ハリー・ポッター夢(子世代)
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第二の試験が近づいてきて、代表選手たちはみんなピリピリしていた。
梅並と蘭樹を除いては、だが。
「明日ホグズミード行くか?」
「うん。バタービール飲みたい」
「ヨッシャ!デートじゃ!」
楽しそうに笑っている蘭樹は、クリスマスパーティー以来梅並から離れないようにしていた。
パーティーの後も梅並は男子生徒の服を着て、いつも通りの生活を送っている。
そのため、あれは蘭樹の考えた悪戯で梅並が女装をしていただけじゃないかと言う事で納得している者が大半だった。
「上目使いで“お兄ちゃんバタービール飲みたい”って言ったら奢ってやる」
ふざけた蘭樹の言動もいつも通りで、職員席ではそれを見て笑う者とため息を吐く者に分かれている。
「お兄ちゃん、バタービール飲みたい」
まさかやるとは思っていなかった周囲が一斉に噴き出した。
あのスネイプでさえ咽ている。
「ゲロかわ!!」
もはや褒めているのかどうか分からない言葉を叫びながら手で目を覆っている蘭樹を見ていると、
「俺も後でやってもらお」
ルーピンが驚いて隣を見た。
「は?」
「兄さん、ギトギトしてる」
「俺の愛だ!」
嫌がる梅並にキスをしている蘭樹を視界に入れながら親友を見るが、どうした?と言う様に見返してくる。
「やってもらうって、さっきの?」
「他にねぇだろ?」
「君はいつからウメナミのお兄さんになったわけ?」
「そんな事にこだわんなよ」
面白いじゃねぇかとニヤニヤ笑ってゴブレットを傾けた。
「君は、・・・驚いてなかったよね」
「何に?」
「ウメナミがドレス姿で来た時」
「ああ、もちろん驚いたさ」
その割に一緒にダンスを踊ってたじゃないかと言いかけてやめる。
きっと、こういう所も梅並が友達に選ぶ理由なんだろうなと思った。
あの時、ネビルも一緒に踊っていた。
フレッドとジョージも来て、踊りはしなかったけど普通に話していた。
それはハーマイオニーも同じで、梅並や蘭樹が選んだ友達はみんな、驚きながらも笑っていた。
「・・・なんか悔しい」
「あ?」
初代悪戯仕掛人としてこれってどうなのとシリウスに言えば、笑いながら肩を叩かれる。
「ムーニー!お前もやってもらえよ」
「“お兄ちゃん”?」
「おう、友達がダメなら兄貴になれ」
「・・・なるほど」
その手があったかと、テカテカ光るキスマークを紙ナプキンでふき取っている梅並を見る。
あんなに可愛いなら、弟でも妹でもどっちでもいいかもしれない。
「ま、兄貴よりも父親のが近いかもな」
「僕はお兄ちゃんでいいよ」
子供だったら、結婚する時泣いてしまいそうだからと笑って手首に触れた。
もう少しだけでも近づきたかった。
分かった上で普通に接してくれていた優しいあの子に、もう少しでいいから。
「ウメナミは余裕そうだったよな」
「もう良い作戦があるみたい」
「どんな?」
図書館で調べものをしているハリーたち。いったいどうすれば一時間も水の中に居られるのかわからない。
何かヒントになるんじゃないかとハーマイオニーに聞けば、
「水に顔を付けなければいいって言ってたわ」
「その方法は?」
「そこまでは聞けないわよ」
聞けば教えてくれるだろうけどと肩をすくめてため息を吐いた。
一緒に考えていてくれた二人もムーディに呼ばれて行ってしまい、本を片付けるのを手伝ってくれているネビルにあたってしまった。
「カブは知らないけど、エラ昆布は?」
「え?」
聞き返せば、食べただけで鰓ができる昆布があるのだそうだ。
それを聞いて希望が出たが、梅並と仲の良いネビルがどうしてそれを教えてくれたのかと、少し疑ってしまった。
それが伝わったのだろう。
ネビルが肩を落として口を開く。
「ウメナミが言ってたんだよ。ハリーに協力してあげてって」
「ウメナミが?」
「うん。まだドラゴンと戦う前だったから、君がみんなに疑われてた時」
「・・・」
「ウメナミは優しいよ。スリザリンだけど、誰かを陥れたりするような事しないよ」
「・・・うん。ごめん」
今、梅並が自分を友達と呼んでくれない理由が分かった気がした。