ブリーチ2(夢)

□カナ52
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「人の過去を覗くなど、最低ですよ」

卯ノ花に説教されている面々は、顔を俯かせて「すみませんでした」と呟く。

「で?あいつはどんくれぇ強かった」
「更木隊隊長」

「もうバレてんだ、いいじゃねぇか」

咎める卯ノ花に軽く返して、剣八はやちるを見る。

「ん、と。卍開、もうできるって」
「ほう?やっぱりか」

ニヤリと口角を持ち上げて、それはそれは凶悪に顔を歪ませた。

「ですが、だからといってその状態の華奈七席と戦える事はまず無いでしょう」

さらりと卯ノ花は剣八に笑顔を向け、

「そうですね?」

正座しているみんなを見た。

「無理、でっしゃろ」

射場がカリリと頭をかき、

「貴公が望む戦いは、あの者とは出来まい」

剣八は、華奈に新しい考え方を与えた存在。戦う事への心のありかた。それはマイナスでしか無かった死への考えを好転させるもの。

二人の意見に、他のみんなも頷く。それを見て、剣八は盛大に舌打ちをすると眉間へ深くシワを入れた。

「つまんねぇな」

ポツリとそう零して、一つため息をつく。

「山本総隊長、もう華奈七席への疑問も解決なさいましたか?」
「う、うむ」

「では、今後一切、華奈七席の意志に反し、このような尋問をなさる事はありませんね?」

笑う顔の後ろで黒い影が揺らめく。それを見て、タラリと汗が頬を伝った。


次の日、華奈も元に戻っていて、普通に走り回っていた。

「そうだったのですか」

卯ノ花から事の次第を聞いた伊江村は、ため息をついてメガネを直す。
そうすれば窓から華奈が入ってきて、その腰に抱き着いてきた。

「卯ノ花隊長、おはようございます!」

頭を下げた後、「伊江村さん!」と嬉しそうに腹へ顔をめり込ませ、

「華奈七席、少し力を抜いていただけますか」
「はっ、すみません!」

慌てて力を抜き、頭に乗せられた手に砕けるよに笑った。

「邪魔をする」

カラリと戸を開けて入ってきたのは山本で、

「おはようございます!」

笑顔を見せてくる華奈に、どこか安心したように息を吐いた。

そっと手を伸ばし、華奈の頭へ、

「?」

なぜ撫でられているのか分からないが、幻覚の尻尾をパタパタと振って嬉しそうにする華奈を無言で見つめる。

「やはり、ダメか」
「?」

「いや、気にせんでいい」

撫でりと手を動かし、その小さな頭を包み込む。

もう一度、あの笑顔でこちらを見上げて手を伸ばして欲しかったのだが、やはりそれは叶わなかったらしい。

この少女の世界は、もう一人に決まってしまったのだから。

「今日は、どのようなご用でしょう?」
「なに、この者の霊圧を感じたのでな」

昨日の事を結構深く反省しているらしい。

「すまんかった」
「?」

急に謝られ、華奈は首を傾げてしまう。

「総隊長?」
「辛い思いをさせた」

昨日のこともだが、華奈に状況を理解させないまま晒し上げ、追い込んでしまったことに対して。
しかし、華奈は笑って首を横に振った。

「もう大丈夫ですよ!」
「しかしの」

眉を垂らさせた山本に、笑顔を深めるだけの華奈。
そんな二人のやり取りを見て、伊江村が口を開いた。

「あの、山本総隊長」

苦笑するように小さく口角を持ち上げ、

「華奈七席も、こう言っていますし」

もう本当に気にしなくても、そう言って華奈の頭へ手を乗せて見下ろす。

この子は今、こうやって笑っている。

伊江村の言葉を聞いて、華奈は腰に腕を回して抱き着いた。


ああ、あなたが、


「それも、そうじゃな」

山本は伊江村から視線を落として華奈を見る。
体全てを使って、あなたが私の世界だと、そう示している小さな姿に眼を細めた。

少し、そう少し羨ましいと思ったのだ。
昨日、自らの祖父と思い込んでいたとはいえ、今の伊江村のように抱き着かれ、私はあなたしかいらないと示されたからこそ分かる。

この純粋な想いを向けられる喜び。

手を出して、頭を撫でる。小さな頭が、赤茶色の髪が揺れ、こちらを見上げてニヘラと笑う。

「今度」
「?」

「茶会を開いた時にでも、一服入れてやろう」

今やっと、この子を連れて行きたいと願いながらそうしなかった藍染の気持ちが分かった。

嬉しそうに頷いて、華奈は山本の袖へ手を伸ばして掴み、

「抹茶はずっと飲んでなかったから、嬉しいです!」
「ほう、飲んだことはあったか」

「はい!前にじいちゃんが入れてくれました!」
「そうか」

華奈は、これからもこうやって祖父との思い出をいろんな所で思い出す。
しかし、思い出してもその影を追ったりしない。それは、華奈をここに留まらせてくれる人がいるから。

伊江村だけが、華奈をここに留まらせる事ができる。
華奈に安息を与えられる、只一人。

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