ハリー・ポッター夢(子世代)

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今夜、最終試験が行われる。

梅並はスネイプの研究室を訪れていた。

「先生、お願いがあります」

梅並の口が紡ぐのは、クリスマスの日に言った願いと同じもの。

「全てが終わったら、抱いてください」

その顔は真剣で、目はあの強い光を灯している。

「なぜそんな事を望む?」
「そんな事じゃないです」

もう何度も体を重ねていると言うのに、今さらそれを口にする意味が分からなかった。

「お願いします」
「・・・考えておこう」

言えば、嬉しそうに笑って礼を言う。
その姿を見て、そう言えば梅並はこういう笑い方をする奴だったと思い出す。
最近はずっと、快楽か苦痛で歪む顔しか見ていなかった。

薬の調合をする時の真剣な横顔も、ほんのり笑う落ち着いた笑顔を、最後に見たのはいつだった?

「待ちたまえ」

扉に手をかけたまま振り返った梅並に、何を言うべきか悩む。

「・・・スリザリンの名に恥じぬ戦いをするように」

梅並は笑って頷く。

「はい、先生」

頬を染めて返事をする梅並は、こんなにも美しかっただろうか。



試合が行われる前に紹介されたのは代表選手たちの両親。

梅並の父は背が高く、筋骨隆々。そして母は、梅並と瓜二つだった。
艶がかった黒髪は癖の一つもなく、赤い唇は色香を放つ。
しかし、纏っている雰囲気が違った。梅並のように落ちついているが、どこかおっとりしている。

「気を付けてね」
「うん」

「お前ならあまり心配いらねぇな!」

笑いながら梅並の頭を撫でる武骨な手。その手が、どことなく蘭樹を思わせる。

「選手は位置について!」
「行ってきます」

一体誰に対して行ったのか、梅並は美しい笑顔を残して消えて行った。


ハリーとセドリックが優勝杯へ手を伸ばした時、いつからそこに居たのか梅並も手を伸ばしてきた。
三人で同時に触れた途端飛ばされたのは、墓地だった。

「始めるぞ」

聞こえてきた声に驚いて振り返れば、そこに居たのは蘭樹だった。

「え、ランジュ!?」
「なんでここに、」

「説明は後だ。悪ぃけど、お前らはそこで見ててくれ」

パチンと指を鳴らせば、後ろにあった天使の像がハリーとセドリックを捕まえて固定する。

「ごめんねハリー。ちょっとだけ血を貰うよ」
「ウメナミ!これを外して!!」

「ランジュをとめてくれ!」
「それはできないんだ」

ずっとこの時のために準備してきたんだからと、アズカバンに送ったはずのピーターを連れてきたのを見て目を見開いた。

「姉さんがよく許したね」
「許してねぇよ」

無理やり連れてきたと、こちらを不服そうに見つめている桃花を顎で示す。

「やるぞ」
「イエッサー」

顔の前で右手を構える二人に、ハリーもセドリックも叫ぶことしかできなかった。

大鍋にかけられた火、トム・リドルと書かれた墓から掘り起こされた骨。

そしてハリーの血。

ピーターが失った手を抱えて泣いていたけれど、桃花によって手当されていた。

「ダーリンを使うなんて信じらんない!クラウチでいいじゃない!!」
「あいつは今ホグワーツだろうが」

「それでもよ!儀式に使うって言ったら喜んで肉くらいそぎ落とすわ!」
「保存がめんどくせぇ」

「ダーリンの涙の方が重いでしょ!!?」

ギャーギャー喚いている桃花だったが、蘭樹はそれを無視して大鍋へ近づいて行く。
それを見ていた視界の端で、桜花が映った。その隣にはクィレルがいて、全員がグルだったんだとセドリックに話す。

「そんなっ、だってキモト家はあの人と戦った一族だ!」
「でも!!」

「ハリー」

駆けられた静かな声に、体中から冷たい汗が噴き出した。

「信じてとは言わないから、邪魔はしないでね」

無表情でこちらを見上げてくる大きな目が、強く光っている。

蘭樹が鍋に紙を入れると、中から人が出てきた。その人物をハリーは知っている。見間違いようがない。

「ヴォルデモートっ」
「!?」

「じゃ、早速仲間を呼び戻してもらおうか」

蘭樹の言葉に頷いて、桃花に支えられているピーターの腕に杖を押し当てる。
それを見て桃花の顔に怒りが満ちるが、

「来るぞ!配置に付け!!」

蘭樹が空を見て声を上げればそれに従った。

表われたのは、大勢の死喰い人。
黒ずくめの集団がヴォルデモートの前に跪くと同時に、墓場を青白い壁が囲む。その壁に向かってお札を投げる梅並。

「今、この空間の支配者は私になりました」

自由を許されているのは私だけですと、前にも聞いたことのある言葉を無表情で言う。

「こんな簡単に一毛打尽とはな」

壁を作っている桜花と桃花。
その壁で囲われている空間を支配した梅並。そして、

「お前らはこのまま闇に葬ってやる」

バキバキと指を鳴らしている蘭樹。
ヴォルデモートは蘭樹を見ているだけで、何かするつもりも無いようだった。



ハリーは、眼が覚めたら医務室のベッドの上だった。隣にはセドリックが寝ている。

体を起こすとダンブルドアがいた。

「ハリー、気分はどうじゃ?」

どこも悪くないと首を振れば、それはよかったと微笑んでくる。

「今はもう少しお休み。彼が起きたら、真実を話そう」

その時までゆっくり休むんじゃと頭を撫でられた。
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