現にブラックはモテる。

入学してからの数ヶ月で何人もの女子生徒と付き合って別れてを繰り返せるほどに。

「「あたしが選んだのはクィリナス君(ピーター君)なの」」

言って、抱きしめていた二人に顔を向けて微笑む。その笑顔はとてもきれいで、見ている何人かが顔を赤らめる程艶っぽかった。

「「あたし無しじゃ生きていけない程、デロデロに甘やかしてあげる」」
「人はそれを調教と呼ぶ」

「「うっさいわよ蘭樹!」」

怒鳴った後、また微笑んで額にチュッとキスをした。

「「時間はまだ二年以上残ってるから、覚悟しておいてね?」」

卒業までの間に落とすからと宣言された二人は、自分を抱きしめていた手が離れると真っ赤な顔のままダッシュで大広間を出て行った。

「「はぁ〜、可愛い」」

それをうっとりとした顔で見送っている二人。

「可哀相に、たった十一歳で魔の手にかかっちまったよ」

蘭樹が呟くと同時に、何かが飛んできてバチッと大きな音がした。
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