ブリーチ2(夢)

□カナ55
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「ほー、そないな事があってんか」
「まぁ、俺も聞いた話しっすけど」

恋次が率いる球蹴りのチームが集まって練習していた時の事、平子がやって来て話し掛けてきた。

話の内容はもちろん華奈と伊江村の事。

「実際どうなんすかね?そういう直感、みたいなもんは、あいつ強いと思いますけど」

野生児だからと笑う恋次が話して聞かせてくれたのは、以前十一番隊と四番隊で宴会を開いた時の話だ。

華奈が、伊江村が死んでしまったら現世へ追っていくと言い、全く違う別人になっても分かると言い張った時の話。

「へー、そんな事があったんだ」
「あいつ、本当にあの三席の事好きみたいですからね」

タオルで汗を拭きながら、平子の隣で相槌をうつローズに苦笑して、練習へ戻って行った。

「シンジ」
「なんや?」

「あの華奈って子の事はもう納得したんじゃなかったの?」
「したで?」

ならなぜまだこんな聞き込みの様なことをしているのかと問えば、

「あの二人、見てるとおもろいねん」
「はぁー」

可哀相と、呟いた。


「っちゅー訳や」
「はぁ」

技術開発局にある阿近のデスクへ肘をついて言う。

「伊江村の儀骸頼むわ」
「別に良いですけど、なんで俺なんすか?」

「しゃぁないんや。マユリの奴話し掛けても無視すんねん」

眉間にシワを作って、

「昔からの馴染みやゆうのに、酷いやっちゃ」

話し掛けて肩に手を置こうものなら、

『誰だネ、気安く私に触れるんじゃないヨ』

そう言ってパシリと叩かれ、以来話し掛けても無視してくる始末。

「あいつは、」

ブツブツと文句を言いながらも毎回絡んでいくあたり、平子はマユリを嫌ってはいないようだ。

「じゃぁ、出来たら連絡しますよ」
「おぉ!頼んだでぇ!」

自分の分は現世に居た頃使っていたのがあるからと、伊江村の儀骸だけを頼んで技局を出ていく。

「まったく、やっと出て行ったか」
「局長」

「フンッ、うるさい男だヨ」

平子が出ていくと、反対側の扉が開いてマユリが研究室に入って来た。

「それにしても、ふむ」

顎をさすって考え出す。

「話し、聞いてたんですか?」
「途中からだが、あの十一番隊の七席のことだろう?」

「えぇ。何でも、伊江村三席の事が好きだって言うから、試したいみたいっすよ」
「ほほう」

ニヤリと笑ったマユリに、阿近はため息をついて口元を緩ませた。




「伊江村はおるかぁ」

ガラッと執務室の扉を開けて入ってきたのは、五番隊の隊長である平子。

「何かご用でしょうか?」

机に向かって書類を作っていた手を止めてそれに近づいていけば、

「まぁ、ものは試し言うやろ」
「は?」

ガシッと伊江村の肩を掴んで、

「ちょっ?!」

平子の姿をした儀骸に押し込んだ。ざわつく室内。

「で、や」

平子は後ろに隠していた伊江村の姿をした儀骸によっと掛け声を上げながら入っていく。

「ひ、平子隊長!?」
「まぁまぁ、ええやんか。楽しもうや」

「いやっ、何がしたいんですか!?」

平子の姿をした伊江村が、今は自分の儀骸に入っている平子に詰め寄る。
しかし、その手を払う事なく平子はニヤリと笑った。

「華奈」
「?」

「華奈が、言うとったんやろ?」
「は?」

ニヤニヤと笑いを抑える事なく、

「この格好やったら、俺の方に抱き着くんちゃうか思てな」

ポカンと口を開けて固まる伊江村。

というか、執務室にいたみんな。

「あれからまったく華奈に懐かれへんねん」

未だに頭を撫でようとすれば固まって動かなくなる華奈。
それも、それは伊江村がそばにいる時限定で、一対一で向き合えば触らせる事も無い。
さっと避けて行くのだ。

「あれめっさ傷つくねん」
「だ、だからって」

「ええやんか、俺があいつに抱き着くんちゃうんやし」

抱き着いてきたとしても、それは華奈からだから良いじゃないかと、よく分からない事を言う。

「へー、面白いこと考えますね、平子隊長って」
「せやろ?」

何故か仲良くなっている荻堂と平子。
伊江村はガックリと肩を落として手で顔を覆っている。

「でも、そううまく行きますかね?」
「ん?」

ニコリと笑って、伊江村の顔をしている平子を見上げた。

「失礼しまーす!」

花太郎いますかー!と、ちょうどよくやって来た華奈。
伊江村からすれば何でこのタイミングでとも思うが、来てしまったものは仕方がない。

「山田七席なら、今外で掃除してますよ」
「そうですか。!」

扉の前で華奈に花太郎の居場所を教えて、伊江村と平子を隠す荻堂。
そして、少し体をずらせば、華奈は主人に向かって一直線に駆けていく。

尻尾をちぎれんばかりに振った犬のように軽く飛んで、

「伊江村さーん!」

平子の姿をした伊江村に抱き着いた。

「なんやと!?」

伊江村の姿で関西弁を使うと何だか違和感がすごい。

「なんでそんな(儀骸)のに入ってるんですか?」
「え、い、いや」

「抱き着いた感じがいつもと違う」

そう言いながらも、グリグリと腹に顔を埋めていく。

「なんでや華奈!普通こっちに抱き着くやろ!」
「なに言ってんのかわかりません」

「なんでやねん!」

せっかく着物まで伊江村の部屋から持ってきたのにと、頭をかく。

「ちょっ!勝手に入ったんですか?!」
「おう」

「おうって!!」

なんてことしてんだあんた!と喚く伊江村に、

「お前の部屋、何もおもろいもんなかってんぞ」

平子はつまんなかったとため息を吐く。

「何物色してるんですか!?犯罪だ!」
「ええやんか、本棚にエロ本プレゼントしといてやってんから」

「何を勝手に入れているんですか!」
「わぁ、どんなの入れたんですか?」

「おー、こいつの趣味がわからんかったからなぁ。何種類かピックアップしといたわ。ノーマルからハードまで、俺の友達のお勧めやで」

言わずもがな、リサである。

なんつうもんを人の部屋に置いてきたんだと訴える伊江村。
いや、見た目は平子なのだが。

はたから見ると、三席の伊江村が隊長の平子をからかっているように見える。
それに便乗している荻堂がいるものだから、いつもとは違う、異様な光景が広がっていた。

中身はいつも通りなのだが。

「あら、平子隊長。どうかなさいましたか?」

そこへやって来た卯ノ花が伊江村に顔を向けて、首を傾げてから、

「また華奈七席にちょっかいを出していたのですか?」

冷たい微笑みを平子に向ける。

「うぉ!もうばれたんかっ」
「華奈七席が平子隊長に抱き着くはずありえませんから」

そう言い切って華奈の頭を撫でる。

「はい!」
「お前も、そない笑顔で返事せなや」

もう互いの儀骸に入っている事を見抜かれてしまった平子は面白くないと息を吐き、華奈を見下ろす。

「中身は違ごても、見た目は伊江村やで?ほれ、」

手を伸ばして頭を撫でようとするが、

「伊江村さんじゃありません」

フンッと顔を伊江村の、平子の腹に埋めて触るなと拒否してくる。

「かーっ、せっかく準備したんやで?一瞬でも戸惑えや」
「しません」

「あの、華奈七席」

ちょっと苦しいですと、腹に減り込んできた頭を撫でれば、力を抜ききった顔をして笑い平子を、伊江村を見上げた。

「俺に懐いとるようにみえんねやけどなぁ」

図としては、そう呟いてため息を一つ。

「そうそう上手くはいきませんって」

うんこ座りをしている平子の隣にしゃがんで荻堂が苦笑して見せた。

「だって、見ただけで分かるとまで言い切ったんですよ?」

眼を見れば、一目見れば、生まれ変わって別人になってしまっていてもあなただと分かる。

「言うのは簡単やろ」
「そうですけど」

でも、それが本当に出来てしまう辺りが華奈なのだ。

眉を下げて笑いながらため息をついていれば、卯ノ花が平子に向かって口を開き、

「もうよろしいでしょう?」

早く伊江村を儀骸から出して上げて下さいと、あの冷たい笑顔を向けられる。

怖い。

「っち、しゃーないな」

ほんまつまらんはーと、懐から抜き姫と書かれたステッカーを取り出し、

「じっとしとれよ」

伊江村の頭にポンと貼れば、

「伊江村さん?」
「あ?」

「?」
「三席?」

儀骸から出てきた伊江村はそのまま倒れて床に沈む。

「三席、何遊んでるんですか?」
「・・・」

眼を閉じたまま動かない伊江村に荻堂が近づいて顔を覗き込み、

「気絶?」

首を傾げた。

「はぁ?!ただ儀骸外しただけやぞ?!」

慌てて自分の胸にステッカーを貼って伊江村の儀骸を脱いでみるが、何も起きず、

「伊江村さん?」

床に横たわっている伊江村に触れて、華奈は小さな子供の様にその着物を握った。
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