ブリーチ(夢)

□カナ35
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「花音居ますかー!」

十二番隊の隊舎を進み、さらに奥へ行けば用事が無ければ誰も近づかないであろう技術開発局が見えてくる。

「華奈ちゃん!」

花音は華奈を見た途端走ってきてその存在を確かめるようにワタワタと触って来た。

「一週間もどこ行ってたのっ?みんな心配してたんだよ?」
「いや、普通に休暇取って現世に行ってただけだったんだけど、」

なんかその事実だけ放り投げられていたみたいでと、頭をかいて苦笑する。

「で、現世に言ってきたお土産持ってきた!」

「はい!」と花音の手に饅頭の入った箱を渡す。
いつも通りの華奈に、花音は安堵と呆れのため息をついて笑うと、箱を受け取って中身を見た。

「わぁ、美味しそう」
「だろ!みんなで食べてな!」

「うん!ありがとうね」

手を振って分かれ、花音はそのまま研究所の中へ進んでいく。
そして、テーブルの中央に箱を開けて饅頭を置いた。

「わ〜!どうしたんですかこのお饅頭!」
「友達が持ってきてくれたの」

「みんなで食べよう?」やって来たリンにそう言って、お茶を準備していれば他のみんなもやってくる。
そして、みんなで仲良く食べたのだ。

ロシアンルーレット饅頭を。




華奈は八番隊へ来ていた。

「楓ー!」
「華奈?!」

執務室の扉を勢いよく開けて入ってきた華奈に驚きながら楓が駆け寄る。
そしてペタペタとその顔を触ってきた。

「どこ行ってたの?心配したよ!」
「現世に観光!」

どこも何とも無いよと笑って、華奈は楓にお土産を差し出す。

「お饅頭?」
「そ!みんなで食べてな!」

「ありがとうっ」

また飯でも一緒に食おうな!と言いながら手を振る華奈を見送って、楓は饅頭を一度棚に置いて人数分の皿に盛りつけていく。

「あら、お饅頭?」
「はい、友達がお土産でくれて」

七緒の机に饅頭とお茶を乗せてはにかむ楓。

そんな感じで三席の机にも、他のみんなの元へお茶と一緒に置いていく。

今日も仕事をサボっていた京楽は、いつまでたっても七緒が迎えに来てくれないとしょんぼりしながら帰ってきた。

異様な光景が広がっているとも知らずに。



「鉄さーん!」
「華奈!ノックせいと何度、華奈?!」

「はい?」

いつもの調子で怒鳴ったが、いなくなったと聞いていた華奈が目の前に立っている事に驚いて二度見した射場。
当の本人は返事をしながら首を傾げて見上げてくる。

「お前っ、どこに行っとったんじゃい!」
「現世です!ちゃんと休暇で行ってきたのに、みんなそれ知らなかったみたいで」

はははと笑っている華奈にため息が出た。

「まぁ、何事もなかったんなら、別にえぇ」
「へへっ」

射場に頭を撫でられて嬉しそうに笑う華奈はさながら手のかかる妹といった所だろう。

「あ、これお土産です!」

みんなで食べてくださいと箱を差し出してきた華奈に、射場はおおそうかと言いながら受け取る。

「みんなに配ってまわっとるんか?」
「はい!」

行く先々で驚かれて怒られてますと無邪気に笑っているのには、呆れを通り越して笑えてくる。

「次は夏帆と恋次さんの所行ってきまーす!」

タタタッと走って行ってしまう元気な背中を見送って、射場は執務室にあるテーブルへ箱を置いてみんなに声をかけた。



「恋次さーん!夏帆ー!」
「華奈?!」

「華奈先輩!?」

顔を出せばやはり驚かれ、訳を話せばため息をつかれる。しかし、最後にはみんな笑ってくれるから嬉しい。

「みんなで食べてください!」

箱を差し出して華奈は走って行った。

「華奈先輩、なんともなくて本当によかった」
「はぁ、あいつ、みんなに心配かけたって、本当に分かってんのか?」

苦笑して、でも嬉しそうに恋次は箱を開けて饅頭を手に取る。

「どうせなら鯛焼き買ってこいっつーの」
「それで喜ぶの、副隊長だけじゃないですか」

「なんだよ、いいだろ鯛焼き」

うまいじゃねぇかと話しながら、二人で詰所の中に入っていった。
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