ブリーチ(夢)

□カナ27
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救護詰所の一室、そこで行われている宴。
それを止めるために伊江村は扉を開けた。

「み、みなさん!他の患者の方々のご迷惑になりますから!」

それに安静にしていなければならないのだと言う伊江村だが、飛んできた瓶を顔面で受け止めよろめく。
それを見て足元で膝をついていた花太郎があわあわと手を振った。

「だ、大丈夫ですか伊江村三席!?」

見れば、酒やそのつまみを盆に乗せている姿。

「な、何をしているんですか山田七席!」
「そ、そのぉ〜」

はははと渇いた笑いを零してちらりと周りを見る。

こんな怖い人達に命令されて断る事なんて出来ませんと、言いたいことが伝わって来るその笑いに伊江村は哀れみとともにため息をついた。

そんな事をしていれば一角が伊江村に気づき笑いかけながら手を上げた。

「おぉ!お前四番隊の三席だな!」
「は、はいっ」

「挨拶が遅れた!」

そう言って目の前にドカリと座って手酌する。

「い、いえ!私はまだ勤務中ですので!」
「あぁ?!俺の酒が飲めねぇってのか?!」

よく分からないまま周りを強面の男たちに囲まれて焦る。
しかし、勤務中に酒を呑むわけにはいかない。

だが物凄く怖い。

その時、

「あー!一角さん!なにやってんですか!!」

花太郎たちを虐めちゃダメですよ!と駆け込んできたのは、今は寝ているはずの華奈。

「か、華奈さん!!」
「華奈!!?」

「伊江村三席にまで迷惑かけてー!」

「馬鹿ー!」と言いながら一角が伊江村に押し付けたお猪口を取り上げてブンッと放り投げ、その顎に命中させた。

「っテ!てめぇ!」

いつもの調子で言い返そうとする一角だが、はたと気がついて華奈を見た。

「お前、傷はもういいのか?」
「もちろんですよ!」

ニッと笑って見上げて来る華奈に、みんなが感動したように喉をつまらせる。

「ば、馬鹿野郎!!」
「お、お前!勝手にケンカ吹っかけに行きやがって!!」

みんなにワシャワシャと揉みくちゃにされながら喜ばれている華奈に、伊江村と花太郎は小さく笑った。

「な、なにすんですか、いきなりっ」

そんなに強く撫でられたら痛いですよと言いながら見上げて来るその姿が、本当に嬉しい。

「お前も飲め!」
「祝い酒だ!!」

「ダメですって!怪我がちゃんと治るまで無茶しないようにって花太郎に言われてるんですから!」
「あぁ?!っち、しょうがねぇな」

そこは引くのかと思う伊江村。

そんなやり取りを見ていれば、みんなで退院したら飲もうという話しになって盛り上がっていく。

「じゃぁ、その時は四番隊のみんなも一緒に飲みましょう!」
「あぁ?」

「一角さんもみんなも、いっぱいお世話になったんですから!」

ね!と無邪気に見上げられれば、みんなは頷くしかない。

「伊江村三席には、その時飲んでもらえばいいじゃないですか」

ニッコリ笑って一角を見上げ、伊江村に手を伸ばしてその袖を捕まえた。


それは華奈がよくする動作で、ここにいるみんなも一度はされたことがあるものだった。

しかし、一角たちは目を見開いて立ち上がると、伊江村を見て身を固くする。

「どうしたんですか?」
「おま、」

「はい?」
「おい!」

一角が周りにいた男たちに言うと、みんなは何を言われたのか分かったようで、目にも止まらぬ早さで伊江村の後ろに回り込むとガシリと羽交い締めにする。

「ちょっ!」
「お前、」

「一角さん!?」
「アバラ、浮いてるか?」

「・・・は?」

一角の質問に華奈だけではなく十一番隊の者たち以外が全員固まった。

「な、なにを・・・?」
「アバラだよアバラ!浮いてんのかって聞いてんだっ」

「ちょっ、斑目三席?!」

凶悪な顔で迫って来る一角にあわてふためく伊江村。
逃げたいのに屈強な男たちに捕まれているためそれも敵わない。

「アバラ浮いてんのか?どうなんだよ」
「あ、あのっ」

「あ?!」
「っひ」

「一角さん?!何してんですか?!」

一角たちを止めようとする華奈を弓親が肩に手を置いて止めた。

「まぁまぁ、好きにさせてあげなよ。僕も、気になるしね」
「?」

「ふふ」

笑う弓親に首を傾げるが、弓親は伊江村に顔を向けると目を鋭く光らせる。

「弓親さん?」
「なに、ちょっと予想外だっただけさ」

「予想?」

まさか、ね。そう言って華奈の肩に置いた手に力を入れた。

「ちょっ、斑目三席!」
「まぁ、浮いてなきゃそれでいいってだけだ、なぁ?」

「ま、まって下さい!あの!」

伊江村の叫びなど聞こえないと言わんばかりに着物へ手をかけて左右に引く。
すると、そこにはあばら骨の筋が見えていて、

「・・・」

凶悪な顔を更に歪ませて伊江村を見た。
ゾクリとする感覚が背中を走っていく。

「おい、離してやれ」
「し、しかし!」

「いい、なぁ?」
「っひ」

一角は凶悪な笑顔を近づけてニィッと口角を持ち上げ、着物の乱れた伊江村の肩にポンッと手を置いた。

「同じ三席同士、仲良くしようぜ?」
「は、はい」

こうして、十一番隊はまた四番隊が嫌いになった。

「・・・なんで、僕は調べてもらえなかったのかなぁ」

そうすれば、彼女との間を勘違いされたのに。
彼女に、近づく理由が出来たのに。

荻堂はうなだれている伊江村を横目で見ながら呟いた。

どうやっても、彼女の視界に入ることは出来ないのか。
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