ブリーチ(夢)
□カナ28
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「ぐはっ」
「まだ寝るには早ぇだろ!」
「お、お腹すいたっす・・・」
剣八と華奈がやり合っているのを見ている十一番隊のみんなは、いやそれ以前の問題だろと心の中で突っ込む。
肩で息をしている華奈は体中擦り傷だらけ。
今にいたっては頭にタンコブまで出来ている。
「甘いもの食べたーい」
「余裕じゃねぇかコラ」
「余裕のよの字もないですよ!」
なぜか逆ギレして向かって来る華奈に、剣八は鼻で笑いながら打ち返す。
入隊当初は女だからとナメられていたが、ここにいる者たちにその力を認めさせ、七席の地位まで上がってきた。その根性はとても好ましい。だが、
「しまいだ」
「ぐふっ!」
やはり男と女には大きな差がある。
この場合、単に隊長の剣八が強すぎるという事も考えられるのだが、そこら辺はあまり頭にない。
床に転がっている華奈を見下ろしていれば、遠慮がちに道場の扉が開いた。
「あ、あの〜」
見れば、四番隊の隊員が顔を出してきていた。
「あぁ?四番隊がなんの用だ?!」
「ヒッ!ごめんなさい、ごめんなさい!」
扉の近くに座っていた隊員たちに睨まれ謝りながら後ずさる姿が、何とも情けない。
「あー!ヨダレンだー!」
「く、草鹿副隊長」
やちるが近づけば、隊員たちも道を開けるように下がる。
「華奈ちんのこと迎えにきたの?」
「あ、はい。傷の治療もかねて」
言えば、床に転がっていた華奈が顔を上げて唸りながら手を伸ばす。
「うぉぉ〜、花太郎ー、ヘルプミー」
「華奈さん?!こんな短時間ですごいボロボロに?!」
顔を青くさせて華奈に駆け寄った。
「大丈夫ですか!?」
「お、」
ゴロンと仰向けに転がって、自分の腹に手を乗せる。
「お腹、空いた」
くるるぅと鳴った華奈の腹に、花太郎は安堵したように肩を下げながら息を吐く。
「なんのコントだ、ありゃ」
呟けば、やちるが笑いながら肩に上ってきた。剣八は華奈を見下ろしながら持っていた木刀を肩に担ぐ。
「今日はここまでだな」
「あ、ありがとうございました」
傷だらけの顔でそう笑って見上げて来る華奈に鼻で笑い、剣八はやちるを連れて道場を出て行った。
「華奈さん、大丈夫ですか?」
「うん、体中痛いけど、何とか」
上半身を起こした華奈は痛ててと言いながら立ち上がり、花太郎の肩に寄り掛かる。
道場の外で待っていた楓と花音は、花太郎に支えられながらやって来た華奈に苦笑を浮かべながら話しかけた。
「お昼ご飯誘いに来たんだけど、辛いなら何か買ってこようか?」
「行く!甘味食べたい!!」
傷だらけでそう言いきった華奈に、みんなは苦笑を零すしかない。
「なら傷を消毒して、治療してから行きましょう」
「いつもすまないねぇ」
「おばあちゃん見たいな言い方しないでよ」
そう笑って、道場を後にした。
道場の裏にある井戸で水を汲み、汗と血で汚れた華奈の体を拭く花太郎。
サラシを巻いているとはいえ華奈は半裸に近い格好なのだが、お互い別に恥ずかしがる事はない。
恋愛感情がない二人。
というか、この四人は家族愛のようなものがとても強く、互いのことを大切に思ってはいるが恋愛に発展することはまずないだろうと自負している。
「ご飯食べに行く前から疲れさせてごめんな」
「いえ、そんなこと気にしないでください!」
「でも、花太郎腕上げたよな?すっかり元通りだよ!」
そう言って笑顔でお礼を言う華奈に、花太郎も笑顔で返す。ほのぼのカップルに見えるが、恋愛感情はいっさいない。
ちなみに、花太郎が男に嫌われる理由はここにあったりする。
八番隊の楓、十一番隊の華奈、技術開発局の花音。
この三人と仲が良く、恋愛感情がないが故に、普通に男として近づくよりも親しくなれる事がうらやましいという妬みが、嫌がらせだったりする。
誰も、花太郎自身も気づいていないが。
「よし!今日は私の奢りだ!好きなだけ食え花太郎!!」
元気になった華奈は花太郎の肩に手を回しながら歩きだす。それを見て着いていく二人も、楽しそうに笑っていた。