3月のライオン(夢)

□隈倉9
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「そうだ、二人って銀座とか行きますか?」

優の家でお祝い(お詫び)の夕食を終えてまったりしていると、寛いでいる二人に優が話しかけた。

「銀座?まぁ、行くな。いっちゃんは特に」
「な!スミスだってよく行くだろ!」

「まぁね」

クククッと笑うスミスに顔を赤くしながら焦る一砂。
優はそんな二人に首を傾げるが、

「んで?銀座で行きたいとこでもあんのか?」
「えっと、今日階段を踏み外した人を助けたら名刺をもらいまして」

銀座で店をやってるからよかったら来てねと言われたのだと答えながら、ポケットをあさって名刺を探す。

「またドラマのような出会いを」
「そうですかね?」

「なんて店なんだ?」

知ってたら連れて行くぞと言う一砂に名刺を渡し、それをスミスも一緒に覗き見る。

「『美咲』って店です。今気づいたんですけど、そこに美咲って書いてあるから、」

もしかしたらママさんだったのかなと、お茶をすすった。

「おお!ここならよく行くところだ!今度連れて行ってやるぞ」
「本当ですか?ありがとうございます!」

時間が合う日があったら連絡をくれと話し合っている一砂と優を見ながら、スミスは額に手を当てて下を向いていた。

(おいおいまさかだろ。いやでも、優だしなぁ)

一砂が惚れている女性。
その女性こそが『美咲』にいるあかりだ。

優があかりに惚れることも、あかりが優に惚れる可能性も無い訳ではない。
というか、あかりの好みも優の好みも分からないのでこの事を一砂に言うのも憚れる。

「えーと、優の好みってどんなのだ?」
「好みですか?」

「ほら、お前店であんだけモテてんのに誰の事も好きじゃねぇんだろ?」
「好きですよ?みんな」

「いや、みんなとかじゃなくて」
「そう言えばそうだな。いつもかおるちゃんやリエさんと一緒にいるが、」

だからと言って優が二人のどちらかを好きだと表している所を見たことが無い。

「んー、二人とも一緒にいて楽しいんですけどねぇ。そう言うのとは違いますね」
「じゃぁ、最近ときめいた瞬間は?つうか相手は?」

「ときめいた・・・、隈倉さんに会った時ですかね」
「それはお前、・・・違うだろ」

「違うだろ」
「ははは、じゃぁ無いです」

「タイプは?見た目とか」
「見た目ですかぁ、そうだなぁ。見た目はどうでもいいんですけど、好きなものが同じっていいですよね」

食べるのが好きなので一緒に食べてくれたりすると嬉しいですと言うのを聞いて、成程と頷いた。

「じゃぁ美咲さんに会いに行く時はみんなで行くか!」

スミスの言葉に賛成する二人。
そんな二人に苦笑しながらビールを飲んだ。

(ま、万が一って事も考えて、な)

優があかりに、あかりが優に惚れなければそれでいい。
一砂は今まで通りあかりのファンをしていればいいし、この良好な関係を続ける事もできる。

そんな事を思いながら、ここの居心地の良さを満喫しているスミスだった。

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