3月のライオン(夢)

□隈倉5
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道路を一つ挟んだ向かいにあるケーキ屋。
そこに、見覚えのある顔があった。

幸せそうな顔をしてクレープだろう物を食べている。
その幸せそうな顔につられて、足が動いた。

「いらっしゃいませ」

ディスプレイに並んでいるケーキの中にクレープはない。

「店内でお召し上がりですか?」
「はい」

「申し訳ありません。ただ今大変込み合っておりまして、相席でしたらすぐにご案内できるのですが」
「構いません」

そう言って窓際に座っている青年を指さす。

「あの席でお願いします」

そう言ってテーブルの前まで歩いて行くと、目が合った途端飲んでいた紅茶を吹き出す勢いで咽だした。

「く、ゲホッゲハッ、くまく、ゲボッ」
「大丈夫か」

「ふぁい!」
「・・・席が埋まっているらしいんだが、相席してもいいだろうか」

首をぶんぶん縦に振っているのを了承と取り、手渡されたメニューを受け取って開く。
どれも美味そうだが、名前からは何だか想像しにくい物ばかりだった。

「君はこういう店によく来るのか?」
「グッ、ふぁ、っはい」

また「ふぁい」と返事をしそうになったのか、途中で言い直してカップを置いた。

「えと、隈倉九段も、よく来るんですか?」
「いや、普段は持ち帰っている」

今日はなんとなくだと言えば、

「気分転換にはいいかもしれませんね」
「・・・そうだな。だが、メニューに書いている物がいまいち分からない」

「なんとなくですけど、どんな物か説明できますよ」
「頼めるか?」

「はい!」

メニューを広げやすいように皿を脇へよせる手を見て、やはり細いなと思った。
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