ブリーチ(夢)

□カナ1
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私は、多分みんなとは違うんだと思う。

戦いが好きな訳じゃない。戯れのようなケンカは好きだけど、本気で相手の命をとるような殺し合いは嫌い。

だけど、そんな事に自分の誇りを持って生きているみんなは好き。
だから、更木隊長たちの側は心地いい。

きっと、これからも私はこの人達の側でその誇りを見届けて、一緒に散っていくんだろう。




「つるりんのばーか!」
「誰がつるりんだこのドチビがー!!」

四番隊の隊舎近くで聞こえてきた怒声と、ドドドッという走る音。

「うわぁー!すみませんっしたー!!」
「待てこら華奈ー!」

剣八に追い掛けられて半泣きになりながら逃げている華奈。

「隊長足早すぎるー!」
「テメェが遅せぇんだよ!」

追い掛けられて涙目になりながら走り回っている、穏やかな日常。

「痛ててっ」

道場の裏井戸で痛む頬を庇いながら顔を洗う。
そんな華奈を見ながら一角と弓親がタオルで汗を拭いていた。

「お前の走る姿って猿みてぇだよな」
「誰が猿ですか!私は人間です!!」

「美しくないってことだよ」
「あんな怪物に追い掛けられて美しく走ってられる訳無いじゃないですか」

「誰が怪物だと?」
「ヒィー!」

「お前も凝りねぇ奴だな」

剣八にまた追い掛けられる華奈に呆れたようなため息をつく一角。
しかし、足元にやって来たやちるは面白そうに笑っていた。

「剣ちゃん楽しそう!」

今日も十一番隊は騒がしく、楽しそう。



華奈が剣八に捕まって道場へ向かっていると、ちょうど一角たちに会った。

「お、捕まったのか」
「隊長から逃げ切れるわけが無い・・・」

「あはは!」

剣八の肩に上ってきたやちるに笑われ、道場の扉に手をかけると中から話し声が聞こえてきた。

「ほんと、ムカつくぜ」
「七席だからって調子こいてるよな」

剣八はピタリと手を止めた。

「あんなひ弱そうなくせに七席とか、どんな裏工作したんだよ」

四人はチラリと、剣八に首の後ろを捕まれている華奈を見る。
しかし、その顔は伏せられていて表情を伺えない。

華奈が女だからと、入隊当初他の者たちにナめられていたのは知っている。
だからといって、何か手助けした訳ではない。
華奈はたった一人で七席の地位までのし上がってきた。

腕っ節が全てのこの十一番隊で、七席の地位に立つのがどんなに大変か、みんな分かっている。

泣いているのだろうか。
未だ下を向いている華奈を気にしながら何とも言えない空気を感じていると、ヒョイと剣八の手から下りた華奈がスパーンと扉を開けた。

「、華奈七席?!」
「更木隊長に副隊長!?」

道場の中にいた先程まで愚痴を言っていたであろう者たちに近づいて行く後姿からは、マガマガしいオーラが立ち込めていた。

「良い度胸だなお前らっ」
「え、」

「えっ?」

握った拳をバキバキと鳴らして近くに落ちていた木刀を手に持つ。

「なめた口聞いたこと後悔させてやる!」

「うおらぁー!」とかかっていく華奈にのされていく平隊員たち。
その地獄絵図のような光景を、ため息をつきながら黙って見ている残りの四人。

最後の一人が床に倒れると、転がったままになっている全員にビシッと指をさして、

「私に勝ってからそういうこと言うんだな!」

息を荒くしながら木刀を肩に担いだ。

「華奈ちんの一人勝ちだね!」
「まっ、当たり前だろ」

「結果は見えてたよね」

剣八の肩から下りたやちるは、木刀を床に置いている華奈に駆け寄る。

「華奈ちん、またいっぱい怪我したね!」
「こんくらいの数相手にその怪我か、情けねぇ」

「いや、怪我の大半は隊長に追い掛けられてる時にはついた物ですよ」
「あぁ?」

「何でもないでーす」

袖で汗を拭いながらそんな言い合いをしていると、やちるが華奈の裾を引っ張った。

「華奈ちん」
「はい?」

「怪我したから、治してもらっといでよ」

誰にとは言わず、ニッコリ笑っているやちるに、華奈も笑う。

「じゃっ、ちょっと行ってきます!」

元気に手を振って、タタタッと四番隊の隊舎がある方へ走って行った。

華奈がいなくなった後の道場内には何とも冷たい空気が張り詰めている。

「それで?」
「お前ら本気であんなこと言ったのかよ」

転がっている隊員たちに顔を向ける一角と弓親。やちるは剣八の肩に移動してそれを見る。

「この隊で、裏工作で七席につける訳ねぇのは分かってんだろ?」

転がっていた者たちは起き上がりながら痛む箇所をさすった。

華奈はいつだって誰かに過剰な暴力は奮わない。
今だって、木刀を使っていたとは思えない程軽い痛みしかない体を起こしながら、隊員たちは頭をかいた。

「いや、俺達はただムカつくってだけで」
「華奈七席の事は別に、」

「あ?」

話しが噛み合わない。
一角たちが首を傾げていれば、弓親とやちるが分かったと言うように口を開いた。

「もしかして、四番隊の七席のこと?」
「華奈ちんの友達のことだ!」

聞けば、弱いのに華奈から絶大な信頼を寄せられていてムカつくと、口々に言う隊員たち。
それを聞いてため息をつきながら肩を落とした一角は頭をかいた。

「そういう事かよ」
「くだらねぇ」

「剣ちゃんだってさっき怒ってたくせに」
「誰が怒ってたって?」

「剣ちゃんが!」

そんな言い合いを始めた剣八とやちるを見ながら、弓親は肩を落とした。

「まったく。勘違いして落ち込んでるよ、今頃」
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