ブリーチ(夢)

□カナ35
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華奈は一週間ぶりに十一番隊の隊舎を歩いていた。
この一週間ずっと自分のコピーを作り出す作業に費やしていたため、体のあちこちが固まってしまっているように感じる。

一角に頼んで道場で相手でもしてもらおうと思いながら執務室の扉を開けた。

「おはようございまーす!」

お久しぶりです!と大きな声で挨拶をしながら中に入れば、そこにいた全員の視線が華奈に突き刺さってきた。

「え?」
「華奈ー!!」

「お前どこ行ってやがったー!!」
「ええー!?」

物凄い形相で詰め寄って来るみんなに後ずさる。

すると後ろから肩を掴まれ、ゆっくりと振り返りながら見上げた先には、

「よぉ、久しぶりじゃねぇか、華奈」
「い、一角、さん?」

満面の笑みを浮かべ、器用にもこめかみをひくつかせている一角がいた。

「無断で一週間もどこ行ってやがったこのボケが!!」
「ひー!!」

隊舎内に響き渡る程の怒声が轟いた。

「む、無断じゃ無いですよ!誤解ですって!!」

あわあわと慌てふためき、壁際へ追い込まれながら抗議する。

「ちゃ、ちゃんと副隊長に許可もらいましたもん!!」

あぁ?とみんなが首を傾げて振り返る。そこには剣八の膝に乗ってこちらを見ているやちるの姿。

「えぇ?みんなにもちゃんと言ったよ?あたし」

「ほらぁ」とやちるは華奈が居なくなる前の日の事を思い出しながら話す。

道場で稽古している時、みんなが集まっているなら調度いいと声を張り上げた。

『華奈ちんお出かけしてくるって!』

「そしたらみんなウース!て返事してたじゃん!」
「どこの誰がその一言で一週間も休むと思いますか!!」

一角のまともな反論はやちるの、「でも言ったもん!」で流された。

「ま、まぁまぁ!そうだ!なんか心配もかけちゃったみたいですけど、お土産もいっぱい買ってきたんですよ!!」

そう言って饅頭が入っている箱をみんなにさし出して進める。

「お前、一週間もどこ行ってたんだよ」

知らなかっただけで無断欠勤ではなかったという事実に、先ほどまでの怒りを引っ込めて饅頭を取りながら聞けば、いつもの笑顔を向けてきた。

「現世です!」
「現世?」

「はい!浦原さんとこでお世話になってました!」
「はぁ?!」

皆さん親切にしてくれましたよとニコニコしながら話す華奈に、もうこの一週間の心配だとか何だとかがどうでも良くなってきた。
みんなはため息を吐いて饅頭を口に入れる。

「浦原さんってなんでも作ってて、このお土産もそこで買ってきたんですよ!」

ジャーン!と箱の蓋を持って掲げて見せてくるそこには、

「君の運命やいかに!!ロシアンルーレット饅頭!!」

ブハッと吹き出したが既にもう遅く、至るところで野太い悲鳴が上がっていた。

「な、なんだこりゃぁ!!」
「げっ、っげ、げ〜!!」

ある者は体が毛で覆われ、あるものは何かの鳴き声しか話せなくなり、十一番隊舎は混沌と化した。

「あ、ちなみに当たりは一つしか無いそうです」
「おかしいだろそのロシアンルーレット!つーかっ、うわっ!どうすんだよこれ!!」

一角は筋肉が盛り上がり、普段とは比べものにならないほどさらにマッチョになっていた。

「・・・いや、これはこれでいいか」
「いいなー!一角さんいいなー!!」

鏡の前で自分の体を見ながら思案する一角に、華奈は眼を輝かせながらその周りではしゃぐ。

「あはっ!剣ちゃん見てみて!!」
「あぁ?」

剣八が下を向けば、

「大人になれたー!!」

グラマラスな体でピョンピョン跳ねているやちるとおぼしき女がいた。

「あー、副隊長は年取る饅頭を食べたんですね。確か肉体年齢が上がるんだそうですよ」

お品書きを見ながらいう華奈に、やちるは「へー!」と言っていつもより高い目線にキョロキョロと周りを見渡す。

「剣ちゃんの顔いつもより近ーい!」

いいなー!おっきいっていいなー!!と動く度、桃色の髪が揺れて色香を振り撒く。

「やちる、止まれ」
「?」

「おい、いつまでこのままなんだ」
「えーと、1時間待つか、煮えたぎるお茶を飲んだら戻るそうです」

「なんだ煮えたぎるお茶って!拷問だろそれ!」
「だって書いてあるんですもん。あ、アドバイスもありますよ」

ほらと示されたアドバイスには、浦原の似顔絵に吹き出しで書かれていた。

『煮えたぎるお茶を飲むことを選んだ貴方!無謀だから止めましょう』

「じゃぁ最初からそんな設定つけんじゃねぇよ!!」

バシーンッと蓋を床にたたき付けて突っ込む一角を笑いながら、華奈は饅頭の箱がいくつも入っている袋を肩に担ぐ。

「じゃぁ、他の所にもお土産渡してきますね!!」
「まっ!」

止めようとしてももう遅い。
走り出した華奈の背中は小さかった。

「なんつー危険物ばらまく気だあいつ」
「・・・」

ちなみに、弓親は一時間たっても気持ちが折れて部屋から出てこなかったそうだ。
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