ハリー・ポッター(夢)
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そいつの名が呼ばれた時、大広間がざわついた。
「ウメナミ・キモト」
聞きなれない発音の名前になんとなく東洋系かと思った。それだけだった。でも、
「スリザリン!」
「イエス!!」
「「うそー!!」」
スリザリンのテーブルから大きな喜びの声と、レイブンクローから抗議の声が聞こえてきて、驚きで周りを見回してしまう。
それは他の新入生たちも同じだったようだ。
ふと、立ち上がった生徒を見ると組分け帽子を椅子に戻し、レイブンクローのテーブルへ手を振って反対側へ歩き出した。
「よっしゃぁ!!梅並ゲットだぜ!」
立ち上がっていた男子生徒にがっちり抱きしめられていた。
あれはもしかしなくてもスリザリンの先輩なのか?
驚きと困惑でそれを見ていると、名を呼ばれた。
「スリザリン!」
拍手で迎えられ、母さんと同じスリザリンである事を喜びながらリリーと離れてしまった事に落ち込む。
「おめでとう、これからよろしくね」
さっき抱きしめられていた生徒だった。
「私は木元梅並。梅並がファーストネームだから、梅並って呼んで欲しい」
「・・・セブルス・スネイプだ」
差し出されていた手を握り返せば、梅並の後ろにいる生徒が両手で顔を覆った。
「早くも兄離れを・・・」
「こっちは私の兄で、今年三年生の木元蘭樹だよ」
「・・・そうか」
よろしくとは言えない雰囲気だった。
ダンブルドアの短い挨拶も終わり、テーブルに現れた豪華な食事。
「あ〜、またしばらくは和食が食えなくなるのかぁ」
「乾麺とかなら持って来たよ」
「マジで!?さすが梅並!どっかの双子とは出来が違うな!」
「「聞こえてるわよ蘭樹!」」
「今立ち上がった二人が姉だよ。桜花と桃花、今年五年生なんだ」
「・・・そうか」
「地獄耳!聞こえてんなら梅並を見習え!」
「あんたが知らないだけで」
「あたしたちは毎年持ってきてるわよ!」
「誘えよ!そういう所だよ見習うのは!!」
寮の違うテーブルなのに立ち上がって言い争っている。
家族なのに仲が悪いのは寮が違うからなのかと思ったが、聞いているとそうでもないらしい。
「ランジュ、そう怒鳴るな。新入生が驚いている」
「そうだな、すまん」
思ったより素直に引き下がった事に安堵していると、
「スリザリン新入生!よく聞け!」
言って、ビッと親指で姉二人を示す。
「あの二人に気を付けろ」
「「どういう意味よ!」」
「ルシウルもそう思うだろ?」
「私を巻き込まないでくれないか」
「ルシウス先輩は兄さんの親友なんだ」
「・・・そうなのか?」
嫌がっているように見えるのは気のせいなのか?そう思って首を傾げていると、プラチナブロンドのルシウスがこちらに笑いかけてきた。
「先輩なんていらないよ、いつも通りでいい」
「ありがとうございます、ルシウスさん」
「入学おめでとうウメナミ。私は三年のルシウス・マルフォイだ。ようこそスリザリンへ、歓迎するよ」
「、ありがとうございます。セブルス・スネイプです」
「あともう一人、グリフィンドールにも兄さんの親友がいるんだけど、ここからじゃ見えないや」
グリフィンドールとスリザリンは昔から犬猿の仲。それはこの学校が創立した時から変わらないと言うのに。
なのに、スリザリンの兄とグリフィンドールの生徒が親友?
「・・・仲が悪いだろ、寮同士」
「らしいね。でも個人は別なんじゃないかな」
現に実例もあるしと、サラダを口に運んだ。
「梅並、お前肉も食え。デカくなれねぇぞ」
「これは食べきれないよ」
皿に盛られた大量の肉にため息を吐き、僕を見る。
「セブルス、肉が食べたくなったらここから取って」
「・・・ああ」
さすがに盛り過ぎだ。
夕食後、監督生に自寮を案内してもらうようにと言われ、みんなで大広間を出ていく。
「寮はこっちだ」
「案内してくれるのは嬉しいけど、兄さんは監督生じゃないよね?」
「気にすんなよ、向う場所は一緒だ」
「気にするよ。他の新入生が混乱してる」
確かに、梅並の一言で蘭樹が監督生ではないことに驚いている者がほとんどだ。
というか、三年生で監督生はないだろう。
「どっちが兄か分からなくなるな。弟の方がしっかりしているじゃないか」
僕を含めた新入生達はオロオロしているが、二年生以上の生徒たちはみんなクスクス笑っている。
もしかしてこのやりとりは珍しい事じゃないのかと思った。
寮につき、梅並とは部屋が違ったのでまた明日ねと手を振られ、二人部屋のルームメイトとは一言も話さず眠りについた。