ハリー・ポッター夢(子世代)

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「ウメナミ・キモト」

その名に、教員席から、在学生から全視線が注がれた。

帽子と椅子に向かって歩くのは一人の東洋人。
黒い髪は癖の一つもないストレート。
肌は黄色みがかっていて、幼いように見える顔とは裏腹に落ち着いた雰囲気を漂わせていた。

「スリザリン!」
「イエス!!」

「「うそー!!」」

スリザリンのテーブルから大きな喜びの声と、レイブンクローから抗議の声が聞こえてきて、驚きで他の新入生たちは周りを見回す。
静かに立ち上がった生徒を見れば組分け帽子を椅子に戻し、レイブンクローのテーブルへ手を振って反対側へ歩き出した。そして、

「よっしゃぁ!!梅並ゲットだぜ!」

立ち上がっていた男子生徒にがっちり抱きしめられていた。

その二人はものすごく目立っていたが、本人たちは気にした素振りも見せず席に着く。
そしてグリフィンドールへ向って手を振った。

「ウメナミなら絶対グリフィンドールだと思ったのにな」
「世の中何が起こるか分からないぜ」

そう零すフレッドとジョージの双子に、今年入学した弟のロンが口を開いた。

「誰?」
「ウメナミだよ、ランジュの弟」

「日本人の友達がいるって話したろ?」
「あの子日本人なの?」

ハリーが聞けば、二人は頷いて声を潜める。

「ランジュはスリザリンだけど僕らの仲間なんだ」
「あいつは絶対に怒らせるなよ」

いくら命があっても足りないからなとニヤつきながら言われ、改めてスリザリンのテーブルを見る。
今はドラコ・マルフォイと何か話している梅並という子の横には、快活そうな笑顔で笑っている蘭樹がいた。
とても怖そうには見えない。

「二人が話してたランジュが、まさかスリザリンだったなんて」
「あいつは他の奴らと違うからな」

「他の寮にも友達いるぜ」

だからスリザリンじゃ浮いてるんだと笑いながら言う。

「誰も逆らえないけどな」
「なんせ実力主義のキモト家だ」

「キモトって、あのキモト?」

話に入って来たハーマイオニーも声を潜めて確認してきた。
ハリーは何のことか分からなくて知ってるの?と首を傾げる。

「当たり前よ!あなたと同じくらい有名な家系なんだから!」

例のあの人からスカウトされ、それを真正面から断って傷一つ負わずに返り討ちにした一族。
その一族の信条は『実力主義』

「私、てっきり全員グリフィンドールかと思ってたわ」
「ところがどっこい」

「あいつらは寮とかまったく気にしない変わり者なんだ」
「ランジュの時なんかすごかったぜ」

スリザリンに決まった時、寮生たちが純血で最強の木元家が来たって騒いでいたら、

『俺は純血主義じゃねぇ、んなくだらねぇもんに巻き込むな』

「それから浮きまくって仕方がなかったぜ」
「僕らと悪戯したり、逃がしてくれたりな」

おまけに頭がよくていつも学年一位だと馬鹿にしている訳ではないのにおかしそうに笑いだす。

「あいつがなんでスリザリンなのか未だに謎だね」
「同感だ」

「あ、後レイブンクローの女王様たちも怒らせるなよ」
「あれは僕たちでも立ち向かう勇気が湧かないな」

顎で示す先にいるのはお色気むんむんな双子が座っていた。
二人で何か話しては笑い合うその姿を一目見ようとして食事がおろそかになっている生徒もちらほら見える。

ハリーたちはもう一度スリザリンのテーブルに目を向ける。
そこにはほんのり笑って楽しそうにしている幼いただの子供が一人居るだけだった。
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