ブリーチ(夢)

□カナ26
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旅過が侵入してきた。

全ては計画通り。
なのに、あぁ、四番隊の隊員が捕まったと報告された。

それだけならよかったのに、それは彼女の友人で、守ると言っていた人物の一人。

嫌な予感しか、しなかった。



鏡花水月の力を使って、誰にも見られぬよう一つの病室に入る。

彼女は横たわっていた。

枕元に自身の刀を置き、発熱してしまったのか顔が赤い。

卯ノ花烈に頭を下げたと聞いている。
治療を拒否したと。

「どうして、そこまでする?」

理解できない。

君は死なないと言ってたじゃないか。
死ななければ、笑ってくれる人達がいるからと、だから死なないと。

なのに、なぜ傷を癒そうとしない。

腹を真横に切られている。
腕も、傷が深い。

巻かれている包帯が痛々しい。

「華奈」

死ぬなよ。
君は、僕にもしかしたらと思わせた唯一の人なのだから。




きっと、華奈は卍開が出来るのだろう。
しかし、それを見たことのある者はいなかった。
というか、始開を見たことのある者もいなかった。

ただ一人、黒崎一護を除いて。



「あぁすまない。踏み込みが浅かったかな」

旅過の少年の腹を真横に切る。
背骨だけで繋がっているかのような状態。

「生命力が強いというのも、考え物だね」

わざとだった。

生きて苦しめと思っていた。

彼女は今頃、駆け付けたあの四番隊の子に治療されているだろう。
ここ数日、彼女が耐えていた苦しみを、少しでも味わえと思った。

「雛森のことはどうなんだよ!あんなにっ、あんたの事を慕ってただろ?!」

あれは、僕がそう仕向けて、長い時間をかけて完成させただけのこと。

「憧れとは、もっとも理解しがたい感情だよ」

そう、僕の中で渦巻いているこの感情も、理解しがたい。

集まってきた隊長格、大勢の席官たちを見て、一つ彼女に置き土産をしていこうと思いついた。

「本当は、彼女も連れていきたかったのだけれどね」
「彼女?」

「十一番隊の、華奈七席のことさ」

ザワリと一部で空気が揺れた。

知っているよ。

彼女を慕っている者が大勢いるという事は。

知っているから、話すんだ。

「彼女は、どうしてか普段は全く力が出ないみたいでね」

そう言って、侵入者、黒崎一護を見て、冷たく笑った。

「君なら分かるね?本気の彼女と戦ったんだから」

彼女は強い。

「条件さえ揃えば、きっと君達など足元にも及ばないほどの力を発揮してくれる事だろう」

あの強い目で射ぬいて欲しかった。

幼く笑って手を掴んで欲しかった。

僕を、選んで欲しかった。

「けれど、残念なことに、僕と出会った頃にはもう飼い主を決めてしまっていてね」

僕を見てはくれなかった。

「犬は、一度主人を決めるとなかなか周りを見ないから困る」

本当は、連れていきたかった。

「残念だが、彼女は置いていくとしよう」

僕に残っていた最後の良心。

藍染たち三人は、空の中へ消えて行く。

「さようなら」

僕の優しさは、温もりは、ここに置いていくことにするよ。




死なないでくれ。
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