ブリーチ(夢)
□カエデ33
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「フン、転界結柱起動するヨ!!」
マユリが意気揚々とそう言い放つが、慌ててそれを止めに入る死神が一人。
まだみんながいるのに起動するのは危険だと言えば、マユリは渋い顔をした。
「余裕を持って十数えてやるヨ」
自分の甘さにヘドがでると言っているマユリだが、そんな短い時間で退避できるのはいったい何人だろう。
急げー!死ぬぞー!と叫びながら走り回っていく周囲にため息をついていれば、遠ざかっていく足音の中に紛れて一つだけこちらに向かって来る者が。
「ま、マユリお兄ちゃん!!」
ついでポスッと飛びついてきたのは言わずもがな楓だ。
女死神が涅隊長に抱き着いたぞと騒ぎ出す周囲。
マユリは舌打ちをして楓を見下ろした。
「お前は、なにをしている」
「だ、だってっ」
無事に帰ってきてくれた事が嬉しくてと泣きながらマユリに抱き着いて震えている。
ため息をつくと、二人を取り囲んで見ていた周囲が肩をびくつかせた。
あの女死んだぞと、これから目の前で行われるであろう残虐行為を覚悟するが、
「まったく、この私があんな輩相手に死ぬとでも?」
「だ、だって、だって!」
小さな女の頭におかれる手には優しさが篭っていた。
え、あれ?あれって涅隊長だよな?あれ、今回の戦いで頭が変になったのかなと、みんなが沈黙する。
「さてと、」
マユリは楓を抱きしめたままニヤリと笑って顔を周囲に向けた。
「もうすぐ十数え終えてしまうがネ?」
「!!?」
「い、急げー!!」
ざっと散っていくのを見てマユリは鼻をならす。
「お兄ちゃんっ」
「・・・いつまで泣いている気だネ」
「わ、私っ、移隊する!」
楓からの突然の申し出。それにマユリは目を見開いて驚いた。
「フン、やっとその気になったのか」
「う、うんっ、も、もうこんな思いするのっ、やだ!」
しゃくり上げながらマユリを見上げる楓が可愛くて仕方が無い。
楓は八番隊。副隊長の七緒に憧れているため、マユリと付き合うようになっても十二番隊へ移動しようとはしなかった。
しかし、今回の事でやっとその気になったらしい。
マユリは親指で楓の涙を拭いながら笑った。やっと、楓を手元に置いておく事ができる。
あの女にだらし無い京楽の下に置いておく事がどれほど苦痛だったか!口にはせずとも何度も京楽に毒を盛ろうとしたものだ。
しかし、それも今日まで。
楓自ら移隊したいと言ってきたのだから。
「わ、私っ」
袖で乱雑に涙を拭うと、マユリを見上げて強い意志の篭った目を向けてくる。
「十一番隊に移隊する!!」
「・・・は?」
とても、とても間抜けな声が出た。
あれは本当にマユリなのかと言いたくなるほど間抜けな声だった。
「十一番隊に入って、い、いっぱい鍛えてもらう!」
「待ちたまエ!なぜそうなる!?よりにもよって十一番隊だと?!」
慌てるマユリなんて激レアだ。
しかし、楓の目は未だに強く光を放っていた。
「私も華奈みたく強くなったら、もっと自分で自由に動けるようになると思うの!」
そうすれば、また戦いになってもマユリについていく事ができるしと、かなり極論に行った楓を止めるのに、マユリは丸一日使ったとか、使ってないとか。