3月のライオン2(夢)
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仕事も落ち着いていたこの日、優は一人で日本酒を飲んでいた。
「はぁ、高清水は飲みやすいなぁ」
甘辛く味付けした手羽先や、地元から送られてきた山菜で作った天ぷら。
幸せだと食べながら飲み進めていく。すると、チャイムが鳴った。
「?」
誰だろうと立ち上がり、玄関へ向う。
「はーい、っ隈倉さん!」
「連絡もなしに来てすまない」
「いえ!どうしたんですか?」
首を傾げれば、差し出された白い箱。
「今日は用事で近くまで来る事になっていたんだ」
そこでケーキ屋を見つけたからお土産に買ったと渡された箱を受け取る。
「ありがとうございます!あ、よかったら夕飯食べて行きませんか?」
夕飯と言っても晩酌でしたけどと、誘われるまま中へ入ればテーブルに並んでいる料理が目に入った。
「仕事は良いのか?」
「はい。今は落ち着いてるんで」
隈倉さんも飲みますか?と聞かれたので、一つ頷いて優の座っていたのだろう席の向いへ腰を下ろした。
「あ、日本酒でよかったですか?焼酎もありますよ」
「いや、同じものでいい」
優は元々焼酎をあまり飲まないのだが、隈倉がここに来るようになって何本か常備するようになった。
あの、日本酒がコレクションされている棚の中に置かれているのを見つけた時、妙な嬉しさがあったのはここ最近の事だ。
「昨日地元から山菜が送られてきたんですよ」
なので天ぷらにしてみましたと、皿に盛られている物を指さす。
「電話でお礼言ったらまた遊びに来いって言われました」
今年も夏に戻れそうですとコップと箸、取り皿を準備していく。
「あ、ワサビの葉もあって、今醤油漬けにしているので漬かったら一緒に食べませんか?」
ご飯が美味しくなりますよと、幸せそうな顔をして酒を注がれる。
「ああ、楽しみだ」
「天ぷらは好きなの使ってくださいね。そうだ、昨日の余りで申し訳ないんですけど、おでんも温めましょうか」
立ち上がった優を見送り、改めてテーブルを見た。
塩、抹茶塩、醤油、まるで外食をしている気分になってくる。箸置きと共に用意された箸を持ち、天ぷらに手を伸ばす。
(美味い)
そんな事を思いながら、高清水と書かれた日本酒を飲んだ。
「はぁ、美味しい」
食後、隈倉が買ってきたケーキを二人で食べる。
幸せそうな顔をしてモグモグと食べ進んでいる優を見て、買ってきてよかったと思った。
「このチョコ尽くしのケーキ美味しいですね。今度作ってみようかな」
スポンジもクリームもコーティングもチョコレートが使われている黒いケーキを食べながら零した言葉。
「うまく行ったら隈倉さんにも持って行きますね」
「楽しみだ」
「はい!」
二人の関係はとても良好。
不満などない。
だが、一つ不満を上げるとするならば、
「あ、もう無くなっちゃった。隈倉さんは次何が飲みたいですか?」
「・・・焼酎を貰えるか」
「わかりました」
これだ。
優はいつまでたっても隈倉の事を名字で呼び続けている。
それが別に悪い訳ではない。無いのだが、
「水割りで良かったですか?」
「ああ、ありがとう」
礼を言えば嬉しそうに笑ってグラスを渡してくる。この笑顔を向けられるようになって、どうも欲が出てくるようになった。
その後も飲み、
「はっ」
二人とも酒の匂いがするまま、寝室へも行かず抱き合う。
「ま!部屋っ」
優もこの行為に慣れて来たのか、最近ではもう痛がったりはしなくなってきた。
なって来たが、変わりに本来得られる快感を手にしたようで、
「んんっ!」
その声と表情でこちらを興奮させるようになった。
「隈倉さ、」
「、」
薄く色づいた首筋に口を寄せて吸い上げる。
「健吾」
「え、ぁあ!」
一気に貫いて、逃げようとする細い腰を引き寄せた。
「待ってくださっ」
キスをして黙らせ、後頭部へ手を回して固定する。逃げられないようにして、耳を責めだす。
「やっ!」
「健吾」
押し返してくる手をのけて、腰を押し付ける様に動きながら耳を攻め続け、囁き続ける。
「健吾」
「っ、ぅぁあ!ま!まって!」
「健吾」
「呼ぶ、っからぁあ!健吾さっ、て呼ぶか」
みんなが優を可愛いという。カッコいいともいう。
言っても良いし、その通りだとも思う。
だが、この可愛さだけは誰も知らないでくれと、思う。
耳を攻めていた口を離して、また首筋へキスをする。さっきと同じ場所に、更に強く吸いついて、
「あぁああ!」
肉がぶつかり合う音が聞こえてくる程強く、早く、熱い優の中を出入りする。
「もっ」
「、く」
絡みついて来る力が強くなった。ガクガクと痙攣し始める優の足。
「っぁああ!」
この可愛さだけは、誰にも見せるな。