3月のライオン(夢)

□隈倉17
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「あ、こんにちは!あかりさんいますか?」

実家に帰ってきて数日、優はいろんな人へ電話をかけていた。

「そう、今実家に帰って来てて、ホタテ好きかなって。よかった!じゃぁ送るね!どのくらい送っても大丈夫かな?」

多すぎても困るかなと話す相手は、三日月堂で働いているあかり。
生ものが食べられない家族はいないと聞いて、優はあかりの住所を伝票へ書いて行く。

「後は、マスターのとこはお店に送るし、店長さんの所へはいつも通り自宅へ。・・・このくらいかな?」
「毎年来てくれてありがとうね」

「やっぱりこっちのが一番おいしいって思うからね」

都会で食べても美味しいけど、こっちで獲れたてを食べるのとは違うからと毎年お世話になっている店のお婆ちゃんと話し、またよろしくお願いしますと店を出た。



「おーい、優からホタテが届いたぞ」

持ってきたいだけもってけと、店に残っていた従業員へ声をかけるマスター。そして、

「きゃー!優くんからこんなにホタテが届いたわ!!」
「すごいね!すっごい大量!!」

「すごーい!」

届いたホタテに盛り上がる川本家。


正月、実家に届いた大量のホタテに喜ぶ両親。

「すごい量のホタテだな」
「どなたが送って下さったの?」

そう聞かれ、優の事を何と言えばいいのか迷い、知り合った人が北海道の人でと説明しておいた。
ちなみに、兄夫婦も喜んでいた。


正月が開け、実家から戻ってきた優は送って置いた鮭を捌いていた。

「えーと、チャンチャン焼きとあら汁と、」

切った鮭を鍋に入れ、他の調味料と合わせた味噌を入れていく。

「こんなもんかな」

料理の準備をしているとチャイムが鳴った。
出れば、スミスと一砂が大量の酒を手に立っていた。

「いらっしゃい!もうすぐ料理もできますよ」
「おお〜!本場の味!」

「クリスマスも正月も一人淋しく棋譜を見てた甲斐があったぜ」
「お疲れ様でした」

グズッと鼻をすする一砂に苦笑しながら声をかけ、三人で中へ入って炬燵を進める。

「あ、ビールも冷えてるんで、」
「さすが!」

「いただき!」
「乾杯しましょうよ!」

また勝手に始めている二人にツッコミを入れて優も料理を持って席に着いた。

「うまー!!鮭うまー!!」
「汁うんまー!」

「漁師のおじさんが選んでくれましたからね」

美味しいと箸を進めながらビールを開けて、優は日本酒へ。
二人も日本酒を貰いながらビールを飲み進みていく。

「そういや、年末も忙しそうだったけど貧血にはならなかったのか?」
「はい。前の騒ぎは本当にもう、繰り返さないようにちゃんと食事もしてました」

「いい心がけだな」

頷いている二人に笑って、立ち上がると隣の部屋へ入って行った。

「あの時のお礼じゃないですけど、お二人に作ってみました」
「ん?」

「ネクタイピン?」
「はい」

上手くいったんですよと、二人に差し出したのは違うデザインのネクタイピン。

「気が向いたらつけてやってください」
「すげー!こんなのよく作れるな!」

「趣味が仕事ですからね」
「マジで売りもんだわ」

「売ってもらってますからね」

ネクタイピンは作ったの初めてでしたけどと、炬燵の中に入って飲みだす。

「あ、でも彼女さんと会う時は外した方がいいですよ」
「彼女いねぇよ」

「悲しい事思い出させんな」
「近い将来にできるかもしれないじゃないですか」

飲み屋のみんなもそうだが、女性はそういうのによく気が付くのだと言う優に、二人は顔を見合わせた。
そして、スミスがニヤッと笑って優に近づく。

「優、一砂君にもっとそういう話を聞かせてやれ」
「?」

「ちょ!スミス!」
「いっちゃんさ、狙ってる子いんだよ」

「そうなんですか!」
「やめろよ恥ずかしい!」

ニヤニヤ笑うスミスにつられて、優の顔もにやけていく。

「女を落とすことに関してスペシャリストの優にアドバイスを貰うべきだって!」
「おかしいですけどね、それ」

「まぁまぁ」

ほらほらと一砂に酒を進めて話を引き出していくスミスと、それを聞いてニコニコしている優。
そんな感じで、この日も気が付いたら優の部屋で酔いつぶれていた二人だった。
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