ブリーチ(夢)
□カナ23
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隣を歩いていると手が見える。いや、目に入る。頭を撫でてくれる大好きな手だ。
手を伸ばして、その細い指を掴んでみた。細いのに、自分のとはまるっきり違った。
節が太い。
指が長い。
なんでこんなに自分とは違うんだろう。
不思議に思って、もっとよく見ようと握る指を増やせば名前を呼ばれた。
「華奈七席?」
見上げれば金色の髪をした伊江村が戸惑ったようにこちらを見下ろして来ていた。
「あの、?」
「伊江村三席の手がどうかしたんですか?」
伊江村の隣にいた荻堂が華奈に顔を近づけながら聞けば、首を傾げてしまう。
「なんでですかね?」
「?」
自分の手を持っている少女と荻堂が首を傾げながら見つめ合う。
一人置いてけぼりをくらっていれば華奈がこちらを見上げてきた。
「伊江村三席の手って、私と違うんですもん。気になります」
この子はいきなり何を言い出すんだろうか。
「僕の手は気にならないんですか?」
ほら、そんなのより良い仕事しますよと笑顔で言う荻堂に、持っていたカルテを振り下ろす。
もちろん荻堂には当たらない。
すんでで止められているからだ。
「お前はっ」
「えー、なんですかいきなり」
そんなせめぎ合いを見て笑った華奈は、自分の手の中にある伊江村の手を頭に乗せてさらに笑顔を深める。
「伊江村三席に頭撫でられるの好きなんです!」
大きい手で頭全体が包めてしまうようなその手を両手で持って、無邪気に笑うこの少女に計算だとかそういうものは逸さいない。
無いから困る。
頭を撫でながら笑ってくれたら、それ以上は何もいらない。
「・・・伊江村三席がいたいけな女の子に手を出したって言いふらしてやろう」
「なっ!?荻堂ー!!」
待てこらー!と走って行ってしまった二人を見送ってから、華奈は笑顔のまま自身の所属している隊舎へ戻っていく。
頭を撫でながら笑ってくれたら、それ以上幸せなことはない。