ブリーチ(夢)

□カナ15
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その頃、四番隊の執務室の窓が開けられていた。

「伊江村三席ー!」

窓を開けて直ぐにある背中に思いっきり抱き着いた華奈。
伊江村は手に持っていた書類をバサバサと床に落として固まった。

「伊江村三席ー!」

ぐりぐりと額を擦り付けて抱き着いてくる華奈に、伊江村は固まったまま身動き一つしていない。

ザワザワと騒がしくなる執務室。

華奈が異常にハイテンションで伊江村に抱き着いているという事が理解できず、何も出来ずにいた。

抱き着かれている伊江村でさえも現状を理解できていないように思えるのだから致し方ないとも思うが。

「あれー、ついに手出しちゃったんですか?伊江村三席」
「なっ!荻堂!なんて事を言うんだ!!」

ざわめきの中から一歩出て固まっている伊江村に声をかけて茶化す荻堂。

「またまたー、華奈七席がそんなに抱き着いてるんですから、言い逃れしても遅いですよー」
「ち、ちがっ!」
「伊江村三席ー!」

グリグリとすりついてじゃれる華奈に、荻堂の言葉が真実味を持ってしまう。
伊江村からすれば誰か助けてと言いたい所なのだが、荻堂のせいで誰にも助けを求める事が出来ない。

「あれ、華奈さん。どうしたんですか?」

そんなに伊江村三席にくっついてと、まるで今目の前で起こっている事が別に驚くべき事ではないかのように近づいてくる花太郎。

「あ、花太郎ー!」
「うわっ」

伊江村から離れて、今度は花太郎に抱き着き出した華奈。
それに少し驚いたようではあるが、なんなく受け止めている花太郎にみんなが驚いた。

「華奈さん、酔ってます?」
「酔ってないよー!酒飲んでないもん!!」

首を傾げながら華奈に顔を近づける花太郎。ザワッと執務室がさらにざわついた。

「本当だ、お酒の臭いはしませんね」
「だろー?」

じゃぁどうしたんだろうと首を傾げて考え出すが、みんなはビックリして目を見開いていた。

今、花太郎がキスするのかと思ってしまったせいでドキドキが止まらない。
しかし、花太郎がそんな大胆なことをするはずもなく、固まっている伊江村や荻堂にも気づかないまま華奈の額に手を置いて熱を計っていた。

「花太郎好きだー!」
「あ、ありがとうございます」

ガバリと抱き着いて好きだと叫びスリスリと頬を擦り付けるが、花太郎は別に恥ずかしそうにする事もなく普通にお礼を言って笑っている。

「本当にどうしたんですかね?熱も無いし、お酒も飲んでないみたいですし」
「わからーん!」

楽しそうな華奈を見ながら考える花太郎。そして、やっと我に返った荻堂が花太郎に話しかけたた。

「山田七席、」
「はい」

「驚いたりしないんですね」
「?」

普通、好きだとか言いながら抱き着かれたりしたらあんなふうに驚くでしょと伊江村を指差して言う。

「あ、はい、でも華奈さんは酔っ払ったらいつもこんな感じなので」
「そうなんですか」

「でも、今日はまだマシですかね」

首筋に顔を埋めて抱き着いている華奈の背中を撫でながらあやしている姿が、何とも言えない。

「華奈さん、とりあえず離れてください。皆さん驚いてますから」
「んー」

こんな時でも花太郎のいう事は聞くらしく、渋々離れると振り返ってまた伊江村に飛びついた。

「伊江村三席ー!」

笑顔で抱き着かれながら名前を呼ばれ、伊江村はまた動きを止めて固まった。

「大好きです!」

ギューと抱き着いてそう言うと、伊江村がビクリと動いてまた固まった。

「あらあら、今日は何だか騒がしいですね?」
「う、卯ノ花隊長!!」

執務室に入ってきたその人物にみんなが驚いて背筋を伸ばすと、騒ぎの中心である華奈たちがいる方へ歩いて行く。

「あら、あなたは」
「卯ノ花隊長!」

卯ノ花を見た途端パァァと笑顔を輝かせて抱き着いた。

「卯ノ花隊長も好きです!」
「まぁ、嬉しい」

よしよしと華奈の頭を撫でて微笑んでいる姿はまるで母親と娘のように見える。華奈が小さいからなおさらだ。

卯ノ花に抱き着きながらその後ろにいる勇音を見上げて、また笑顔を向ける。

「虎徹副隊長も好きです!」
「あ、ありがとう、ございます」

どストレートに純心な笑顔と好意を伝えられて照れる勇音。華奈は気が済むまで卯ノ花に頭を撫でてもらい抱き着き、今度は勇音に手を伸ばして着物の袖を握る。
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