ブリーチ(夢)

□カナ37
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「うおりゃー!!」
「ぐわっ!!」

「か、華奈七席の勝ちっ!」
「っしゃー!!」

突然始まった腕相撲大会。華奈は次々と平隊員たちを沈めていく。

「よし!明日地下水道の掃除手伝えな!」

負けた者には四番隊の仕事を手伝うように言う。それが罰ゲームらしい。

「へー?お前結構やるじゃねぇか」
「へへー!腕力でも負けないように頑張ってんですよ!」

袖を捲って腕に力を入れてみせるが、そこに筋肉らしいものは一切見当たらない。
どういう体をしているのだろうか。
まぁ、副隊長が子供の十一番隊だ。いまさらそんな疑問を真剣に考える者もいない。

「次!荒巻行きます!」
「おっし!イケるとこまでいってやらー!」

何人抜きをするつもりなのだろうか。

「華奈さん、罰ゲームで掃除の手伝いとか、いいですからっ」
「いいんだよ!決定権は勝者にあり!」

いつも以上にテンションの高い華奈。それを酒のつまみとでも言うように見守っている隊長二人と副隊長二人。

「華奈ちんすごいねぇ!」
「今何人いった?」

「三十人は、いきましたかね?」
「あ、あんなに細いのに」

この腕相撲大会を見守ってるみんな。主に四番隊のみんなは、明日の掃除どうなるんだろうと、不安と期待に胸を燻らせている。

「うらー!」
「だはー!」

「華奈七席の勝ち!」
「見たかヒゲチョロ!」

「華奈七席までそれで呼ぶんですか?!」
「髭をそってただのチョロにしてやろうか!」

「そ、それはご勘弁を!」
「ははは!しないよそんなこと!」

笑って荒巻の肩えおパシリと叩く。

「明日は溜まった書類整理手伝ってな!」

これはもう罰ゲームなのだろうか。ただのお願いのようにも思うのだが。

そんな温い罰ゲームを出しながら、華奈は平隊員をみんな倒していった。

「おーっし!次は俺とだ華奈!」
「負けませんよー!」

互いに口元をニヤつかせて手を組む。

「わー、七席と三席の勝負ですかぁ、じゃぁ罰ゲームも今までのよりも凄いのにしましょうよ」

割って入ってきたのは荻堂で、

「それもそうだな」

それに頷いたのは一角。

「おい華奈、今回は先に罰ゲーム決めとこうぜ」

「いいですけど、どんなのがいいですか?すごいのって。総隊長のヒゲを切って来るとかですか?」

首を傾げてくる。

「凄すぎだ馬鹿野郎!なんでいきなりハードル上がってんだよ!」
「えー、じゃぁ、」

んーとと考ていれば、荻堂がニコリと笑う。

「ここは精神的な負担が来るので行きましょうよ」

お二人とも肉体的なものだったら難なく出来そうですしと、サラっと黒いことを言って来る。

「そうですねぇ、スタンダードなので行けば好きな人の名前を叫ぶとかですけど」
「んなもん、罰ゲームになんねぇだろ」

「はい」

二人は荻堂を見て当たり前じゃんと言ってくる。

「涅ネム」
「伊江村さん」

二人にそう言った羞恥心は無いらしい。逆に言われた伊江村の方が恥ずかしくなってくる。
荻堂はッチと舌打ちをして顔をそらせた。

「おまっ、今舌打ちしなかったか?!」
「やだなぁ、してませんよ」

あははと笑っているが、一角と華奈は二人で考える。

「じゃぁ、狛村隊長をモフモフしてくるってのは!」
「そりゃお前の願望だろうが」

「じゃぁ鉄さんのサングラスを」
「お前、射場さんのこと嫌いなのか?」
「な?!好きですよ!!」

「じゃぁ止めとけ」

んーと考えて、二人は同時に剣八の方を向いて固まる。

「あ?」
「じゃぁ負けたら隊長の鈴を取るって事で!」

「取れるまで諦めんなよ」
「なんで私が負けるの前提なんですか!」

「俺がお前に負けるわきゃねぇだろ!」

額をぶつけ合ってギリギリと睨み合う二人。

「わー!取ったらあたしにちょうだい!」
「・・・ほう?」

自分が罰ゲームになるとは。
それもこの鈴を狙ってくるというのだから面白い。

華奈が負ければ、いつも逃げ回ってまともに相手出来なかった奴とやり合えるぜと、口角を上げて笑う剣八。

ちょうだいと言っているやちるに関しては別に何もない。

卯ノ花は微笑みながらその光景を眺めていた。誰も気がついていないが、彼女はさっきから休むことなく酒を飲みつづけている。
隠れた酒豪だ。

「レディ、ファッイ!!」
「うおー!」

「らー!!」

ガチッと固まって動かない腕。

「はあぁぁー!!」
「ったぁぁー!!」

互いに一歩も引かない攻防戦。額に血管を浮き上がらせながら、ミチミチミチと嫌な音をたてて力を入れていく。

「す、すごいっ」
「なにあれっ」

一角と渡り歩いている華奈に、四番隊からざわめきが起こった。
しかし、十一番隊のみんなは驚きながらもどこかで納得している。
華奈は七席で収まるような力ではないのだ。ただ、剣八が華奈に与えているのが七席というだけで。

藍染が言っていた事は嘘ではなかったと、みんなが息を飲んで勝負の行方を見守った。すると、

「っらー!!」

バキバキバキと、腕相撲をするために使っていた樽が壊れていく。

「う、わー!!」

華奈はそのまま支えを失って崩れていき、一角に押さえ込まれた。

「しょ、勝者っ、斑目三席!」

樽が壊れたそこにいは、地面に手の甲を付けて倒れている華奈がいた。

「く、くっそー!」
「はっはっは!俺に勝とうなんざまだまだ早いぜ!」

「まさか樽が壊れるとはっ」

うなだれる華奈に仁王立ちして笑っている一角。そんな二人を見て、剣八はゆらりと立ち上がった。

「じゃぁ、俺と殺り合うのは華奈か」
「え、」

顔を上げれば、ニヤリと笑っている隊長殿。ブワリと冷や汗が流れてきた。

「い、いや、鈴を取るとは言いましたけど、殺り合うとは、」
「んなもんどれも同じだろうが」

向かってくるなら、たたっ切るまでだ。

「ちょっちょ!たんま!たんま!!今すぐやるなんて言ってませんよ!!」
「はんっ、なんで俺がお前の都合をきいてやらにゃなんねぇんだ」

「いや!罰ゲームってこんなんだっけ?!」

え!?と一角に助けを求めようとしたが、一角は既に座り込んで酒に手をかけていた。

「華奈、取れたらちゃんと見せに来いよ」

じゃねぇとやり直しだからなと、酒を煽る。

「ちょ!隊長!今日は宴の日ですから!今日は止めましょう!四番隊のみんななんかドン引きしてますから!!」

「しるかよ、んなこと」
「まってー!まってー!」

「副隊長助けてー!」と座ってこちらを見ているやちるに助けを求めれば、んーと何か考え出した。

「じゃぁ剣ちゃんとも腕相撲したら?」
「へ?」

「剣ちゃんに勝ったら鈴貰えばいいよ」

ニヘラ。笑ったやちるに悪魔の羽が見えた気がした。
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