ブリーチ(夢)
□カノン20
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「どうしよう」
花音は十三番隊の隊舎前をウロウロと何度も行き来する。耳は帽子を被り隠しているのだが、
「帽子、被ってた事なんて今まで無かったし、」
もし仙太郎に見つかれば指摘されないはずがない。そうなればとても困る。
どうにか会わないで済む方法は無いかと悩んでいる今現在。
「そ、そうだよ!三席以上って事は虎徹三席でもいいんだよね!」
そうだよ!なんでそれに気づかなかったんだろ!と思った瞬間、肩に手を置かれた。
「きゃぁっ!」
「うおっ」
聞こえてきた声に恐る恐る振り返ってみる。
「せ、仙太郎さん」
「すみません!驚かせました!!」
「い、いえ!私が勝手に驚いちゃっただけでっ」
アワアワと両手を前で振り首も横に振る。
「どうかしたんですか?帽子なんか被って」
珍しいですねと言われて反射的に帽子を手で押さえてしまう。
その反応でさらに不信感が煽られた。
「あ、えっと、な、なんでもっ、き、気分で!」
「はぁ」
「そ、そうだ!これ、書類っ」
勢いよく書類を仙太郎の手に押し付けるとそのままダッシュで走り出した。
仙太郎はそれを見送った後書類を見て、三席以上の者なら誰でも良いという事を確認すると瞬歩で執務室に行き清音の机にたたき付ける。
「頼んだ!」
「ちょっ、はぁ!?」
「行ってくる!!」
「どこによ!!このっ、待てこらー!!」
すでに花音の事で頭がいっぱいの仙太郎にはその声は聞こえていなかった。
花音は森の中で木に手をつきながら息を整えていた。
「に、逃げちゃったら、余計怪しまれるのにっ」
こういう時、小心者って損だと思う。華奈や楓程垢抜けていればここまで緊張したりしないだろうにと思っていれば、
「花音さん!」
「きゃぁっ!」
仙太郎に捕まった。
「何かあったんですか!!?」
「え、な、なんでっ」
「様子がおかしかったので!!」
にじり寄られ、後ろには木、前には仙太郎という感じで追い込まれた。
「そ、そのっ」
帽子を掴んで俯く。まずい。非常にまずい。
「い、今、仙太郎さんの声を聞くと、その」
「声?」
「あの」
みるみる内に真っ赤になっていく花音に、余計心配になって来る。顔を覗き込もうとすれば、ギュッと目をつむって口を開いた。
「わっ、笑わないで下さいね?!」
「っ、はい!」
余りにも勢いよく顔を上げてそう言ってきたので思わず一歩下がってしまった。
しかし、花音からすればちょうど良い感じに仙太郎から距離が取れたので、ゆっくりと帽子を取る。
ピコンと、猫の耳が出てきた。
「そのっ、失敗作の薬を飲んじゃって」
帽子を握り締めながら俯いてポソポソと話す花音だが、仙太郎の耳には何も入ってきていない。
(ヤベェ!可愛い!!)
もうそれしか頭に無かった。
緊張しているのかさっきから引っ切り無しに動いてはこちらに向かってクイクイと向きを変える。
正直、今の一瞬で鼻血を吹かなかった自分を褒めてやりたい。
「せ、仙太郎さん?」
「っ、はい!」
「あ、すみません」
「は?」
ぺトンと耳を寝かせながら謝って来る花音に首を傾げれば、さらに赤くなった。
「い、今、耳が四つある状態で、」
「あ、声でかかったですか!?」
「そ、そうじゃなくて」
モジッと帽子をいじって握り込む。
「す、すごく仙太郎さんが近くにいるみたいに感じるので、あの、」
もう無理だった。
ブハッと鼻血を噴出しながら後に倒れる。