3月のライオン2(夢)

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パーティーが近づくにつれ、優の顔に影がさしていく。

「優、今からでも断っていい」

実際問題、自分たちには何の関係もないパーティーだ。
盛り上がっている母と義姉には悪いが、こちらも仕事をしている身。断る口実などいくらでもある。しかし、

「ちが、違うんですっ、パーティーが嫌だとかそうじゃなくて、」

下を向いていた顔に赤みがさしていき、恥ずかしそうに視線をさ迷わせた。

「その、ひ、ヒールになれなくて」
「ヒール?」

「今まで、あまり履く機会が無かったので。そ、それに、」
「?」

さ迷わせていた視線をこちらへ向け、意を決したように口を開く。

「け、健吾さんってっ、身長何センチですか?!」
「身長?」

今さらなような疑問だが、そう言えば聞かれたことが無かったなと以前測った時の数値を思い出す。

「195、だったか」
「!よ、よかった〜」

緊張が解けたのか表情を緩め、クシャリと前髪を混ぜる様に笑った。

「大丈夫だとは思ってたんですけど、やっぱり聞いて良かったです」
「なにかあるのか?」

「そりゃ、」
「?」

気の抜けた表情で顔を上げたと思えば、首から徐々に赤くなっていく。

「・・・そりゃぁ?」
「、け、健吾さんの背は、ぬ、抜かしたくないなぁって」

顔を背けながら小声で紡がれる理由。
完全に横を向いているのだが、その耳も首や顔と同じくらい赤くなっていて、

「俺からすれば、君は十分小柄だ」

確かに背は平均よりも高いだろう。だが、肩も腕も指も、男とは違いとても華奢な造りをしている。

頬に手を添えれば、熱でもあるのかと思う程熱くなっていた。

「今、仕事は立て込んでいるか?」
「きゅ、急なものは、」

「そうか」

横を向いたまま答える優に近づき、こめかみ、赤い耳へ唇を寄せる。

「今日は泊まっていくと良い」
「、」

頬に触れている手から、唇から、優の体温が上がったのが分かった。

面白いとも、可愛いとも思う。

そして、頭の片隅で用意したプレゼントを思い出す。

(喜んでくれるだろうか)

喜ばないとはあまり思わないが、遠慮や恐縮などで受け取ってくれないのではないかと不安になる。
だが、それでも自分が贈りたいのだと、細い肩を抱きしめた。
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