ブリーチ(夢)

□カナ28
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件の事も終わり、以前のように平和になったこの世界。


「狛村隊長って犬だったんですね」

そんな事を呟いたら首の後ろを捕まれた。

「グエッ」
「華奈、女性が“グエッ”なんて、美しくないよ」

「ゲホ、ゲホッ、今のは女とか関係ないですよ!息を吸ってるなら誰でもなる現象です!!」

一角に首の後ろを捕まれた華奈は、締まった首をさすりながら隣で笑っている弓親に抗議した。
ギャーギャーと騒ぐ華奈を面白そうにからかっている一角と弓親。

「お前な、狛村隊長は犬じゃねぇぞ」
「違うんですか!?いや、犬かどうかは別に、ただちょっとモフモフさせて欲しいって思っただけで」

「・・・」
「・・・」

「い、いやー!見た目は獣だけど!狛村隊長よりもうちの隊長の方がずっと獣に近っ」
「ほう?」

後ろから、やちるを肩に乗せて表れた剣八。
低いその声にビクッと肩を揺らし、恐る恐る振り返るその目にはうっすらと涙が見える。

「誰が、獣、だと?」
「た、大変だー!この前の戦闘の傷が開いて何もかもをぶちまけそうだー!!」

そう叫びながらダッシュで走りだし、前を歩いていた隊士に近づいていく。

「花太郎ー!」
「あれ?華奈さん。どうし、」

「色々とまずいから一緒に来てー!!」
「待ちやがれ華奈っ!」

「ごめんなさーい!!」
「え、っえ?!」

なぜ捕まって一緒に走らなければならないのかわからない花太郎。
だが、後ろからものすごい形相の剣八が追いかけて来れば逃げざるをえない。


華奈には霊術院時代から仲のいい友人が三人いた。その一人が山田花太郎。

「あれ?華奈ちゃん、また怪我したの?」
「違う違う!更木隊長から逃げてただけ」

「えぇ?!」

そして、技術開発局の少女花音もその一人。

「華奈さん、はぁはぁ、さっきすごい走ってましたけど、はぁ、傷は、開いてないですか?」

華奈に軽く担がれるような形で一緒に走っていた花太郎にそう聞かれ、汗を拭いながら笑ってみせた。

「大丈夫!花太郎が治療してくれたんだ!もう完全にふさがってるよ!!」

その笑顔を見て照れるように頬を染めながら笑い返した。しかし、

「なら、俺とやり合っても問題ねぇよなぁ?」

ガシッと頭をわし掴みするように手を乗せられ、先程拭った汗とはまた違う汗が全身から吹き出した。

「い、いや〜、それは」
「安心しろ。お前が倒れても、そいつがいりゃぁ大丈夫なんだろ?」

顔を近づけてきてニヤリと悪魔の如く笑って来る剣八に、吹き出す汗がとまらない。

「そ、それとこれとはまたべっ」
「あ?」

「喜んでお相手いたします!!」

花太郎と花音は、ズルズルと引きずられるように小さくなっていく友人を見送って、出来るだけ大量に薬を用意しておこうと四番隊隊舎へ足を進めた。

花太郎と花音は学生の時から周りの者に何かと仕事を押し付けられる事が多かった。
もともとの性格上、そういう事が嫌いな華奈は二人を背にかばうことが多く、向かってきた者とは何かとぶつかり合うことも多かった。

「華奈ちゃん、大丈夫かな・・・」
「多分、更木隊長もそこまで酷くはしないと思いますけど・・・」

「そうだよねっ」

華奈のすごい所は、やり合った相手とさえ最終的には打ち解けてしまう所だと、二人は思う。
そして、学生の時から守られ続けている二人に寄せる絶対の信頼も、今だかつて揺らいだことがない。

華奈が十一番隊に志願して入ったと聞かされた時は二人ともかなり焦ったが、それでも華奈は毎日笑っていた。

女だからと周りにナメられないように努力を惜しまなかった。

いつも傷だらけで隊舎にやってきては花太郎が治療して、華奈がどんな傷を作って来ても治せるようにと努力した。
その結果、花太郎は七席の座に上り詰めた。華奈も、女の身で戦闘部隊七席の座を勝ち取った。

「あれ、華奈こっちに来てないんだ?」

入ってきた少女に二人の顔は綻び、苦笑を浮かべる。

「更木隊長に捕まって行っちゃったから」
「もしかしたら体力切れで倒れてるかも知れませんね」

「・・・いつも通りだね」

クスリと笑った少女は八番隊の第八席、楓。

「もうすぐ昼休みだから、ご飯誘いに来たんだけど」

そう言って腕に持っている本を抱え直し、どうしようかと首を傾げる。

「様子、見に行ってみようか」
「そうですね。治療も、必要だと思いますし」

お腹も空かせてるだろうしと、三人で笑顔を浮かべて十一番隊舎へ向かった。
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