ブリーチ2(夢)

□カナ56
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「八十千和さーん!」
「ぐはっ」

ゴスッと腹に頭突きをかまされて、苦しそうな声を上げながらどうにか倒れないように踏ん張る。

「か、華奈さんっ、力っ!」
「は!すみません!」

みぞおちを圧迫していた華奈の頭が離れると、一息ついて見下ろした。

「大丈夫ですか?」
「ええ、力を入れすぎなければ」

頭に手を乗せれば、記憶を無くしてから見たもので初めて好きだと思えた笑顔で見上げてきて、また腹に顔を埋めてくる。

ああ、可愛い。



「なんか、変わってなくないですか?」
「・・・そのようだな」

それを影から見ていた大前田と砕蜂。

「つーか、前より近しくなってません?」

その隣にやって来た恋次がガリガリと頭をかいて近づいてくる。

「だよな?」

前は苗字で呼んでいたのに今は下の名前でよんでいるという事実に、三人は首を傾げて二人に眼をむけた。

以前となんら変わらない笑顔で伊江村を見上げ、幸せそうに抱き着いている華奈がいるだけだった。



「華奈七席は、とても強いですね」

一番隊の隊主室、山本の前に立っているのは卯ノ花と平子。

「前は、精神面が脆い言うてたやないか」
「えぇ、その意見は今でも同じです」

ですが、それでも彼女は強いですと、卯ノ花は眼を伏せて笑う。

「して、記憶の方はまだ戻らんのか」
「はい、原因も未だに分からず」

「なんで儀骸から出ただけで意識無くした上に記憶まで無くすねん」

伊江村が記憶を無くして二日、卯ノ花も平子も伊江村の記憶を取り戻そうと躍起になっていた。
それは伊江村のために、華奈のために。平子にいたっては自分の悪ふざけが引き金になっているだけに、どうしても戻したかった。

「俺も同じもんつこて抜け出したぁいうのに、なんであいつだけが気い失うねんな」

その一言に、山本と卯ノ花がピタリと止まり、

「平子隊長」
「なんや?」

「その悪巧みを、技局でお話になられましたか?」
「悪巧みて」

「どうなんじゃ」
「細かに話はせぇへんかったけど、」

話し方や作ってもらった儀骸からして、わかっていてもおかしくは無いだろうと、そこまで言って平子は眼を見開いた。

「んなアホな」



伊江村がいる個室に、またみんなが集まってきていた。

「なんかあったんですか?」

卯ノ花を見上げて首を傾げる華奈に、微笑んで頭を撫でる。すると、

「失礼いたします」

礼儀正しく頭を下げて入ってきたネム。

「あら、涅隊長はどうされました?」
「はい、研究が忙しいとの事で、私が代理を勤めさせていただきます」

そう答えて、懐からパラリと紙を出すと読み上げていく。

「よく気がついたネ、どこぞのオカッパだけだったらもっと時間がかかって罪悪感にうちひしがれているだけだっただろうに」

淡々と読んでいくのだが、書かれてある全てがマユリの言葉であるせいか、何とも言えない。

「ちょい待てこら!オカッパて!俺のことやないやろな!!」
「お前しかいないだろう」

「煩いヨこのうす鈍」
「なんで会話できてんねん!おかしいやろ!」

「平子隊長、まだ本題にすら入っていません」

ニコリと笑った卯ノ花が怖かった。

「簡単に言うと、一種の催眠術だヨ」
「催眠?」

「私が開発した新しい新薬でネ、解除する方法は一つ」

ネムが読み上げたその解除方法に、みんなは口を開けて阿呆のような顔を晒す。

「せ、接吻?」
「何度も聞くんじゃないヨ」

「だから!なんで会話できてんねん!!」
「私にお前の行動が読めないとでも?」

「かー!!」

喚く平子を置いておき、みんなはチラリと伊江村と華奈を見て、

「キスするって、」
「華奈しか、いないでしょ」

他に誰がいると、額を寄せてボソボソと大きな体を小さくして会議を行う。

「涅隊長は、何をお考えなのかしら」

まがまがしいオーラを背中に背負って、影の濃くなった顔で笑顔を深める卯ノ花。しかし、

「なんだ、そんな事でもどったんですか」
「へ?」

ちゅっと、華奈が伊江村にキスをする。

呆然とするみんな。

突然の行動すぎて反応出来なかった伊江村。そして、

「、?ここは、・・・華奈さん?」

隊長たちまでと、部屋の中を見回して首を傾げる伊江村に、

「伊江村さん!」

抱き着いてその胸へ顔を寄せ、

「お帰りなさいっ」
「は?」

華奈を抱き留めて、やはり首を傾げた。
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