ブリーチ2(夢)

□カナ43
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「では、お願いしますね」
「はい」

卯ノ花から仕事を託された伊江村は、ルコンガイの森の外れにある小さな施設に向かっていた。

いつもの死覇装姿でそこへ向かい、森の中を歩いていると、

「やっぱり!伊江村さんだー!!」

ドスッと最近はよく感じるようになった重みと衝撃が背中へ突撃してきた。

「か、華奈七席?!」

どうしてここに!?と振り返れば、いつもの黒い死覇装姿ではない、淡い朱色と唐草色の袴を身に纏った華奈が眼にはいる。

「森で遊んでたんですよ!そしたら伊江村さんがいる事に気がついて!」

嬉しそうにぐりぐりと顔を埋めてきた。

「も、森で遊んでたって、もしかして、今日非番だったんですか?!」
「はい!」

ひとしきり喜んだ後、伊江村の隣を歩きながらはしゃぐ華奈。

「伊江村さんはどこかに行くんですか?」
「えぇ、卯ノ花隊長からの用事を請け負ったので」

「そうだったんですか!」

それって私も一緒に着いて行っても大丈夫な感じですか?と言われれば、その後の展開などもう分かりきっている。

「せっかくの非番ですが、よろしいのですか?」
「伊江村さんといられるんだから最高ですよ!」

満面の笑顔でそう返され、伊江村に断る事など出来なかった。
断る必要もないのだが。

道から外れて森の中に入ったり、タカタカと走りながら拾った枝を振り回してみたり、

(本当に森で遊んでたのか・・・)

その姿を見ながらすごいなという感嘆めいたものを感じていれば、

「伊江村さん!お昼ってどうするんですか?」

ガサガサと木の間をすり抜けるように走ってきてこちらにやってくる。

「そうですね、ここまでくればそう遠くない所だと思うので」

ここら辺で何処か休める所を探しますかと言えば、

「じゃぁ良いとこありますよ!」
「え?」

「こっちです!」

伊江村の手を掴んで森の中に入っていく。驚きながらもその手を振り払う事なく着いていけば、

「こっちに泉があって、綺麗ですよ!」

「ほら!」と連れて来られたのは森の中にポッカリと開いた空間。

「すごい、ですね」
「でしょ!」

何処か誇らしげに笑う華奈が可愛かった。

「そう言えば、伊江村さんと一緒にご飯食べるの初めてですね!」
「そう言われると、そうですね」

華奈はいつも夕飯を食べてから伊江村の部屋に来るし、朝は自隊の隊舎か食堂で。昼はそれぞれで食べているため、こうして二人で食事をするのは初めてなのだ。

「華奈七席は、料理などするのですか?」
「んー、たまにする程度ですかね?みんなで集まって騒いだりする時にわーっと」

以前、花太郎になんでも好きなもの作ってやるぞと言っていたのを思い出して聞いてみれば、意外な答が返ってきて驚く。

「でも、私たちの中で料理が上手いのって花太郎か花音だから、私と楓はその手伝いしながらいっつもつまみ食いしてます」

そして二人に怒られますと、楽しそうに話していくのを聞いて口元が緩んでいくのを感じる。

知らない君を知るのはとても嬉しいことだ。

その後はまた道に戻って歩きだす。

「これから行くとこって何かあるんですか?」
「ある、という訳ではないのですが」

卯ノ花隊長がとても気にかけている施設なので、その様子を見に行くんですと見えてきた建物を指差して見せる。

「私も来たのは初めてなので、どのような所かは知らないのですが」
「へー!」

走っていく華奈に苦笑して、後を追うように足を進めた。
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