ハリー・ポッター夢(子世代)
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夏休み中、ハリーは親友のロンの家へ来ていた。
初めての煙突飛行で失敗し、ノクターン横丁へ出てしまったりなどのハプニングはあったが、無事にみんなと合流できた。
そして今、本屋でロックハートとかいう胡散臭い奴と写真を撮られている。
「笑って!一面大見出しですよ!」
ロックハートから聞かされたホグワーツ就任の事実に、開いた口がふさがらない。
やっとの思いで外に出れば、ドラコに捕まった。
今日は何かの厄日なのか。
「さぞいい気分だっただろうね、ポッター!」
ドラコの後ろから現れたルシウス・マルフォイにアーサー・ウィーズリーが来てにらみ合う。
ルシウスからの嫌味に耐えていたが、その矛先がハーマイオニーの両親へ向いたところで我慢の限界だった。
感情に任せて殴ろうと手を握りしめたそこへ、
「ハーマイオニー!久しぶりだね」
少し高い少年のような声がかけられた。
「ウメナミ?!」
「新学期の教科書を買いに来たんだ。君も?会えるとは思ってなかったな」
学校が始まる前に会えるなんてと笑顔で握手をする少年を見て、あれは誰だとルシウスが息子に小声で聞き、返ってきた答えに表情を硬くした。
「梅並!先に行くなよ!」
迷子になったらどうすんだと走ってくるのは、梅並とよく似た東洋人が三人。
「「この子は?」」
「ハーマイオニーだよ、頭のいい友達ができたって言ったでしょ?」
「おお!学年一位!」
手をぶんぶん振られながらハーマイオニーが微妙な顔をした。
「いえ、あの。私は二位です」
一位は梅並ですからと言うと、蘭樹が笑って頭に手を置いた。
「梅並は俺らがいろいろ教えてたからな。予備知識なしで二位なんだ。実質一位だろ」
「「そうそう」」
これからも梅並と仲良くしてあげてねとお色気たっぷりな姉たちに、ハーマイオニーの顔が赤くなる。
「もしかして、ご両親?」
「俺挨拶してくっかな」
「そ、そうだ!こちらはアーサー・ウィーズリーさんよ!ロンのお父さんなの!」
蘭樹が自分の両親の元へ行ったのを見て、今がどういう状況かを思い出したハーマイオニーは梅並をルシウスとアーサーの前へ出した。
梅並ならマルフォイに言い返せるし、感情的になっている今の二人よりも大人な対応をしてくれると思ったのだ。
「おじさん!この子がウメナミ・キモトです。私たちと同じ学年の」
「君がウメナミか、よろしく」
「初めまして」
握手を求められた梅並は笑顔でそれに応じ、場が少し和む。
「アーサー、私にも紹介していただきたい」
出て来たのはルシウスで、アーサーは渋い顔をして梅並にルシウスを紹介した。
「ドラコからよく聞いているよ」
「そうなんですか。私は目立ちませんから、あまり話すこともないと思いますけどね」
兄姉は話題に事欠かないですけどと笑顔で答え、今はジニーを構っている姉二人を見る。
「謙遜は日本人の美徳と、聞いたことがある」
「博識ですね。あんな小さな島国の事までご存じなんて」
「ああ、興味があってね」
ヴォルデモートの誘いを真っ向から断った上で傷一つ負わなかった一族。
実力主義を誇り、未だ誰一人としてその実力を測れた者はいない。
「最近は外国の方をよく見かけますから、ブームなんですかね」
クスクスと笑って手を離そうとするので、ルシウスはその手を離さないように強く握る。
「東洋魔術はどれも複雑だが、特にキモト家の物は特殊と聞く」
一体どんな魔術なのかぜひ見てみたいと顔を近づければ、腕が伸びてきて梅並をルシウスから引き離した。
「梅並、俺にも紹介してくれ」
挨拶が必要だろ?と梅並に笑顔を向け、ルシウスを見た。
これから四年生になると言うのに、すでに背は高く伸びてがっしりした体格。
自身の名を名乗りながら差し出された手は、明らかにぼこぼこし過ぎている。
「ルシウス・マルフォイさんだよ。ドラコ・マルフォイのお父さんだって」
「そうか、よろしくマルフォイさん。木元家次期当主としてご挨拶いたします」
丁寧な口調でルシウスの手を握り、力を込める。
「、頼もしい限りですな」
痛む手をすぐに放してさすり、なんて力だと同じくらいの位置にある顔に目を向ければ、
「梅並はどうも優しすぎて、当主って柄じゃなかったんですよ」
だから自分が継ぐことになったんだと、目の奥で底知れぬ何かがうごめいていた。
「兄さんの方が強いからだよ」
蘭樹を見上げて微笑む梅並の頭を撫でて笑顔を向ける。
「攻撃系が強いのは確かに俺だな」
それ以外はお前だと、可愛くてたまらないと顔に張り付けて、階段からこちらを見ていたフレッドとジョージに手を振る。
「新学期早々フィルチに追われんなよ!」
「そんなヘマするかよ!」
「箒を没収されたらまた頼むぜ!」
梅並を連れて歩き出そうとした二人だが、それを二つの声が止めた。
「「蘭樹!」」
「あ?」
「あんた!さっき走った時にお札落としたでしょ!」
「ジニーちゃんの鍋に封をしちゃってるわよ!」
桃花が示すそこには、確かにお札が蓋のようになっている鍋があった。
「あ、わりーわりー!こりゃもうダメだな」
ジニーに駆け寄り、その鍋を受け取る。
「中入ってたのは教科書だけか?」
「は、はい」
「そうか。悪いな、俺の不注意だ。新しい鍋と教科書買って弁償するよ」
「そんな、」
「その紙を外せばいいんじゃないのかい?」
「簡単には外せないんですよ。本当に悪かったなジニー」
目線を合わせて謝り、蘭樹からしたら低い位置にある頭を撫でる。
「今日はいったん帰るか」
「無理に外すと怪我じゃすまないから、私たちで引き取るよ」
「ジニーちゃん、私たちと一緒に新しい本を選びましょ?」
「蘭樹のせいだからね、気になる本があったら何でも買ってあげるわよ」
愛の妙薬が載ってる本とかと言ってジニーを連れて本屋の中へ戻って行こうとする二人だが、
「幼気な少女に変な事吹き込むなよ」
「「うっさいわね!」」
「梅並、あんたのリストかして」
「一緒に買い揃えといて上げる」
「ありがとう」
「俺のも頼む」
「「自分でやんなさい」」
「おーい!扱いの差!!」
二人の姉に吠えている蘭樹の横でクスクス笑っている梅並に、ため息を吐いて人ごみの中へ進みだす。
「明日も来るか。二度手間だなちくしょう」
「私も一緒に来るよ。一人で全部持つのは大変でしょ?」
「梅並優しー!」
そんな会話をして、二人はジニーの鍋を持って遠ざかる。
ルシウスはどう声をかけて止めるべきか口を開いて閉じてを繰り返していた。
「今年は静かに過ごせそうだ」
「そうだね。私も自分の事に専念するよ」
クスクスと二人で笑って、蘭樹がチラリとルシウスを見る。
その目と視線が合い、緊張から体が動かなくなった。
「お前は優しすぎて、勘違いする奴が出てきそうで不安になるぜ」
実力主義を誇る木元家に弱い奴がいるはずないのになと呟けば、
「別に勘違いされても構わないけどね」
それで困るのは相手だからと、ニッコリ笑う梅並。
蘭樹はその顔を見て優しそうに微笑み、
「お前のそう言うとこ好きだわー」
クスクスと、仲の良い兄弟は消えて行った。