ハリー・ポッター(夢)

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梅並がリリーを昼食に誘って以来、ポッターたちがよく分からない因縁を吹っかけてくるようになった。
合同授業の時以外でも、見かけたら一言嫌味を言わないと気が済まないみたいだ。

そして、そんなポッターたちを見て梅並はいつも呆れたようにため息を吐いていた。

「セブルス、行こう」

下らないと言いたげに冷たい目をして僕の腕を引く。

東洋魔術を使うにはとても厳しい修行をしなくてはならないと言っていた。
だから嫌でも精神レベルが上がるのだと。
もしかしたら梅並が人より大人っぽい態度を取るのはそのためじゃないのか。
もしそうなら、意味の分からないポッターの嫉妬はとても幼稚に見えているのだろう。

そんなことを考えて梅並の背中を見ていたら、後ろから何かがぶつかって爆発した。

周りにいた生徒たちが悲鳴を上げて、梅並が目を見開きながら振り返った。僕は爆発の衝撃でそのまま前に倒れたらしい。

「どうだい?僕たちからのプレゼントだ!」

何の事だと思ったのと同時に酷い臭いが鼻をつく。

「クソ爆弾をもろに喰らった気分はどうだ?」

笑いながら言われた言葉でやっと自分がどうなったのか分かった。
被害はどうやら僕と廊下だけの様で、梅並は僕の前にいたから難を逃れたみたいだ。

それを見てホッとしている自分に気づき、疑問に思う。

僕はなぜ安心したんだ?

場違いとは思いながらもそんなことを考えていて、梅並が震えていることに気づくのが遅れた。笑っているのだろうか?

しかし、顔を上げてその考えは一瞬で消えた。
梅並の表情がなくなっていたのだ。
ざわりと背筋が粟立つ。

梅並が、怒っている。

「まさか、こんなにバカだとは思わなかった」

一言、静かに呟くと手を上げる。ポッターたちが杖に手を伸ばすよりも早く、

「縛!」

しゃがんで床に手を付くと、二人の動きがピタリと止まった。

「セブルス、怪我はない?」
「ああ、ない」

「よかった」
「ウメナミ!!」

梅並の手を借りて立ち上がっていると、聞いたことのない焦った声がこちらに駆け寄ってきた。

「どうしたんだこれは!?」
「そこの二人に襲われたんです」

固まったままの二人を指さして、背の高い赤毛の男子生徒に状況を説明する。

「なんて馬鹿な事をっ、誰か!マクゴナガル先生を呼んできてくれ!」

その声に何人かが反応して走り出した。

「酷い臭いだ。君、すまないがもう少し我慢してくれ」
「はい」

誰なんだと思って見上げていれば、その生徒がグリフィンドールだと分かった。

「大丈夫だよ、この人はアーサー・ウィーズリーさん。兄さんの親友だよ。アーサーさん、彼はセブルス・スネイプ、友達です」
「よろしくねセブルス。先生が来たら清めの呪文をかけてあげるから心配いらないよ」

今は汚れているので握手はしないでおいた。

とてもいい状況ではないが自己紹介をしていると、カツカツと早足でやって来る足音に三人で振り返る。

「なんですこれはっ、ウィーズリー!説明なさい!」
「先生、私は全てを見ていた訳ではありませんが、どうやらそこの二人がこの子たちをクソ爆弾で襲撃したようです」

「この子たちは?何の呪文ですか?」
「それは私にも。ウメナミ、術を解いてくれるかい?」

「わかりました」

梅並は止まっている二人に近づいて体に手を置いた。

「解」

言えば、時間が急に戻ってきたかのように二人は前のめりにべシャッと倒れた。

「うわ!?」
「うお!!」

そんな二人を見ても、梅並の目は冷ややかだ。

「無防備な生徒を後ろから襲うなんて何事です!」

グリフィンドール十点減点!高らかに告げて、二人には廊下の掃除と長い説教がお見舞いされた。

「さぁ、後ろを向いて」

掛けられた魔法によって背中のベトベトはなくなった。感触が残っていて気持ち悪いがさっきのに比べれば天と地の差だ。

「ありがとうございます」
「どういたしまして、災難だったね」

「はい」

ポンポンと頭を撫でられる。見上げると、人好きの良さそうな笑顔があった。

「騒がしいと思ったらウメナミの声が聞こえてきて驚いたよ」
「こんなことするとは思ってなかったので、私も驚きました」

驚きを通り越して怒りを覚えているようだったが、それはウィーズリー先輩も分かっていたようで、表情が苦笑に変わる。

「まだまだ幼い子が多いからね。特に今年は、・・・元気な子が目立つ」

とても間を開けて言った言葉に、梅並も苦笑で返した。

ウィーズリー先輩とはそこで分かれて、教室へ向いながら二人で歩いて行く。

「・・・ウメナミ」
「なに?」

「なぜ、さっき怒ったんだ?」

どうしても頭から離れ無くてきいてみた。
やられたのは僕で、梅並に被害はなかったのに。

その疑問をぶつけると、キョトンとした顔で立ち止まる。

「どうしてって、そりゃ、友達がやられたら誰だって怒るよ」
「僕たちは友達なのか?」

「え?」

リリーに言われた言葉を思い出す。
いつも一緒にいるじゃない。

「いつも一緒にいれば友達なのか?」

その疑問も口にすれば、梅並がふはっと気の抜けたように空気を吐いて笑い出した。

「そうか、じゃぁ私たちはまだ友達じゃないよ」
「まだ?」

「うん、まだ」

クスクスと笑って止めていた足を動かしだす。

「セブルス、私の思う友達の定義でいい?」
「ああ」

梅並は笑ったまま、ゆっくりと廊下を歩く。

「私が思うに、相手の事で怒れるようになったら友達だと思うよ」
「?」

「さっき、セブルスがやられて、私は怒った」

頷けばこちらを見て笑顔を深める。

「いつか私がやられて、君が怒りを覚えたら、その時私たちは友達になれるんだよ」
「・・・そうなのか」

「それが全てじゃないけどね」

私はそう思ってるよと、ほんのり笑う。

「そして、その相手の事を自分の事のように、あるいは自分以上に大切に思えたら、親友になれるんだと思う」
「・・・」

私もまだできたことがないから分からないけどと言って、

「でも、とても良いものだとは確信してるんだ」

クスクスと楽しそうに笑う。

「セブルス、私は君と友達になりたいから、待ってるよ」

いつまでも。その言葉に胸が温かくなった理由を、この時の僕は知らなかった。

この事件以来、ポッターたちが僕たちを目の敵にするようになったのは言うまでもない。
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