ブリーチ(夢)
□カノン13
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花音には誰にも言えない秘密がある。
(あ)
窓の外、少女と言えそうな隊員と一緒に走っている男が目に入った。
捩り鉢巻きをしているその男の姿に、自然と頬が緩む。
(今日も、元気そう)
遠く離れているここにまで響いてくる大きな声に笑ってしまった。
「花音」
「はい」
研究所所長の阿近に呼ばれてそちらに行けば、一枚の紙を差し出される。
「浮竹隊長から誕生日プレゼントの依頼が来た。今回は吉良の等身大フィギュアだ」
「へ?」
造るからお前も手伝えと言われ、詳細が書かれている紙を受け取りながらマヌケな声を出してしまった。
「わ、私が、ですか?」
「あいつ女がいいとか言って今回はやる気起きねぇんだと」
いつも手伝っている別の局員は今回辞退したからその後をお前が継げと言われ、室局長に逆らえるはずもなく頷いた。
「でも、私儀骸造りはあんまり上手くありませんよ?」
「上手くなくても、お前確か絵かけただろ」
「はい、少しですけど」
「今から吉良のとこ行って何枚か模写してこい」
「えぇ?!」
驚きから声を上げれば、文句あんのかコラと睨まれた。
「も、模写しなくても、写真の方が!」
「お前がいつまでたっても人体のバランスが上手くとれねぇから良く見て勉強してこいって言ってんだよ」
グワシッと頭を掴まれて凄まれれば、それ以上何も言えない。
「それと、このプレゼントはサプライズで渡してぇらしいから」
掴まれた所が痛くてさすっていればニヤリと笑いながら顔を向けられた。
「模写してるとこ見つかんじゃねぇぞ」
「!?」
花音は途方に暮れてトボトボと歩いていた。
無理だ。
それでなくても自分は気配を消すとか出来ないのに、相手は副隊長。見つからないはずがない。
「どうしよう・・・」
このまま帰れば阿近に何を言われるか分からないし、かといって吉良に見つかって何をしているのかと聞かれても良い言い訳が思いつかない。
ひとしきり悩んだ後、とりあえず三番隊の隊舎へ向かった。
周りに誰も居ないことを確認し、隊舎にある大きな木に登って座ることが出来る太い枝を探す。
そこは調度隊首室の窓があるところで、吉良が机に向かって書類を書いている所が見える位置だった。
(よ、良かった。このくらい離れてれば大丈夫、だよね?)
少し距離があるし、ばれないばれないと自分に言い聞かせてスケッチブックに筆を走らせていく。
書類整理をしているせいで座っている所しか描けないが、なんの収穫も無しに研究所へ戻るよりずっといい。
サラサラと筆を動かしていれば、
「へー、結構上手いんだね」
「え?」
隣を向けば吉良がいた。
驚きすぎて木の上にいるということを忘れて後ずさってしまう。
「君!」
ズザザザッという音が聞こえて、景色が物凄い勢いで変わっていく。
「危ねぇ!!」
大きな怒鳴り声が耳の近くで聞こえて来て、暖かいものに包まれた。