ブリーチ(夢)

□カノン16
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彼女と初めて会ったのは三番隊の隊舎内にある木の下でだった。

そこに立っていた彼女を見たとかそういうことではなく、木の上から落ちてきた彼女をキャッチしたのが始まりだ。

木の枝とか葉っぱとかが至るところに着いていた彼女は、小さな体をさらに小さくして腕の中に落ちてきた。

綺麗な黄緑色の髪に、白い肌。一瞬で好きになっていた。

彼女が落ちてきた木の上から三番隊の副隊長である吉良が下りてきた時は軽く絶望した。
恋に落ちた瞬間失恋した気分になった。

なったからといって、そのまま彼女を渡すのは嫌だったので一緒に救護詰所に運んでいった。
そしたら研究所の一人がタバコをくわえながらやって来て、吉良と俺にワリーなと偉そうに謝ってきて事情を説明していった。

どうやら彼女は吉良とはなんの関係もないらしい。

正直、メチャメチャ嬉しかった。

それから二、三日の記憶があまりない。彼女の事を考えすぎて他のことが全く手につかなかったのだと思う。

腕の中にスッポリとおさまったあの感触が、忘れられない。
隊長にまで心配させてしまった。
だから、正直にどうしたらいいのか聞こうと思ったその時、

『やっと見つけたー』

振り返ったら頭や着物に木の枝や葉っぱをつけた彼女がいた。
おまけにあの時とは違って目を開けて俺を見ている上、笑顔を見せて来ている。

心臓が止まったかと思った。

それも抱き着かれた。

なんだこの嬉しすぎる展開は。
俺をどうしたいんだ。
心臓発作か何かで殺したいのか。
君なら出来ると思うぞと言えてしまいそうなくらい俺の心臓は物凄く早く動いていた。

俺に跨がった状態で抱き着いて来ている彼女がマジで可愛くてどうしようかと思った。

なんだこれ、どういう生き物だ。

小さいし可愛いし、柔らかいし・・・。

『おー、やっぱりここにいたかー』

見れば、この前も会った奴がこちらに向かって歩いて来ていた。
タバコから口を離して煙りを吐きながら見下ろしてくる。

浮竹隊長のことを考えてここは禁煙だと言いたいが、今はそれ所ではない。
聞けば、彼女は間違って完成前の薬を飲んでしまったらしい。

一種の真実薬を。

隊長に阿近と呼ばれたそいつはしゃがみながら見下ろしてニヤリと笑ってくる。
そして、俺の上にいる彼女に質問をした。

『おい華奈、そんなに小椿三席が好きなのか?』

俺の心臓は一瞬止まったと思う。

『はい!ずっと片思いしてました!』

笑顔でそう答えた彼女を見た途端、止まっていた心臓がいっきに動き出して鼻から血を吹き出してしまった。

不可抗力だったと思う。

『ずっとねぇ、いつからだよ』
『五十年くらい前からです!』

『ほう?結構なげぇな』

阿近と彼女の話しを聞く度に心臓が面白いくらいバクバク動いて、その度に俺は血を失っていった。
鼻から。

『で?何で今日はここにきたんだ?』

もう、いっその事俺を殺してくれよ。今なら幸せ死にってことで何の悔いもなく死ねそうだ。
しかし、彼女は俺に跨がったままさらなる追い撃ちをかけてきた。

『だって、ずっと話しかけて見たかったし、』

こうやって抱き着いてもみたかったんですと頬を染めた上で上目遣いまでしながら言われて、理性の切れない男はいるのだろうか。
そりゃ好きでもねぇ女に言われたら何とも思わねぇと思うが、好きな女に言われたらっていう前提だ。

理性が保てる男がいたらマジで出てこいよ。
俺にその技を伝授してくれよ。

そんなことを考えていると、トンッと彼女の首の後ろを阿近が突いた。

気を失った彼女を担いで立ち上がった阿近は、俺に何か言ってから隊舎を出ていった。

いやに、空が青かったのを覚えてる。

俺は、ここ数日の自分の事を思い出していた。
そして、さっきの彼女の言葉。

五十年も前から俺の事が好きだったという。

マジかよ。

まったく気づかなかったぞ。
あんなに可愛い子に見つめられてたのにマジで気づいてなかったのか俺。
ていうか、彼女は本当に俺を好きなのか。
本気か?
信じるぞ。
信じて、信じて・・・。

鼻血が止まってからも、空を見ていた。真っ青な空に、黄緑色の彼女の笑顔が写った。


次の日、俺は研究所に行って扉を開けた。
彼女はかなり驚いていた。
当たり前だ。
彼女は昨日のことを何も覚えちゃいないんだ。物凄いおどおどしながら俺の前で顔を赤くしている。

マジで可愛い。

感情が爆発して抱き着いてしまった。
俺は感情が高ぶると声もでかくなる。だからかなり大声で怒鳴ったと思うこの胸のたけ。
そんな俺の耳に、メチャメチャ小さい声が聞こえてきた。

「私も、小椿三席のこと、好き、です」

白い肌が真っ赤になっていた。

俺は感情に任せてそのまま彼女の口に噛み付いた。
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