3月のライオン(夢)

□隈倉6
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ピンポーンと鳴ったチャイムに、優は手を止めて玄関へ向い鍵を開けた。

「おーっす!」
「食材買って来たぞ!」

「いらっしゃい!待ってましたよ」

やって来たスミスと一砂を迎え入れ、温かい室内へ案内する。

「お!もう準備万端か!」
「はい!人を呼んで鍋とかするの久しぶりだったんで力入りました!」

「スゲー!本当に料理するんだな」

台所から持って来た野菜や、二人が買って来た肉や酒を冷蔵庫へ入れてコップを用意する。

「ウマ!」
「家庭の味!」

「ええっ!?乾杯しましょうよ!」

いつの間にか食べ始めている二人にツッコミながら冷やしておいたビールを持って席につく。

「では改めて」
「「「かんぱーい!」」」

ビールは缶のまま、日本酒は常温で、三人は騒ぎながら鍋をつつく。

仕事が落ち着いたら飲みましょうと約束した時、三人は連絡先を交換していたのだ。
そして、店で飲むのもいいけど宅飲みもいいなという事になり、優の家にやって来たのが今日の鍋パーティー。

「お前料理できんのに外食もしてんだな」
「基本的に家にいるのが好きなんですけど、外でいろんなもの食べて家で作る参考にしたりしてレパートリー増やしてるんです」

「そんな事してんの?!店の味再現!?」
「さすがにそこまでは。もどきです。もどき」

「まぁ、これだけできれば十分だけどな」
「第二弾は魚介をご用意しております」

「「優くん素敵!!」」

そんなこんなで、優は知らぬ間に二人の餌付けに成功したのだった。

「閉めはチーズおじやでーす」
「スミス、ダメだ。俺もうここに住む」

「奇遇だないっちゃん。俺も同じこと考えてたぜ」
「この部屋じゃ家主一人で手一杯ですよ」

私でさえたまに狭いなとか思うのにと、苦笑しながらワインを開けた。

「狭いか?2DKもありゃ十分だろ」
「私仕事もここでしているので」

「仕事?」
「そういや優ってなんの仕事してるんだ?」

結構平日とかでも飲み屋にいるよなと言われ、飲んでいたワインを置いて立ち上がる。

「自営業ですかね?雑貨を作ったりしてるんですよ」

そして、隣の寝室へと繋がる扉を開けた。

「仕事終わったばかりですごい散らかってますけど。お恥ずかしい」
「「お〜!!」」

そこには作業台やら机やらミシンやら、もう何か分からない機械まで沢山置いてあり、様々な布や綺麗な石、本で埋め尽くされていた。

「俺の部屋と対張れる汚さだな」
「常にじゃないですよ!」

「なんだこれ、チェーン?アクセサリーまで作ってんの?」
「はい。知り合いの店に置いてもらったり、ネットで注文もらったりしてます」

ごそごそと机の下から分厚いファイルを引っ張り出してきて、パラパラとめくって行く。

「これとか自信作です」
「スゲー、よく作れんなこんなもん」

「根気と経験ですね」
「あれ、」

スミスがページを捲って行き、ある事に気が付いた。

「なぁ、お前指輪とかも作れんの?」
「はい」

「もしかして、ハナちゃんに上げたピンキーリングって」
「作者です」

自分を指さす優に、動きを止める二人。

「商品として出したり、」
「してません」

「この世に一つだけ!」
「あなたの為に作らせました改め、作りました!」

この子恐ろしいと二人は両手で顔を覆う。

「なんで買わねぇんだよっ、飲み歩けるくらい金持ってんだろ!?」
「じぃちゃんが言ってました!手作りが一番だって!」

「お前のそれは遺伝してきた天然なのかよ!」
「DNAレベルで俺にそれを譲ってくれ!」

嘆く二人に首を傾げながらワインを注いであける優だった。
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