ハリー・ポッター夢(子世代)

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「ヒップグリフだ」

それはとても美しい生き物だった。
鷲の頭を持ち、体は獅子。羽は輝き、大きな瞳は知性を感じさせた。ハリーが戻ってくると、その美しい生き物にドラコが近づき、悪態をつく。

「ピァー!!」

振り上げられた前足と大きな鳴き声。
さっきまでの威勢はどうしたのか、地面に倒れ込んでいるドラコの周りは青白い光で覆われていた。

「ごめんね、酷い事を言って」

青白い球体の中にはドラコの他に梅並もいて、落ち着いた声でバックビークに話しかける。

「もう言わせない、約束するよ」

だからどうか私と友達になって欲しいと、ハグリットが言っていたようにお辞儀をして返答を待つ。
少しの間前足で地面をいじっていたバックビークだったが、梅並をジッと見てお辞儀を返してくれた。

「ありがとう」

ほんのり笑って手を伸ばし、頬から首を撫でる様に手を添える。

「先生、すみませんでした。バックビークがあまりにもきれいなので、」

勝手な事をしましたとハグリットにも頭を下げてドラコを見下ろす。

「私の友人に、手出しはさせないよ」

こちらを見ているみんなの元へ歩き出すと、ドラコを囲んでいた青白い壁がなくなった。

「先生の授業は面白いですね」

生き物と触れ合えるのは楽しいと笑顔を向けて、喉を鳴らしている教科書を開いた。




「初めまして」

その声に目を開ける。
こちらを見ている黒い大きな瞳。一瞬女かと思ったが、制服が男子用のものだった。

「私と友達になってくれる?」

ほんのり笑って、鞄をがさがさとあさり、

「お腹空いてる?ジャーキーがあるんだけど」

食べる?と差し出されたそれに、夢中でかぶりついた。

「明日もここにいる?また何か持ってくるよ」

食べたい物はある?と、まるで人間に話かける様に質問してくるものだから、変身が解けたのかと心配になってしまった。
しかし、自分の体はまだ犬のまま。

「何がいいかな。お肉は好き?ジャーキーだったら牛だし、あとはブタ、キチン、」
「ウォン!」

「チキン?じゃぁ明日はチキンを持って来るね」

楽しみにしててと、頭や耳の後ろを撫でられるのはとても気持ちがよかった。


「それでね、今日はその調合をさせてもらえるんだよ」

毎日のように食事を持って来てくれるこの生徒の名前は、未だに分からない。
来る時はいつも一人だし、友達になって欲しいと犬に言うくらいだから人間関係がうまくいっていないのかとも思ったが、話を聞く限りそう言う訳でもないらしい。

友達が鍋を爆発させた話や、兄が甘やかしてくること、姉が二人いてどちらも美しい事。

「先生はとても厳しいけど、優しい人なんだよ」

分かりにくいから誤解されやすいんだけどねと、毎日必ずその“先生”の話をして幸せそうに笑って頭を撫でてくる。

「みんながね、私はスリザリンっぽくないって言うんだ」

でもねと、悲しそうに目を伏せる。

「こんなに友情を大切だと思ってるのに、最後はきっと、愛情を取る」

薄情だよねと、影を落とした顔で下を向いた。

「クぅ〜ン」
「ありがとう」

鼻を鳴らせばこちらを向いて笑顔を見せる。
その微笑みを自分に向けられているという事が、こんなに嬉しいとは。
長い獄中生活で失ってしまった何かが満たされていくようだ。

「肉球触ってもいい?」

フニフニと柔らかく押される足の裏がくすぐったい。だけど握られている手が温かくて離れたくない。

「もう行かなきゃ。また明日ね」

早くピーターを見つけなくてはいけないのに、ここでずっとあの子が来るのを待っていたくなった。
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