ブリーチ(夢)

□カエデ8
1ページ/2ページ



楓は書類を持って技局へ来ていた。そして、顔を窓の外に向ける。

「あそこの倉庫って、やっぱり開発局の人しか入れないよねぇ」
「?」

話しかけられた花音が首を傾げて来るので、苦笑して口を開く。

「あそこには"絶版になってる本も多く置いてある"って聞いて」

興味があるんだと言えば、花音も楓の本好きを知っているだけに納得して笑った。

「局長に聞いてみて、許可が出たらいいと思うけど・・・」

花音は顎に手を添えながら提案する。それを聞いて、やっぱりそうだよねとため息をついた。

「ネム副隊長経由でも、聞いてみたら?」
「ゆ、勇気が出たら、ね」

それだけ言って、楓はそそくさと技局を後にした。


楓には想いを寄せる人がいる。
昨日、その人によく分からないままキスをされた。
本当に、意味が分からない。

自分はその人を好きだけれど、その人は?分からない。
どうしてキスされたのか。
その人も自分の事が好きだから?でも、そんな雰囲気じゃなかった。

「楓ちゃ〜ん、こんな所でどうしたの?」
「きょ、京楽隊長!」

キスの事を思いだしたせいで頬が赤いが、楓は背筋を伸ばしてあいさつをする。
京楽の後ろからは七緒もついて来ていて、楓の異変にいち早く気がついた。

「どうしたんですか楓八席。顔が赤いですが、風邪ですか?」
「ち、違います!いたって健康です!!」

「でも、楓ちゃんは頑張りすぎるから、心配だなぁ?」

京楽に頭を撫でられて、あうっと言いながら下を向く。その仕草が子供のようで、二人はちょっと癒された。

「風邪じゃないのにこんなに顔が赤くなるって、はは〜ん!」
「?」

京楽が楽しそうに笑って、楓の顔を覗き込む。

「さては、好きな人の事でも考えてた?」

それは単なるからかいだったのだが、楓には図星を突かれたとしかいえず、更に顔を赤くして視線をさ迷わせるしかなかった。

「・・・」
「わた、私!まだ仕事が残ってるので!!」

いたたまれなくなった楓は走って二人から離れていく。その背中を見送りながら、京楽は七緒に呟いた。

「娘が彼氏を連れてきて、ショックをうけるお父さんの気持ちが分かったよ」
「・・・そうですか」

そっけなく返したが、七緒も楓の好きな相手がとても気になった。母親的な意味で。


次に会った時、聞いてみようか。

どうしてそんな事したのか、どうして名前を、いろんな事を教えてくれないのか。

自分の事を、どう思っているのか。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ