ブリーチ2(夢)
□カナ50
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「して、その能力は?」
「それが、見た者はいないらしく」
「なに?」
一番隊の隊主室。雀部から報告を受けていた山本が肩眉を上げた。
「何しろみんなちりじりになって戦ってたからねぇ」
京楽が苦笑して傘を上げる。
「何度か、鉄球が飛んでいくのを見たけど、」
あれが本体じゃないでしょとの考えに、どう思う?と他の隊長たちに眼をやれば、
「四番隊がいた場所からも、華奈七席が戦っている姿を見ることはできませんでした」
そして、
「私も、京楽隊長の意見と同じ考えを」
「ワシもそう思います」
狛村も頷き、フムと何かを考えだす山本。
「更木」
「あ?」
「七席以上の席に着かせる気はないのか」
今回の戦いで改めて分かった。
華奈の力は七席以上、隊長格にも値する。席も上がればもっと監視しやすいという意味も込められているその言葉に、剣八は眼を上に向けながら口を開いた。
「ねぇよ」
「なんじゃと?」
「あいつは調子が良い時で、五席の弓親の相手になるかならねぇかだ、七席でも良い方だろ」
どこが良いものか。
霊圧、戦闘能力、ともに隊長と肩を並べても劣らないというのに。
いつもなら、山本に雑な答え方をした剣八に一言いう狛村も、今回は何も言わない。
あの戦いの中、数日だが華奈を見てきたからこそ、剣八の判断は正しいと感じていた。
戦闘中にも関わらず集中を解き、その場にはいない者の気配をたどるように眼を凝らす。
更なる戦いが待っているとわかっていながら、眠る事も休む事も出来なくなり、
「あの者は、精神的にいささか脆いのかもしれません」
どんなに力が強くても、それだけでは勤まらないことだってある。
狛村の言葉に、卯ノ花は微笑みを浮かべて山本を見た。
「今回、七席以上の力を発揮出来た事には理由があるようですし」
「理由?」
「はい」
藍染が言っていた。
条件が揃わなければ、華奈は力を出すことができないと。
「守るべき者に背を預けて、ようやく立つことが出来るのですよ」
花太郎しかり、伊江村しかり、
「なんや、俺らがおらん間に随分おもろそうなのが入っとったようやな?」
ニィと笑った平子は、その顔を剣八に向け、
「どうや?俺に預けてみぃへんか?」
つまり、華奈を寄越せと、
「・・・あぁ?」
眉間にシワを入れて睨む剣八だが、平子は笑顔を絶やさない。
ピリピリした空気が部屋に立ち込めるが、剣八の頭の中で華奈の顔がふと過ぎった。
「好きにしろ」
「あ?」
「え?」
「は?」
平子だけではなく、他の隊長たちまでもが何を言われたのか分からないというように眼を見開いて剣八を見上げる。
「ただし、あいつが頷けばな」
ニヤッと口角を持ち上げて挑発的に見返せば、平子がこめかみをひくつかせて見返してきた。
「おもろいこと言うやんけ」
「はっ」
華奈が他の隊に行かないという確固たる自信があるからこそ、言える言葉。
「人が悪い」
「何か言ったか」
「いいえ」
卯ノ花の呟きに顔を向けないまま返すが、笑顔で首を横に振られた。
かくして、平子が華奈を引き抜くために声をかけるようになったのだが、
「こんにちは隊長!」
「シンジでええで」
華奈は一向に平子の名前を覚えようとしない。
「華奈、どや?五番隊にけぇへんか?」
「ははは!ご冗談を!」
笑って流し、四番隊へ駆けていく。
「伊江村さーん!」
四番隊の三席に抱き着き犬の如くじゃれついている姿を見ながら首を傾げた。