3月のライオン(夢)

□隈倉3
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発注があった分の商品を作り、いつも取り扱ってくれている雑貨屋へ持って行く。

「あら優くん!持って来てくれたの?」
「はい、今日は出かける用事があったので」

連絡しないで来てしまって申し訳ありませんと、笑顔で迎えてくれた店主に箱を渡した。

「これはいつものアクセサリーで、実は布団カバーを作ってみたんですけど、見てもらえますか?」
「もちろんよ!優くんの作るものってすぐ売れちゃうのよねぇ」

「おだてられたらすぐ木に登っちゃうんで、あんまり褒めないで下さい」

調子に乗ったら大変だからと、肩に掛けていた紙袋を下ろした。

優の仕事は雑貨作り。
その幅は広く、インターネットでも注文を受けている。

「まぁ可愛い!作ったのは赤と黄色の2色だけ?」
「試作品なので、後は青と緑、ベージュを作ってみようかなって、布の目星もつけてあるんです」

「これなら大丈夫よ!今の季節にピッタリだし。ね、ためしに置いてみてもいい?」
「そう言ってもらえると助かります」

「売れたら連絡するわね。じゃんじゃん作って待ってて!」

値段の交渉も終え、いつもの飲み屋へ行く前に手土産でも買おうと三日月堂へ入って行った。


「すみませーん」
「はーい。あら、いらっしゃいませ」

「お久しぶりです」

中から出てきたあかりに笑顔で挨拶をして、少し多くなってもいいですかと沢山の和菓子を注文していく。

「いつもありがとうございます」
「いえ、食い意地張ってるだけですから」

「あ、優ちゃんだ!」
「優ちゃんだー!」

奥でどら焼きを包んでいたらしいひなたと、遊んでいるモモにも手を振って会計を済ませる。

「これからお仕事ですか?」
「いえ、いつものお店に」

じゃぁまたと、朗らかな笑顔を残して行った。

「あいつ、いつ見ても爽やかに去っていくな」
「優ちゃんカッコいいもんね」

「モモ優ちゃんだいすき!」
「男だったら出禁にしてる所だぜ」

「おじいちゃんったら、優くんがお菓子食べてる所好きなくせに」

クスクスと笑って、あかりもどら焼きを包みだす。

「あいつは何でも美味そうに食うからな」

自分が作った物を幸せそうに食ってもらえて嫌な顔する職人はいねぇよと、使った道具を洗い出した。
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