ハリー・ポッター夢(子世代)

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二年生になり、休み明けにはみんながその成長と変化に驚き合った。
そしてそれは梅並も同じだった。

「背が伸びだね」

前までは同じくらいだったのにと自分を見上げてくる梅並に、ネビルは照れながら口を開く。

「ウメナミはキレイになったね」
「嬉しいけど、なんか複雑だな」

苦笑して大広間で別れた。

歩く梅並をみんなが振り返る。

少し長くなった髪が、歩く度に揺れる。そして静かに蘭樹の横に座るとサラダを取り分けだした。

「肉食え、肉」
「食べるから、そんなに取らないでよ」

さすがに食べきれないよと、自分の皿に盛られた大量の肉を見て肩をすくめていた。

ドラコはそんな二人を憎々しげに見つめる。
夏休みに本屋であった日以来、ルシウスの様子が変なのだ。
妙にそわそわしていると思ったら、次の瞬間にはイライラし出して不機嫌になる。
自分も母親のナルシッサもお手上げ状態だった。

あの時の何がそうさせているのかは分からなかったが、確実に二人のせいだという確信はあった。

「兄さんは選択科目何取ったの?」
「危険生物飼育学とかな。やっぱ占い学は取る気になんねぇわ」

「だよね。私も取らないだろうな」

二人の話に聞き耳を立てる。
聞いたことを父親に手紙で知らせてやろうと目論んでいた。


日中はまだ温かい今、梅並は外にいることが多かった。
木陰で本を読んだり、時々転寝したり。
それを遠くから見て頬を染めている女子たち。

「ウメナミってまつ毛長いわよねぇ」
「見てよあの髪。日に輝いて天使の輪が見えるわ」

「なんであんなにキレイなのかしら」

はぁとため息を吐いているのを見て、男子たちもそちらを見る。
天真爛漫な蘭樹と違い落ちついた雰囲気のある梅並は、同年代から見ても大人っぽかった。
それも中性的な容姿が相まって、どうしても同じ男として見ることが出来ない。

そんな梅並に近づいて、同じように地面に座って話しかけるのはなぜか落ちこぼれと言われるネビル・ロングボトム。

「ウメナミ、こんな所で寝てたら風邪ひくよ?」
「、ネビル。起こしてくれてありがとう。日差しが良い感じだったから、そのまま寝ちゃってたんだ」

危うく次の授業に遅れる所だったよとほんのり笑って、合同の授業だから一緒に行こうと歩き出す。

「今日も怒られるんだろうなぁ」
「ネビルはスネイプ先生が苦手だね」

本当は優しい人なんだよとクスクス笑って地下牢教室へ向った。

クリスマス休暇も終わったこの日、今日はヴァレンタインデイ。
ロックハートが用意した小人たちがカードを渡したり、読み上げたりしている。
梅並の所にももちろん来て、沢山のカードを置いて行った。というか読み上げて行った。

「この言い回し好きだな」

梅並は来るカードの全てにほんのり笑って、一言感想を述べる。
その笑顔と感想が欲しくて何枚もカードを書く女子が多かった。
だが、梅並は小人を使って誰にもカードを贈らない。

夕食前、レイブンクローのテーブルへ行って二人の姉にチョコを渡し、熱い抱擁とキスを貰って帰ってきた。

「兄さんにも、はい」
「梅並!」

「ちょ、油で口がテカってるよ!」
「俺の愛だ!」

「ギトギトしてそうでやだ!」

姉二人にされたように兄にも抱きつかれ、あまつさえさっきまで肉を食べていた油まみれの口を頬に押し付けられた梅並。
もう好きにしてくれと力を抜いて、今はなすがままになっている。
そんなやり取りを見て笑っている生徒たち。

職員席でも、微笑ましそうな笑いが漏れていた。

スネイプは別に笑わなかったが、一部始終を見ていた。

「ネビルたちにも上げたのか?」
「うん。こっちは友チョコってないんだよね。去年はすごく驚かれたよ」

「だろうな!」

腹を抱えて笑い、来月のホワイトデーは何が欲しいと頭を撫でて聞いている。
本当に仲がいいというか、蘭樹は過保護だなと思いながら食事を済ませ、自室へ戻る。


扉のノブに袋がかけられていた。

中を見ると、そこにはキレイにラッピングされたチョコタルトが入っていて、カードには、

『いつもありがとうございます。キモト・ウメナミ』

こういう所がスリザリンらしい狡猾さだと言えればいいのだが、梅並の性格を考えるとそれはないだろうと思えてくるから不思議だ。
明日、紅茶を飲むときにでも食べようと扉を閉めた。
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