ブリーチ2(夢)

□カナ49
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「っつ、何だお前の、強さはっ!」
「教えてやんねぇよっ」

グチャリと音を上げながらチリのように消えていく破面。
その返り血を浴びながら、せっかく花太郎が洗ってくれたのにと袖の匂いを嗅いだ。

既に、あの匂いは消えている。

いったいここで何体の破面を倒したのだろうか。
みんなも、苦戦しているというのが霊圧の乱れで感じ取れる。

「ここが、みんなのいるテントへ抜けるのに一番いい道」

森の木が少なく、背が高い。
だから、ここにいれば自然と破面が沢山やってくる。森で生活していたからこそ分かる事だ。

華奈は黒三頭を撫でて話し掛けた。

「なぁ、黒三頭」

私は、みんなを守りたい。

「力、貸してな」

そう呟いた時、何体もの破面がいっせいに飛び掛かってきた。




「な、何だこの霊圧はっ!?」
「更木隊長じゃないの?!」

結界の中、見えない森の奥から放たれるその霊圧を感じ取った者はみんなが眼を見開いて動きを止めた。
初めは、剣八が眼帯を外したのかと思われたが、違う。
剣八の霊圧よりも荒々しさがない。
無いのに、研ぎ澄まされた切っ先を向けられているかのように感じるほどの緊張感。

「華奈、さん?」

花太郎が、華奈の駆けて行った森の方を見て呟いた。
あまりに大きな霊圧のせいでわからなかったが、それは紛れも無い華奈の霊圧。

みんなが信じられないと言うように森を見ていれば、こちらに向かって一体の破面が飛んできた。

ざわめく中で、卯ノ花が刀の柄に手をかけたその時、

「ぎゃぁぁ!!」

森の中から鎖のついた巨大な鉄球が飛んできて、その破面を潰してしまった。

卯ノ花でさえそれに眼を見開いてしまい、動きを止めたのだが、そんなことは知らぬというかのように鎖が引かれ、巨大な球はまた森の中へ戻って行く。

「け、結構近くじゃなかった?」
「う、うんっ」

鉄球が戻って行った場所を見てざわめく隊士たち。
その中で、伊江村に卯ノ花、勇音は理解した。

華奈が、斬魂刀の力を解放したのだ。

それが始開なのか卍開なのかは分からない。わからないが、

「すごいっ」

森の中から何度も鉄球が飛んできては空からこちらに侵入して来ようとしている破面を叩き落としていく。


一匹たりとも、そこへ行くことは許さない。
そこには、大切な人達が沢山、沢山いるんだ。

あの人が、いるんだ。


「くそっ!死ねー!!」

拳を握りしめて突っ込んできた破面に顔を向けて、華奈は巨大なその柄を振り、先についているカギの部分で押さえ込み地面に縫い付ける。そして、

「ぐあぁぁ!!!」

重力に逆らうことなく降ってきた三つの鉄球に両足と片腕を潰された。

「諦めろ。行かせねぇよ」

ここから先には、守らなければならない者がいっぱいあるんだ。

空を、また新しい破面が飛んでいく。
右足を潰していた鉄球を持ち上げ、軽く宙に浮かせると回転をかけながらけり上げた。

蹴鞠をしていた時、恋次に教えてもらった。

「くそ、くそっ、くそ!!喰らえぇ!!!」

残っていた左手を持ち上げて人差し指を華奈に向ける。
そこに集まっていく光り。

「諦めろって」

クンッと鎖を引いて、セロが放たれるその前に飛び上がって鉄球に乗り、

「ああああぁぁあぁ!!」

いつも足場に使っている霊圧に両手をついて思いっきり足で鉄球を押し出した。

剣八と追いかけっこをしていたから、出来るようになった。

手よりも足の方が威力が強いと、一角が、弓親が教えてくれた。

「喰い潰せっ」
「こんな小娘にぃぃぃっ!!!」

潰れて、なにも居なくなったそこを見ながら呟く。

「小娘だからなんだ」

花太郎が、楓が、花音が、そんなもの関係ないって教えてくれた。

「黒三頭、踏ん張るぞ」

伊江村さんが、

「一匹も行かせねぇ」

待っててくれてる。

どこからこんなにやって来るのか、うじゃうじゃと群がって来る破面を前に、華奈はガシャンと重たい音を上げながら自らの武器を肩に担いだ。

「主に従えっ、黒三頭!!」

三つの鉄球が、まるで大きく口を開けた犬の頭の如く敵に食らいついていく。



一角は走っていた。
全速力で、華奈の所へ向かっていく。
途中で弓親と合流し、互いに無言のまま頷いてそのまま走り続ける。

すると、不自然に開いた場所にでた。

「華奈!!」
「はい」

大声で呼べば、気が抜けるほど普通に返事が返ってきて、

「一角さんたちもう終わったんですか?あ、もしかして加勢に来てくれたんですかっ」

返り血まみれの華奈が、こちらに向かって走って来る。

「お前っ、」
「?」

首を傾げてくる姿さえも何も変わりはなく、大きくため息をついた。

「よかった」

弓親の呟きを聞いて、嬉しそうにニパッと白い歯を見せてくる。

「他のみんなも、終わりましたかね?」

もう、先ほどまで感じていた巨大な霊圧は感じられない。
それは華奈が自ら押さえたためなのか、それとももう破面の気配を感じないからなのか。

三人で話していれば、

「華奈!!」

周りの木を薙ぎ倒すつもりなのかというような勢いでやって来た剣八。と、その背中にいるやちる。

「隊長!副隊長もっ、お疲れ様です!!」

笑顔を向けてきた華奈をさらなる笑顔で返して、剣八はその小さな頭をわし掴みにして自分の顔の高さまで持ち上げた。

「お前、やりゃぁできんじゃねぇかよ!」
「え、あ、あの、?ありがとう、ございます?」

えっと、頭が痛いんですけどといいながら離してもらおうと剣八の手を掴み返せば、

「おい、さっきのもう一回やってみろ」
「へ?」

「へじゃねぇよ、さっきの霊圧だ!あれがお前の本気か?なぁおい!」

異常にテンションが高い。チラリとやちるを見れば、苦笑したように眉をたらして説明してくれた。

「剣ちゃんね、破面と戦っても全然楽しくなかったんだって」

そんな時に華奈の霊圧を感じて、今なら本気でやり合えると意気込んでやって来たらしい。

「いやいや!私隊長と戦うとかしませんから!」
「あぁ?!」

浮かべていた凶悪な笑顔は一瞬で消え、ものすごいしかめっ面に変わる。

「そ、そんな怖い顔してもダメです!」
「っち」

ポイッと華奈を放るように手を離すと、顔を森の入口、つまり結界がはられている方へ向け、

「やっぱ、あいつらを使わなきゃ無理か」
「あ、あいつらって誰ですか!?隊長!ちょっと待ってください!!どこ行くんですか!?」

剣八の隊長羽織りを握って踏ん張るが、そんなことでは剣八は止まらない。

「キャンキャンうるせぇな、もう切るもんもねぇんだから帰って寝んだよ」
「本当ですね!?寝るだけですね!??信じますよ!」

「勝手にしろ。都合がいい」
「寝るだけって言ったじゃないですか!!なんですか都合って!私が信じて気を抜いてる隙になにをするつもりなんですか!!?」

止めようとする華奈をそのまま引きずって、森を出るために歩き出す剣八。

「なんか、あれに似てるよね」
「あ?」

「ほら、犬に注射するために病院に連れて行く時の」
「・・・あぁ」

ヤダヤダと訴えながらも最終的には連れていかれる、あの何とも言えない感じが漂っている。
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