3月のライオン2(夢)

□1
1ページ/2ページ



優と付き合う様になって数ヶ月。
この日はお互い仕事に余裕ができたという事で、優が隈倉の家へ泊まりに来ていた。

二人の関係は順調だ。

しかし、隈倉には引っかかっている事もあった。それは、優の反応だ。
二人でいればすぐに顔が赤くなるし、キスをすれば逃げ出そうとする。

最初はずい分初々しい反応だなと思っていたが、それを何度も繰り返されるとあの考えがよみがえって来てしまうのだ。


自分を男として見ているのではなく、“憧れ”の存在として見ている優の姿。


もし、優がその“憧れ”と恋愛感情を間違って認識しているのなら。
そう考えるとどうもネガティブになってしまうのだった。



夜、二人で布団に入る。バクバクとうるさい心臓が酷い。心肺停止しそうだ。

「優」
「、はいっ」

肩を大きく震えさせて返事をして振り返る。

「・・・」

が、呼んだ本人の口からは何も言葉が出てこない。

「隈倉さん?」

顔を上げれば振ってくる口づけ。

「っ」
「・・・」

ゆっくりと離れ、肩を掴まれた。そして、異常な程跳ねてしまう肩。

「・・・嫌なら、そう言っていい」
「え、?」

「恋愛云々ではなく憧れから来る感情なんだろ?」

肩を掴んでいた手は離れ、横になっていた体も起こしてこちらを見て来る。

眉間のシワが多いのは、視界が悪いからなのか。

近くに置かれていた眼鏡をかけるために、顔が背けられた。

「無理強いする気はない」

俺は別の部屋で寝ると、立ち上がろうとする袖を引いて静止する。

「あの、なんで、そう思うんですか?」
「・・・」

「いや、隈倉さんにそう思わせた原因が私にあるのは、分かってるんです、けど」
「・・・」

「その、」
「・・・」

「いつかは、こうなるの分かってたんで、言わないといけないとも、思ってたんですけど、」
「・・・なんだ」

「、その」

優は意を決したように固く目をつぶり、掴んでいた袖もきつく握る。

「っしたことないんです」
「・・・は?」

「いやっ、この年でなに言ってんだって感じなんですけど!私自分から女だって言わないと分かんないじゃないですか!だから学生の時とかも誰かと付き合った事も無くてっ、」

誰かに恋愛感情を持ったのも初めてなんですと、袖から手を離した。

「すみません、重かったですね」

顔も下げてしまった優に近づく。そうすれば戸惑いながらも顔を上げてくるので、

「、」

そのまま口づけをした。

不安なのか怖いのか、隈倉の胸に置かれていた手に力が入って行く。
口は離れないままその手を包み、離させた。

口が離れたと思えばいつの間にか押し倒されていて、眼鏡を外していた隈倉と目が合った。

「っ、」

目を固く閉じて顔を背ける。
恥ずかしすぎて顔なんて見ていられない。頭の下にある枕を握って次の衝撃に備える。

「・・・」

隈倉は眼鏡を外し、それをスタンドの側に置く。
そして、露わになっている首筋に口づけた。触れた途端ビクッと跳ねたが、もうそれは気にせず抱きしめる。

優の体は、本人が言っていた通り誰にも触られたことが無いようだった。
素肌に触れれば過剰な程跳ねるし、手が下に向えば震えが強くなる。

安心させるように何度も口づけをして、事を焦らないように解いて行く。だからと言って、我慢が出来ている訳ではない。隈倉自身も、ずっとギリギリのところで耐えているのだ。

「、優」
「ぅ、っ、はい」

「俺はそんなに器用じゃない」

だから辛くなったら言ってくれと、優の腰と肩を抱きしめる。

メリメリ音が聞こえた気がした。

体の中心から力で引き裂からたらきっとこんな感じなんだろうと、どこか冷静な頭で考えるが実際は悲鳴を上げないよう痛みに耐えることで精いっぱいだった。

「優」

大きな手と低い声。

「っはい」
「・・・すまない」

流れていたらしい涙を拭われ、痛みでチカチカする目を開ければ口づけが降って来る。

「っぃ」

隈倉が動けばまた痛みがやって来て、その痛みが口から洩れてしまう。
引き抜かれればズルッと何かが出て行って、窮屈に押し込まれる。その繰り返し。

その度流れていく涙を、何度もぬぐわれた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ