ブリーチ2(夢)
□藍染1
1ページ/2ページ
「伊江村さーん!」
歩いていた伊江村に華奈が抱きついて、それを見ていた荻堂が黒い笑顔で伊江村をからかう。
いつも通りの日常。
いつもの事だからと言って納得していない十一番隊のみんなが舌打ちをする。これもいつも通り。
そんないつも通りの昼休み前、瀞霊廷中に警報が響き渡る。
ついで聞こえてきた爆発音に、誰よりも早く動いたのは華奈だった。
掴んでいた伊江村を離し、腰に下げていた刀を握る。
地面を蹴れば近くの屋根に一瞬で移動していて、
「、」
爆発の衝撃で土煙を上げている方を見ていた。
かなり距離のある場所だったが、ガラガラと石の崩れる音と埃臭い乾いた匂いがわずかにする。
警戒したまま目を凝らしていると、
「やぁ、久しぶりだね」
かけられた声に、目を見開いて顔を上げた。
現在、瀞霊廷中の戦闘力が四番隊に向っていた。
特に隊長、副隊長たちは焦りを感じていた。
封印されていたはずの藍染が、牢を破壊して脱獄したのだ。そして向った先は四番隊隊舎。全員がまさかと思った。
近づけば思った通り、華奈の霊圧を感じる。
頭に浮かんだ最悪の情景に、進む足も速くなった。
「藍染、隊長」
「私はもう隊長ではないから、その呼び方はどうだろうか」
クスクスと笑って、こちらを見合上げている四番隊員たちや患者、見舞いに来ていた者たちを見る。
「降りようか。落ち着いて話がしたい」
先に屋根を降りたのは藍染で、華奈は慌ててそれを追う。
音もなく着地した藍染は周りを見回し、伊江村に向い合った。そして、その間に立つように降りてきた華奈。
誰も声を上げる事が出来なかった。
「君には、ちゃんとお礼が言いたかった」
伊江村を背に庇っている華奈を見下ろし、みんなが見知った優しい笑顔を向けてくる。
「君のおかげで、」
「藍染!!」
藍染の言葉をかき消したのは、狛村だった。
見れば、集まって来た隊長格たちが周囲を囲んでいて、
「ここで何をしておる」
山本がコツリと一歩前へ出て来た。
それを見て、先ほどまでの優しげな笑顔とは違い相手の神経を逆なでするように口元を歪める。
「山本元柳斎、私は君と話すためにここに来た訳じゃない」
邪魔をしないでくれないかと、目を細めて見下ろす。
ピリピリと霊圧のぶつかり合いで振動した空気が息苦しい。
そこに、
「惣右介!」
子供の様な高い声が響いた。
「ケンカはしないって約束したろ!」
「もちろんだよ。これは喧嘩ではなく、牽制と言うんだ」
藍染が身に纏っている拘束具。
まるで包帯のように巻かれているその胸の中から顔を出したものに、全員が動きを止めた。
「華奈、あまり動くと落ちてしまうよ」
そう言って、出て来たものを大切そうに拘束具の中へ戻した。
驚きすぎて動けないみんなを見て、藍染は華奈と目線を合わせる為に膝をつき、優しく微笑みかけた。
「君には、ちゃんとお礼が言いたかった」
邪魔が入る前と同じことを言って、華奈へ手を伸ばし、
「君のおかげで、私はもう一人ではなくなった」
優しそうな笑顔のまま、
「死なないでくれて、ありがとう」
華奈の頭を撫でたのだった。
「今のは、何じゃ」
口を開いたのは山本で、藍染は目だけでその姿を見ると静かに立ち上がった。
「先ほど、邪魔をしないで欲しいと、言ったはずだが?」
「その胸に隠したものを出せ」
ため息を吐いて、自分の胸を撫でる様に手を置くと、
「華奈との約束を破らせないでくれないか」
この子には嫌われたくないんだと、霊圧を上げながら近づいて行く。
「貴様は何を隠している!」
「隠す気などないさ。むしろ、君たちに見せたくて仕方がないくらいだ」
笑うと、上げていた霊圧を戻して機嫌良さそうに胸の拘束具を緩め、
「華奈、みんなに挨拶をしてあげよう」
手のひらに乗って来た小さな少女を地面に下ろし、立ち上がる。
藍染の動きに合わせて、その小さな少女も大きくなっていった。
「初めまして!」
山本を見上げて笑ったのは、伊江村の側にいる少女と瓜二つの、
「これからよろしくお願いします!」
華奈だった。