ブリーチ(夢)
□カホ18
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「はぁー」
自分の机の前、頬に手を当てながらお昼休みの事を思い出す。
華奈先輩かっこよかったなぁ。強いし、真っすぐだし。
楓先輩と花音先輩は可愛いって感じだし、山田先輩も可愛いし。
「はぁー」
「さっきから何回ため息つくきだよ」
「あ、副隊長」
見上げれば、座っている私を立った状態で見下ろしている副隊長がいた。
「いえ、さっきの休憩中にたまたま華奈七席たちのこと見ちゃいまして」
「華奈?十一番隊のか?」
「はい!知ってるんですか?」
「知ってるもなにも、俺は元十一番隊だぜ?」
「そうなんですか?!」
初めて聞いた新事実に頬が上気していくのを感じる。
「華奈がどうかしたのか?」
「どうかっていうか、さっき飯屋で男の子を助けてたんですよ」
「男の子?」
「はい!」
見てきた華奈の武勇伝を語って聞かせれば、はぁーとため息をついて首をさする。
「あいつ、ちっとも変わってねぇな」
ため息をついたわりに顔が笑っていて、その表情からは華奈に対する情のような物を感じた。
「副隊長」
「あ?」
「華奈せ、七席って、カッコイイですよね」
「そうか?」
「はい」
私よりも小さい体で戦って、いつも笑顔を絶やさなくて、弱いものの味方で、敵にまで優しくて、まるで正義のヒーローみたい。
そういえば、苦笑しながらそうかもなと返された。
「ま、正義のヒーローも、歯ぁ食いしばってんだけどな」
「え?」
「なんでもねぇよ」
笑って執務室を出ていってしまった。
華奈先輩が、歯を食いしばってる?
そりゃぁ、訓練とか大変そうだし、何よりあの十一番隊に入ってる訳だし、辛いこと何て数えきれないほどあるだろうけど。
今頭に浮かんでいる辛い事と、さっき副隊長が言っていた食いしばって耐えている事は、違うものの様に思えた。
ちょっと、華奈先輩の事をもっとよく見ようと思う。
見かける先輩は、誰かに追い掛けられてる事が多かった。
その大半は更木隊長で、これには驚いた。
隊長の背中で草鹿副隊長が楽しそうに笑ってた事にも驚いた。
そして、ビックリしたのは楓先輩と花音先輩に彼氏が出来ていたことだ。
驚いた。
いや、あの二人は可愛いし、今までいなかった方が不思議だったんだけど、でも花音先輩が十三番隊の小椿三席を選んだ事には驚いた。
私はここ数日驚きっぱなしだ。
楓先輩の彼氏は誰かわからないけど、先輩が嬉しそうに笑っていたからいい人何だろう。
多分。
先輩、ちょっと天然入ってるから心配。
山田先輩はまだフリー。で、肝心の華奈先輩だけど、
「わからん」
「な、何がですか?」
「ごめん、こっちの話し」
隣にいた利吉が驚いたように声をかけて来たけど、私はそれどころじゃない。
変な話し、華奈先輩と山田先輩って何で付き合ってないんだろうってくらい仲がいい。
でも二人に恋愛感情はない。
そこまでは学院生だったころと変わってない。うん。
しかし!つまるところ華奈先輩が男の人にそこまで心を開いているのは山田先輩だけで、ピラミッドのような人間関係図を作るなら山田先輩たちは確実にそのテッペンに位置している。
華奈先輩の中でそんな高い位置にいる山田先輩と、同等のような触れ合い方をされている人を一人見つけた。
見つけてしまった。
今思うと見つけたくなかった。
「なんであのメガネなのよ!!」
「えっ!!?」
利吉がビクビクしてるのなんかどうでもいい。
だって、あの華奈先輩だよ?!かっこよくて可愛くて笑ったら子供見たいで可愛くて、とにかくかっこよくて可愛い華奈先輩が!なんであんなヒョロッとしてる四番隊の三席を山田先輩と同じように扱っているのかって事が大問題で、とてつもなく気に食わない。
というか!山田先輩は男として見てないのに!あのメガネの事はどこか男として見てると感じる事が多々ある。
物凄く気に食わない。
「もっと他にいるじゃない!!」
十一番隊にだってそれなりにいい男はいるんじゃないの!?いなかったとしても他の隊にだっているでしょ?!先輩ならよりどりみどりでしょ?!うちの朽木隊長は奥さん命らしいから無理っぽいけど。
先輩に見合う程に体力があってガッツがあって真っすぐな男ってっ!
そこまで考えて、肩に入っていた力を抜いた。
「・・・いなさそう」
パッと思い浮かんだの総隊長だった。
なし!
華奈先輩は、なんで伊江村三席を選んだんだろう。あれ、これ花音先輩の時も思ったな。
「書類、提出してくる」
「は、はい!いってらっしゃい!」
なんでか怯えてる利吉に見送られながら執務室を後にした。
(そういえば、華奈先輩が歯を食いしばってるのってなんだろうって見てたのに、ズレちゃった)
またため息をついていると肩を叩かれた。振り向いたら、人差し指が頬に食い込む感触がする。
「あっはっは!引っ掛かった!」
「、華奈先輩!?」
「おっす!」
目の前で笑っている華奈に驚いて、持っていた書類が床に散らばる。
「わ、わわっ」
「おっと」
四階の廊下であったことが災いして、風で書類が飛んでいく。
まずいと手を伸ばしても、もうそれは舞い上がってしまった後で、
(あー、作り直し)
そう思った瞬間、隣でとうっ!という掛け声が聞こえてきた。
「華奈先輩!!」
「よっと」
空中で立ち、手早く書類を集めると隣に下り立つ。
「え、え?!」
「ははは!驚いただろ!」
今、先輩空中で立ってたよね?手渡された書類を見下ろしながらそんな事を考えていると、白い歯を見せながら笑ってきた。
「霊圧を足場にしてんだよ」
「そ、そんなこと出来るんですか」
「隊長とおっかけっこしてたら出来るようになってた!」
「い、命懸けですね」
「まったくだ!」
そう言いながらも楽しそうに笑ってる先輩に、私の頬も緩んでいく。やっぱり、先輩はすごい。
一緒に七番隊の執務室に向かいながら久しぶりに話す。
夏帆はずっと見ていたから別に久しぶりとは感じなかったが、華奈からすればとても久しぶりなのだ。
「さっき」
「?」
「ため息ついてたろ?」
「あ」
そういえばさっき華奈の事を考えながらため息をついていた事を思い出して「ははっ」と苦笑して見せる。
「ため息ついたら幸せが逃げるんだってよ!」
だからはい、と手渡されたのはコンペイ糖の入った袋。
「口に物入れてればため息もつかないだろ」
あぁ先輩カッコイイ!
こんなにちっちゃくて可愛いのに男前!!
「ありがとうございます!!」
袋を握りしめながら頭を下げれば大袈裟な奴だなぁと笑われた。
大袈裟じゃないです!マジで大切に食べます!先輩大好き!!
七番隊の執務室の近くまで来ると先輩はじゃぁな!と手を振ってそのまま行ってしまった。
あれ?先輩ここに用事があるんじゃないの?って首を傾げていたら、射場副隊長が出てきて話しかけてきた。