ハリー・ポッター(夢)

□4
1ページ/3ページ



クリスマス休暇が近づいてきて、みんなが荷物をまとめている。

「セブルスは帰らないの?」
「ああ」

僕は暖炉の前で本を読み、短く答えた。

「日本でもクリスマスがあるんだな」
「あるけど、うちはどっちかっていうとお正月かな」

「オショウガツ?」
「日本では新年を迎えるお祝いをするんだよ」

だからそのために帰るんだと、早めに終えた宿題を確認して顔を上げる。

「クリスマスプレゼント、楽しみにしててね」

ニコリと笑った梅並は、僕の隣に来た。
そして手に持っていた本を広げて書かれている薬草を示してくる。

「セブルスはエラ昆布って知ってる?」
「いいや?」

「これすごいよ。食べただけで水中人みたいになれるんだって」
「・・・これを食べる勇気が出ればな」

「まぁ、そうだね」

でも人体に害はないってさと、本で見つけたモノをお互いに見せ合い、知識を共有していく。

「休暇はすごく嬉しいけど、自分で何か作ったりできないのが残念だよ」
「まったくだな」

沢山やりたいことは出て来るのに、それができない。
暖炉の前、二人でうつ伏せに寝ころんで羊皮紙へびっしりと作ってみたい薬の事を書いて行く。

「へー、真実薬だって。恐ろしい薬だ」
「悪用すればな」

「そうだね」

いつかこれも作ってみようよと、見回りの先生が来るまでずっとそんな話をしていた。

梅並と過ごす時間はとても静かで、楽しかった。


クリスマス、起きたら足元にプレゼントがあった。
今までの人生でこんなにプレゼントをもらったのは初めてで、包みを開けるのがすごくわくわくした。
一つ開けるたびに、満たされた気持ちになっていく。

そして、一番下から出てきた封筒に手を伸ばし、宛名を見て首を傾げた。
差出人は梅並からで、中には手紙が入っている訳ではなかった。
数枚の柔らかい紙に書かれた模様のような黒と赤のインクの何か。

『クリスマスプレゼント、楽しみにしててね』

あの笑顔と言葉を思い出して、何か意味がある物なんだろうと一人納得し、休暇が終わったらこれが何か聞いてみよう。
早く帰ってこないかなと、楽しみが増えたことに口角が上がった。


休暇が終わり、梅並が帰ってきたのでプレゼントについて聞いてみた。

「現行犯逮捕にいいと思ってね」
「?」

封筒から一枚出して中指と人差し指で挟むように持つ。

「こうやって持つんだよ。そう。これを張り付けられた相手は身動きができなくなるんだ」

この紙はお札と言うらしく、東洋魔術の一つらしい。

「一枚につき一回限りだから、なくなりそうになったら言ってね」
「お前が造ってるのか?」

「うん。こういうのは全部手作りするものだからね。特にこれは特別性だから作るのは時間がかかるんだ。セブルス専用だよ」

言われ、いつの間に用意していたんだと驚いた。

「さぁ、食事に行こう」

梅並はいつだって誰にでも優しい。けれどいつも僕の隣にいてくれる。

最近は僕が一人でいる時をポッターたちが狙ってきていたから、僕でも使えるこのお札をプレゼントしてくれたんだろう。
初めてお札を使った時のポッターたちの顔を、僕は一生忘れないと思う。



ある日、大広間で夕食を取っていると、

「あ、俺らでクラブ作んね?」

蘭樹が唐突に何か言い出した。

「何を言っているのか分からないな」
「有り余る才能と意欲を発揮できる部、なんでも部を提案します」

「名前が適当過ぎて、良い事言ってたのに台無しになっちゃてるよ」
「会長はルシウスな」

「私の意見を聞いてくれ」

クラブを作るにも先生の許可が必要だし、最低でも五人は参加者がいないとできないとルシウス先輩が言い、これで話は終わりだとスープに口を付ける。

「大丈夫だ!ダンブルドアの許可もらってる!」

その言葉に僕と周りの手が止まり、ルシウス先輩はスープを吹き出した。

「汚ったね!」
「、ランジュ。メンバーもいないのにどうやって許可を貰ったんだ」

ナプキンで口を拭きながら冷静を取り戻して聞いて来る先輩に、蘭樹はモグモグとチキンを飲み込んで口を開く。

「クリスマスにプレゼントと一緒に手紙送ったんだ」

ルシウス先輩にアーサー先輩、そして僕たちの名前を書き、クラブを作るならこのメンバーになると思うから許可くださいと言ったら、

「ルシウスが会長ならいいって返事来た」
「あの狸爺」

ぼそっと何か聞こえてきたような気がしたが、気のせいだと思う事にした。

「許可を取るにしても順番が逆だろ。まず私たちに聞いてからにしてくれ」
「だってお前らなんだかんだ文句言うじゃん。最後は俺に押し切られんだから結果は同じだって」

「例えそうであったとしても、お前の口からそれを言われると非常に腹が立つよ」

そりゃそうだろう。

「二人はどうだ?クラブに入ったら堂々と研究し放題だぞ」
「「・・・」」

「最高の餌を持って来たな」
「落とす気満々ですからね!」

この数ヶ月でどんなに魔法薬学にはまっているかを知っている蘭樹からの申し出は、僕たちにとって魅力的過ぎた。

「それで?出された条件はなんだ?」
「ピュー、さすが会長に選ばれたルシウス君!」

頭いいー!と笑顔を深める蘭樹に、先輩は顔をしかめて口笛を吹くなと注意した。

「夏休みに入る前に、一年の成果を報告するようにってさ」
「成果?」

「そ!それぞれ何やってもいいけど、何もしないってのは無しってこと」
「・・・猶予がある分まだましか」

テーブルに両肘をつき、組んだ手に額を当てながら大きくため息を吐く。
その姿が、いろんなものを諦めている様に見えて、僕の知らない二年間で先輩に何があったんだろうと思わせるには十分だった。

「空いてる教室一個もらったから、好きに使っていいってよ」

俺古代魔法の解析するんだと、無邪気な笑顔を浮かべている蘭樹は僕たちよりも幼く見えた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ